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第12話

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「……ちょっと、気分が悪くて……」


「それはいけないね~」


 エリアスは言うと、ぎゅっと俺の肩を抱いた。


 俺はぎょっとする。

 入学当時は、俺と同じくらいの背丈だったはずなのに、気づくと頭半分以上俺より高くなっている!

 そういえば、最近子供っぽさもぬけて、可愛いに加えてカッコよさも出てきているような・・・!?



「今日は寮に戻って早めに寝るよ……」


 いろんな意味でショックを受けた俺は、背中を丸める。


「駄目だよ、今日の疲れを明日に持ち越しちゃ良くないんだよ?」

 エリアスからいい匂いが漂ってくる。

「……」

「こういうときこそ、お風呂に入って嫌な気分も全部さっぱりしよっ! ねっ!?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ――なぜこうなった!?


 月曜日にきっぱりはっきり断ったというのに、気づくと俺はエリアスの住む学園寮の最上階にいた。

 エリアスの部屋は、大臣の息子というだけあって一般の寮生とは違う特別室。

 そして!!

 なぜかそこは、エリアス好みに好き勝手改装されており、室内に豪華な風呂があるのだ!!!!


 ――いつ来てもすごい風呂だ。


 俺は、大きな湯船につかりながら、超高級ホテルのちょっと贅沢な貸切風呂といっても過言でないほどの、青いタイル張りの豪華な風呂を見渡す。

 白いライオンの石像の口からは、滔々と湯が流れ落ちている。


 この世界に転生して、ほとんど不都合はなかったが、一つだけ俺にとって不満なことがあった。

 それは、風呂が一般的でないこと!!!


 こちらの世界ではいわゆる「サウナ」が主流であり、サウナ室はいたるところに設置されているのだが、前世の俺が好んだ「大浴場」というものがどこにも見あらない。


 俺の寮の部屋も、ちゃっかり特別室なのだが、ついているのはシャワーのみ。

 共用の大き目サウナもあるが、そこに行くことはアルベルトにきつく止められている……。でもいいんだ。サウナはあまり好きじゃないし……。

 というわけで、この世界で、大きな風呂に入ることができるこのエリアスの自室は俺にとって素晴らしく魅力的なところであるのだ!


 あるのだが……、



「お待たせ~」

 もちろん待ってなどいないが、エリアスが真っ裸で入ってくる。

 長い金髪はポニーテールみたいにして一纏めにしていて、もちろん、全裸!


 この世界では前を隠す習慣というものはないようだ。
 
 ここで、エリアスの一物がいわゆる「臨戦状態」だったりしたら、俺はそのまま裸にタオルを巻きつけてとっとと逃げ出していただろう。


 だが……、

 風呂で見るエリアスの一物は、いつも「平常体」であった。



 ――やっぱりそういう目で俺を見てるわけじゃないんだよな?



 あのねっとりとした濃厚接触の数々を思い出すが、あくまで友達としての親愛の表れなのだろうと、俺は自分に言い聞かせる。


 それにしても……、通常の状態であのサイズなら、臨戦態勢になったときはどれほどのものになるのだろうか?

 俺は恐れおののく。

 そりゃ、あのアデラもメロメロになるのだろう。あんな凄いモノであんなことやこんなことを…‥‥、


 ――いや、駄目だ。そんな想像をしてはいけない!!!


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