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第32話
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ヴィクトルによると、ヴィクトルはいわゆる「魔力暴走」に陥る寸前の危険な状態らしい。
このままもし魔力の制御がきかなくなってしまったら、その内なる力はヴィクトル自身を蝕み始め、命の危険もある状態だそうだ。
そしてその力を押さえるためには、俺のような魔力のほとんどない器の持ち主と『魔力の循環」という作業を行えばいいらしいのだが……。
「で、なんでその『魔力の循環』にこれが必要なんでしょうか?」
俺は、ヴィクトルのベルトで後ろ手に縛られた俺の両手首を、うらめしげに見つめた。
「『魔力の循環』は非常に繊細な技術が必要になるのだ! お前は迂闊だから、むやみに動くおそれがある。そうなると俺の手元が狂うかもしれない! そのために縛ってやったのだ。ありがたく思え!」
ふんぞり返るどこまでも傲慢な王子に、俺はげんなりする。
「あの……、本当に俺に危険はないんですよね!? 俺、痛かったり苦しかったりするのは嫌なんですけど」
疑念を抱いた俺は、ヴィクトルに念を押す。
「それについては、俺が最善を尽くすから安心しろ! すべて俺に任せておけばいい。お前はただじっとしていればいいだけだ」
自信満々で答えるヴィクトルだが、なぜかさらに不安が増していくのは気の所為だろうか……。
「本当に大丈夫なんでしょうね?」
俺の言葉に、ヴィクトルは片眉を上げた。
「そんなに気になるなら、お前は何も考えなくてすむようにしてやろう。お前はただ……、俺にすべてを委ねるんだ」
言うと、ヴィクトルは胸ポケットから群青のスカーフを取り出すと、それで俺に目隠しした。
「殿下っ! ちょっと……」
急に視界を奪われた俺は、恐怖に包まれた。
後ろ手に縛られているので、目隠しを外すこともできない。
すぐ耳元で、ヴィクトルの荒い息遣いがすることも、俺の恐れを倍増させていた。
――俺、もしかしてとんでもないことを承諾してしまったんじゃ!?
だが、すでに何もかも後の祭り。
「アントン……」
ヴィクトルの妙に艶めかしい声がしたかと思うと、首筋に湿った感触が降りてきた。
「ぎゃっ!!!」
これは、絶対、絶対、首筋をヴィクトルに舐められている!!!
「アントン……。俺が、お前を、アルベルトの魔の手から開放してやる……」
ヴィクトルは熱に浮かされたようにわけのわからないことをつぶやくと、俺の首筋を舐めながら、俺のシャツのボタンを外していく。
「殿下っ! ヴィクトルっ! 一体何をっ!?」
「『魔力の循環』に必要なことだ。お前はじっとしていろ!」
――ほんとに、ほんとに、俺、大丈夫なの!?
――っていうか、『魔力の循環』って、一体何なんだよぉおおお!!!
シャツをはだけさせられたのだろう。涼しくなった胸元に、ヴィクトルの熱い手のひらが這う。
「ひっ!!!!!」
「アントン、貴様っ! もっとこう、まともな反応はできないのかっ!? もっと雰囲気を出せ!」
ヴィクトルが舌打ちする。
――いや、俺のこの反応がどう考えても一番まともだろうがっ!!
「ヴィクトルっ! 俺、思ったんですけどっ! 今日はちょっと調子が悪いみたいで!
『魔力の循環』というのは、また今度にしませんか!?」
「黙れ」
苛立った声とともに、唇を塞がれた。
――間違いなく、ヴィクトルの唇で。
「んっ……」
「あまり興ざめなことばかり言うと、魔力で封じるぞ!」
「あっ……、んんっ……」
魔力譲渡のときと同じように、ヴィクトルの舌が俺の腔内を蹂躙していく。
熱い舌が絡み合うと、俺の身体の奥に底しれない感覚が沸き起こってくる……。
「いいぞ、アントン……、その調子だ……」
激しく舌を絡ませながら、ヴィクトルの手が俺の裸の胸に降りてくる。
「んあっ、はあっ……、んっ!」
乳首をつままれ、俺の身体が反応した。
「……感じるのか? 誰に教えられた?」
「やっ、やめ……っ!」
「他の男に触られたことがあるのか……?」
責めるような低い声に、俺は首を振る。
「ヴィクトルっ、やめてっ!」
「いろいろと確かめないといけないことがありそうだ……」
ヴィクトルは言うと、俺の乳首に吸い付いた。
「あっ……、ああっ!」
「いい声だな……。ほかに誰に聞かせた……?」
「もうっ、やめて……! 駄目っ!」
乳首を執拗に吸われて、俺の息が上がっていく。
「赤く色づいているぞ……、もっと触ってほしいと、誘っているようだ……」
ヴィクトルは、両手で俺の乳首を愛撫し始めた。
「ひゃあっ、あっ、あんっ……!」
嫌だ……。
ヴィクトルに触られて感じたくなんてないのに、俺の身体がヴィクトルの愛撫に快感を拾い始める。
このままもし魔力の制御がきかなくなってしまったら、その内なる力はヴィクトル自身を蝕み始め、命の危険もある状態だそうだ。
そしてその力を押さえるためには、俺のような魔力のほとんどない器の持ち主と『魔力の循環」という作業を行えばいいらしいのだが……。
「で、なんでその『魔力の循環』にこれが必要なんでしょうか?」
俺は、ヴィクトルのベルトで後ろ手に縛られた俺の両手首を、うらめしげに見つめた。
「『魔力の循環』は非常に繊細な技術が必要になるのだ! お前は迂闊だから、むやみに動くおそれがある。そうなると俺の手元が狂うかもしれない! そのために縛ってやったのだ。ありがたく思え!」
ふんぞり返るどこまでも傲慢な王子に、俺はげんなりする。
「あの……、本当に俺に危険はないんですよね!? 俺、痛かったり苦しかったりするのは嫌なんですけど」
疑念を抱いた俺は、ヴィクトルに念を押す。
「それについては、俺が最善を尽くすから安心しろ! すべて俺に任せておけばいい。お前はただじっとしていればいいだけだ」
自信満々で答えるヴィクトルだが、なぜかさらに不安が増していくのは気の所為だろうか……。
「本当に大丈夫なんでしょうね?」
俺の言葉に、ヴィクトルは片眉を上げた。
「そんなに気になるなら、お前は何も考えなくてすむようにしてやろう。お前はただ……、俺にすべてを委ねるんだ」
言うと、ヴィクトルは胸ポケットから群青のスカーフを取り出すと、それで俺に目隠しした。
「殿下っ! ちょっと……」
急に視界を奪われた俺は、恐怖に包まれた。
後ろ手に縛られているので、目隠しを外すこともできない。
すぐ耳元で、ヴィクトルの荒い息遣いがすることも、俺の恐れを倍増させていた。
――俺、もしかしてとんでもないことを承諾してしまったんじゃ!?
だが、すでに何もかも後の祭り。
「アントン……」
ヴィクトルの妙に艶めかしい声がしたかと思うと、首筋に湿った感触が降りてきた。
「ぎゃっ!!!」
これは、絶対、絶対、首筋をヴィクトルに舐められている!!!
「アントン……。俺が、お前を、アルベルトの魔の手から開放してやる……」
ヴィクトルは熱に浮かされたようにわけのわからないことをつぶやくと、俺の首筋を舐めながら、俺のシャツのボタンを外していく。
「殿下っ! ヴィクトルっ! 一体何をっ!?」
「『魔力の循環』に必要なことだ。お前はじっとしていろ!」
――ほんとに、ほんとに、俺、大丈夫なの!?
――っていうか、『魔力の循環』って、一体何なんだよぉおおお!!!
シャツをはだけさせられたのだろう。涼しくなった胸元に、ヴィクトルの熱い手のひらが這う。
「ひっ!!!!!」
「アントン、貴様っ! もっとこう、まともな反応はできないのかっ!? もっと雰囲気を出せ!」
ヴィクトルが舌打ちする。
――いや、俺のこの反応がどう考えても一番まともだろうがっ!!
「ヴィクトルっ! 俺、思ったんですけどっ! 今日はちょっと調子が悪いみたいで!
『魔力の循環』というのは、また今度にしませんか!?」
「黙れ」
苛立った声とともに、唇を塞がれた。
――間違いなく、ヴィクトルの唇で。
「んっ……」
「あまり興ざめなことばかり言うと、魔力で封じるぞ!」
「あっ……、んんっ……」
魔力譲渡のときと同じように、ヴィクトルの舌が俺の腔内を蹂躙していく。
熱い舌が絡み合うと、俺の身体の奥に底しれない感覚が沸き起こってくる……。
「いいぞ、アントン……、その調子だ……」
激しく舌を絡ませながら、ヴィクトルの手が俺の裸の胸に降りてくる。
「んあっ、はあっ……、んっ!」
乳首をつままれ、俺の身体が反応した。
「……感じるのか? 誰に教えられた?」
「やっ、やめ……っ!」
「他の男に触られたことがあるのか……?」
責めるような低い声に、俺は首を振る。
「ヴィクトルっ、やめてっ!」
「いろいろと確かめないといけないことがありそうだ……」
ヴィクトルは言うと、俺の乳首に吸い付いた。
「あっ……、ああっ!」
「いい声だな……。ほかに誰に聞かせた……?」
「もうっ、やめて……! 駄目っ!」
乳首を執拗に吸われて、俺の息が上がっていく。
「赤く色づいているぞ……、もっと触ってほしいと、誘っているようだ……」
ヴィクトルは、両手で俺の乳首を愛撫し始めた。
「ひゃあっ、あっ、あんっ……!」
嫌だ……。
ヴィクトルに触られて感じたくなんてないのに、俺の身体がヴィクトルの愛撫に快感を拾い始める。
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