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第8話
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「で、アントン……、最近は、どうなんだ……、ほら、クラスの方は……」
年頃の娘に聞くお父さんのようなセリフに、俺は目を見開く。
「クラスって?」
「ほら、お前がいっていただろう。クラスで浮いていて、毎日つらいとか、なんとか……」
口を開けば人を見下すセリフばかりのヴィクトルだが、意外にも優しいところがあることを俺は知っている。
そんなところも、憎めないところなんだが。
「気にかけていただいてありがとうございます」
俺がほほ笑むと、
「気になどかけるわけがないだろう!? ちょっと興味があるから聞いてみただけだ!」
少し赤くなって顔をそらした。
ちなみに、ヴィクトルは俺と同志だ。なんと、ヴィクトルもクラスに友達が全然いない。
王族だから、取り巻きや護衛はもちろん多数いるが、こうやってちょっとした話をする相手がいない。
まあこの性格だから仕方ないと言えばそうなのだが……。
だが、ヴィクトルとは、ぼっち友達だからこうして会っているわけではない。
「もうすぐ学園祭だな……」
ぽつりとヴィクトルが言う。
「はあ……」
学園祭というワードを耳にし、俺の心はますます重くなった。
「なんだ、辛気臭い顔が、ますますひどくなっているぞ」
「実は……、うちのクラスの出し物のことで……」
「しょうがない。王族としての務めだ。気は進まないが、愚民のお前の話を聞いてやろう」
いちいちもったいぶるヤツだが、この際話す相手がヴィクトルでも仕方がない。
俺は学園祭の出し物のことで起こった、クラスの騒動について話すことにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、次、アントン君」
「ファッ!?」
突然指名され、俺は飛び上がるように立ち上がった。
学園祭の出し物を決めるホームルーム。俺には関係ないと、窓の外をぼーっと見ていたのだが、
どうやら一人ずつ順番に回答していく形式だったらしい。
「学園祭の出し物で、なにかいい案はありますか?」
俺は慌てて、前の黒板に貼り付けられている、生徒からの既出案にざっと目を通した。
演劇に、食べ物屋、ゲームに展示……、誰もが思いつく感じのひとしきりのものは出し尽くされている。
「じゃあ……、メイド喫茶……、とか」
つい前世の経験を持ち出してしまった俺だったが、なんとこの案にクラス中が食いついた!
「め、メイドですとおぉ!!!」
眼鏡のクラス委員が鼻を膨らませている。こいつムッツリだったんだな……。
「男子が執事で、女子がメイドでもいいんですが、その逆もあり……かと」
女子のメイド姿が見たいだけのキモイ男子だと女子から思われたくない俺は、前世の記憶そのままに、男子がメイドコス、女子が執事コスをすることを提案してみたところ……!!
「それって素敵!!!」
「楽しそう~!」
「執事やってみたい~!!!」
「斬新なアイデアですね」
「アントン君自ら女装を志願だと……っ!!!」
などと(最後をのぞいて)好意的な意見が寄せられ、うちのクラスは前代未聞「執事&メイドカフェ」をすることになったのだ!!
――それが先週の話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なっ、アントン! 貴様はっ! 軽蔑するぞ! なんと破廉恥な奴だっ!!!!!!」
そこまで話を聞いていたヴィクトルは急に立ち上がり、真っ赤な顔をして俺を指さした。
「は、破廉恥?」
王族の怒りのスイッチが、俺はいまだによくわからない。
「貴様っ、衆人環視の中、め、メイドの恰好をして、男を惑わそうというのかっ!!??」
「惑わす、俺が??」
「いやらしい、汚らわしい! そのような出し物、俺が王族の権限を使って断固阻止してやる!」
息巻くヴィクトルに、俺はため息をつく。
「殿下がそんなことする必要ないですよ。……もう、駄目になっちゃったんですから」
ようやく俺がクラスの一員として認められた(気がした)、執事&メイド喫茶だったが、今週になって急遽教員からNGが出されたのだ。
「どうせ俺は……、低俗なことしか思いつかない愚民です……」
俺はうつむく。
年頃の娘に聞くお父さんのようなセリフに、俺は目を見開く。
「クラスって?」
「ほら、お前がいっていただろう。クラスで浮いていて、毎日つらいとか、なんとか……」
口を開けば人を見下すセリフばかりのヴィクトルだが、意外にも優しいところがあることを俺は知っている。
そんなところも、憎めないところなんだが。
「気にかけていただいてありがとうございます」
俺がほほ笑むと、
「気になどかけるわけがないだろう!? ちょっと興味があるから聞いてみただけだ!」
少し赤くなって顔をそらした。
ちなみに、ヴィクトルは俺と同志だ。なんと、ヴィクトルもクラスに友達が全然いない。
王族だから、取り巻きや護衛はもちろん多数いるが、こうやってちょっとした話をする相手がいない。
まあこの性格だから仕方ないと言えばそうなのだが……。
だが、ヴィクトルとは、ぼっち友達だからこうして会っているわけではない。
「もうすぐ学園祭だな……」
ぽつりとヴィクトルが言う。
「はあ……」
学園祭というワードを耳にし、俺の心はますます重くなった。
「なんだ、辛気臭い顔が、ますますひどくなっているぞ」
「実は……、うちのクラスの出し物のことで……」
「しょうがない。王族としての務めだ。気は進まないが、愚民のお前の話を聞いてやろう」
いちいちもったいぶるヤツだが、この際話す相手がヴィクトルでも仕方がない。
俺は学園祭の出し物のことで起こった、クラスの騒動について話すことにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、次、アントン君」
「ファッ!?」
突然指名され、俺は飛び上がるように立ち上がった。
学園祭の出し物を決めるホームルーム。俺には関係ないと、窓の外をぼーっと見ていたのだが、
どうやら一人ずつ順番に回答していく形式だったらしい。
「学園祭の出し物で、なにかいい案はありますか?」
俺は慌てて、前の黒板に貼り付けられている、生徒からの既出案にざっと目を通した。
演劇に、食べ物屋、ゲームに展示……、誰もが思いつく感じのひとしきりのものは出し尽くされている。
「じゃあ……、メイド喫茶……、とか」
つい前世の経験を持ち出してしまった俺だったが、なんとこの案にクラス中が食いついた!
「め、メイドですとおぉ!!!」
眼鏡のクラス委員が鼻を膨らませている。こいつムッツリだったんだな……。
「男子が執事で、女子がメイドでもいいんですが、その逆もあり……かと」
女子のメイド姿が見たいだけのキモイ男子だと女子から思われたくない俺は、前世の記憶そのままに、男子がメイドコス、女子が執事コスをすることを提案してみたところ……!!
「それって素敵!!!」
「楽しそう~!」
「執事やってみたい~!!!」
「斬新なアイデアですね」
「アントン君自ら女装を志願だと……っ!!!」
などと(最後をのぞいて)好意的な意見が寄せられ、うちのクラスは前代未聞「執事&メイドカフェ」をすることになったのだ!!
――それが先週の話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なっ、アントン! 貴様はっ! 軽蔑するぞ! なんと破廉恥な奴だっ!!!!!!」
そこまで話を聞いていたヴィクトルは急に立ち上がり、真っ赤な顔をして俺を指さした。
「は、破廉恥?」
王族の怒りのスイッチが、俺はいまだによくわからない。
「貴様っ、衆人環視の中、め、メイドの恰好をして、男を惑わそうというのかっ!!??」
「惑わす、俺が??」
「いやらしい、汚らわしい! そのような出し物、俺が王族の権限を使って断固阻止してやる!」
息巻くヴィクトルに、俺はため息をつく。
「殿下がそんなことする必要ないですよ。……もう、駄目になっちゃったんですから」
ようやく俺がクラスの一員として認められた(気がした)、執事&メイド喫茶だったが、今週になって急遽教員からNGが出されたのだ。
「どうせ俺は……、低俗なことしか思いつかない愚民です……」
俺はうつむく。
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