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第19話
しおりを挟む16歳になっているというのに、縁談の話もまったくなく、もちろん婚約者もいない俺!
そして、うなるほど縁談の話がきているのに、兄の俺に遠慮してか誰とも婚約していないアルベルト、さらにその傲慢な性格からか、はたまた選り好みしすぎているのか、王族であるというのに未だに婚約者が内定していないヴィクトル……。
俺たち3人に、婚約者の話はタブーだったはずなのに、ここでヴィクトルが婚約の話を持ち出してくるとは!?
――もしかして、ついにヴィクトルにも婚約者が決まったのかな?
「ふん、そう余裕ぶっていられるのも今のうちだ。さあ、アントン、行くぞ。俺についてこい」
ヴィクトルは一歩進み出ると、俺の腕を掴んだ。
「気安く兄に触れないでいただけますか?」
すぐさま、アルベルトがヴィクトルの手を払いのける。
二人の間に、ビリっと青白い火花が散った。
おそらくアルベルトが魔法を使ったのだろう。
「……チッ! 小賢しい真似を!」
ヴィクトルは弾かれたように俺から手を離す。
「ヴィクトル殿下、兄が大変お世話になったようですが、もうその必要はありません。
兄には私がついておりますので」
言うと、アルベルトは俺の肩を抱いた。
「アルベルト、残念だが、アントンは先にこの俺様に話があるようだ。
二人っきりで、将来の大切な話がな!」
勝ち誇ったようなヴィクトルの顔。
言い方!!!!
内密で話がしたいっていう意味、わからなかった???
やっぱりヴィクトルは馬鹿だった……。
俺が必死で出した手紙はなんの意味もなさなかった……。
「兄さん……、どういうことです?」
「ひっ……」
冷え冷えとしたアルベルトの眼差しで見据えられた俺は、まさに蛇ににらまれたカエル!!
「アントン、言ってやれ。お前の……」
「申し訳ありません。アルベルトさん」
ヴィクトルの言葉をさえぎるように、ソフィア王女が口をはさんできた。
「ヴィクトルは、アントンさんに学園の生活のことで折り入ってお話があるみたいですの。
それを、この子ったら、なんでも素直にお話しすることができなくて、本当に申し訳ありません。
お気に障るようないい方しかできなくてお恥ずかしい限りですわ」
王女に謝られては、アルベルトもそれ以上は何も言うことができなくなった。
――ソフィア王女! グッジョブ!!!
「姉上っ、俺はっ……」
「ヴィクトル、大事なお話があるんでしょう?
……アントンさん、ヴィクトルのために少しお時間を取っていただけるかしら?」
「はっ、はい!」
ソフィア王女のナイスアシストによって、なんとか先にヴィクトルと話をつけることができそうだ。
「アルベルトさんには、お話が終わるまで私がお庭をご案内いたしますわ。いま中庭のお花が見ごろですの。
では参りましょうか」
「……ええ。ありがとうございます」
ソフィア王女に微笑まれ、アルベルトも微笑み返す……が、顔がちょっとひきつっている……。
「……なんのお話だったのか、家に帰ってからきちんと聞かせてもらいますからね!」
すれ違いざま、アルベルトに耳元でささやかれ、俺の背筋がピンと伸びた。
「うん。わかってる。もちろんだよ。アルベルト……」
――ああーっ! また言い訳を考えなくてはっ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴィクトルに連れてこられたのは、王宮の中でもかなり奥まった場所……。
もしかして、ヴィクトルの居室だろうか?
ヴィクトルは俺を部屋に招き入れると、後ろでにドアを閉めて鍵をかけた。
「手紙は読んでいただけたんですよね?」
「……」
ヴィクトル何も言わず、奥まった場所にある豪華なソファに座るように、俺を促した。
「ヴィクトル殿下っ! 折り入ってお話があるんですってば!」
「わかってるぞ、アントン!」
ヴィクトルはなぜか向かいの席ではなく、俺のすぐ隣に密着するようにして腰掛けてきた。
「殿下!? だからっ、俺の話を……っ!」
「お前の気持ちはすべてわかっている、アントン!」
ヴィクトルは俺の両手を取り、自分の両手で包み込むようにした。
「……は!?」
「愚鈍なお前も、ついに自分の気持ちに気が付くことができたんだな。
素直になったことは褒めてやろう」
ヴィクトルは言うと、俺の手の甲にご令嬢にするみたいに口づけてくる。
「何するっ……!」
俺が慌てて手を引こうとすると、ヴィクトルは、そのままグイッと引き寄せてきた。
その反動で、俺がヴィクトルの胸に倒れこむ形となる。
ヴィクトルはそのまま俺を抱き寄せた。
「アントン、そう照れなくてもいい。……二人きりだ」
「殿下っ! 離してください! 何を考えてるんですか!?」
「二人きりで俺との将来の話をしたいんだろう? 俺もずっと同じことを思っていた」
「はあ!?」
全く話が見えてこないんだが。俺はただ、アルベルトの対策を……っ!!
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