【完結】前世の記憶が転生先で全く役に立たないのだが?! ~逆チートの俺が異世界で生き延びる方法~

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
10 / 95

第10話

しおりを挟む
 ヴィクトルとこういう経緯になったのには、深い深~いわけがある!

 元はと言えば、俺の悩み多き体質にそれは起因している。


 俺は魔法が使えない。だが、魔力が全然ないわけではない。

 どんなに魔力のレベルが低かろうと、人は少なからず魔力を持っている。

 これはこの世界に生きている人間にすべて共通することである。

 魔力のレベルというのは人によって個人差であり、一般的に貴族は総じて魔力が高くて魔法が使えるものが多いが、一般人でも魔力が高いものはまれにいる。


 そして、魔法が使えないごく普通の人なら、体力と同じように、眠ったり食べたりすれば魔力は自然と回復する。
 生活するうえで、魔力のことは何も気にすることはない。

 だが俺は何の因果か、魔力欠乏症という体質のため、自分で魔力を回復することができない。
 俺は5歳でこの症状が始まってしまった!

 もし魔力を回復することができず、魔力がゼロになってしまった場合、その人間は死ぬ……。

 そのため俺は、魔力の高いものに定期的に魔力を補ってもらう必要があるのだ。


 しかも!

 魔力は誰のものでもいいというわけではない!

 血液型と同じで、型が合わない魔力を注がれると、回復どころかさらに悪くなってしまうのだ。



 そのため、俺は貴族学校に入学した後も、毎週末実家に帰り、魔力の型があうアルベルトに魔力を補ってもらうことにしていたのだ。


 だが、この学園に入学して3週間たったころ事件は起こった!

 一週間は絶対に持つくらい魔力は補充されていたにもかかわらず、おれはたった3日で、魔力切れを起こしかけてしまったのだ!

 どうやら魔力というのは、ストレスに非常に弱いようで、この学園でクラスのみんなからいないもののように扱われ続けた結果、俺のデリケートなハートはぎったんぎったんに傷ついてしまっていたらしい。

 魔力切れで、死にかけの俺は、迷い込んだ温室で王子のヴィクトルに助けられた。

  ヴィクトルと魔力の型が合ったのは、偶然なのか、それとも王族の魔力はオールマイティに使える万能魔力だったからのかはわからない。魔力の型が合うのは、数十人に一人くらいの確率といわれているから、アルベルト以外に魔力の型が合う人間がいて俺は本当にラッキーだった……。

 しかし、家族以外には秘密にしていた魔力欠乏症のことをヴィクトルに知られてしまった。

 ヴィクトルのことだから、これをネタにゆすられでもするのかと俺は怯えたが、何を思ったのかヴィクトルは毎週水曜日に「施し」として、誰にも内緒で俺に魔力を与えてくれることになった。



 そしてそれは、もうすぐ進級しようという今になってもずっと続いている……。



 おかげで俺は家族に無用な心配をかけることもなく、学園生活を続けられているのだ。

 アルベルトが不本意ながら毎週末行っている魔力譲渡で足りないことがバレてしまったら、ますます俺はアルベルトに疎まれてしまうに違いない。

 それに、過保護な両親は、ストレスフルな俺の学園生活に、きっといらぬ心配をするに違いない。


 

 ヴィクトルは、性格に多少……いやかなりの難ありの男だが、わりと人情に厚いところがあるのだろう。
 もしかしたら、基本的に悪い奴ではないのかもしれない。


 だ、が!

 魔力譲渡のたびに、わざわざべろちゅーする必要など全くないわけで!!!


 家でアルベルトから魔力譲渡されるときは、服の上から背中に手を当てられるだけだし、いくら粘膜接触のほうが効率が高いと言っても、唇を重ねるだけでも十分なはずだ!


 現にはじめのうちは、触れるだけのキスだったわけだし……。


 ――しかし、与えられるのみの俺が、ヴィクトルに文句を言うことなど、できるわけがない……。


 俺は袖口で唇をごしごしとこすりながら、教室に戻った。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...