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第5話
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――エリアス・フェルセン。
この国の魔法省大臣の一人息子で、類まれなる魔力をもつ天才。
黄金の髪と、エメラルドの大きな瞳は見るものすべてを魅了すると言われている。
「アントン、早く、こっちだよ」
綺麗な澄んだ声で俺を呼んだエリアスは、自分の左隣の席を示している。
そして、エリアスの右隣にいるのは、エリアスの婚約者で俺の従姉であるアデラ・ソールバルグだ。
アデラは豊かな巻毛の銀髪の持ち主で、その青灰色の瞳がなんとも気だるく色っぽい雰囲気の16歳。
お母様の弟の娘であり、騎士の一族の名に恥じない凄腕の剣の使い手でもある。
アデラは自分の瞳に映える青色のドレスに、青い宝石の首飾りを身につけている。
エリアスは、フェルセン家のカラーである深緑色の錦糸をあしらったフロッグコートに、レースを襟元と袖口にふんだんにつかったヒラヒラなブラウス、黒ビロードのスリムなタイプのズボン。
ストレートの長い金髪を深緑色のリボンで結び、後ろに垂らしている。
王冠こそないが、その姿は、まるで絵本から出てきた王子様そのものだった。
この世界では、一般的に男子は貴族も短髪にしているものが多い。俺もそうだ。
だが、エリアスほどの美しい髪の毛の持ち主なら、伸ばさなければもったいないというものだろう。そしてその美しいお顔に、背中の半分まである長い髪は違和感が全然ない。
そう。エリアスは顔だけ見れば、美少女そのもの!
こんなこと死んでも言えないが、並んで座るアデラよりもちょっとだけ可愛い!
そういうアデラも、学園の三大美女の一人として有名なのだから、この二人の顔面偏差値がいかほどなものか、お察しだろう。
毎度のことだが、俺はエリアスとアデラの醸し出すゴージャスかつファビュラスな雰囲気に圧倒されていた。
こんな美しすぎる二人が婚約者同士なんて、本当に絵になりすぎる!!
「アントン、また週末実家に帰ってたの?」
アデラがその赤い唇を釣り上げる。
「うん、いろいろと用事があって」
僕は腰掛けると、今日のランチのサンドイッチに手を伸ばす。
「アントンはいつも週末帰っちゃうよね。僕、一緒に買い物に行きたかったのになあ」
エリアスの言葉に、アデラはうなずく。
「そうよ! たまには私達と週末一緒に過ごしましょ!」
「……あはは、考えておくよ」
俺は適当に返事をする。仲睦まじい婚約者同士の邪魔をする趣味は、俺にはない。
エリアスともアデラともクラスも違うが、こうして一緒にランチをすることは入学直後からの日課となっていた。
エリアスとアデラは、学園でたった二人、俺に優しくしてくれる貴重な人間だ。
とはいっても、アデラは血は繋がっていないが従姉だし、エリアスはその婚約者だから、多分、おそらく……、いや絶対、親族だから仕方なく仲良くしてくれてるってことだろうけど。
でも教室では、友人もおらず、ほとんどクラスメートとも口を聞かない俺にとって、このランチタイムに二人と過ごす一時は俺の心のオアシスとなっていた。
「その青い石、すごくきれいだね」
アデラの首飾りを褒める。今まで見たことのない宝石だった。
「アントン! やっぱり気づいてくれたのね。これはね、エリアス様に買っていただいたの。私がいつも頑張っているからって、そのご褒美なんですって!」
アデラはとてもうれしそうだ。どう見ても、とても値が張りそうなネックレスだ。
「アデラがどうしてもほしいっていうから、奮発したんだ。……愛する人のためだよ。これくらい当たり前だよ」
エリアスはにっこりとほほ笑み、俺を見た。
その流し目的な色っぽい目つきに、俺はうっかりドキッとしてしまう。
――恐るべし、超絶美形の威力!
この国の魔法省大臣の一人息子で、類まれなる魔力をもつ天才。
黄金の髪と、エメラルドの大きな瞳は見るものすべてを魅了すると言われている。
「アントン、早く、こっちだよ」
綺麗な澄んだ声で俺を呼んだエリアスは、自分の左隣の席を示している。
そして、エリアスの右隣にいるのは、エリアスの婚約者で俺の従姉であるアデラ・ソールバルグだ。
アデラは豊かな巻毛の銀髪の持ち主で、その青灰色の瞳がなんとも気だるく色っぽい雰囲気の16歳。
お母様の弟の娘であり、騎士の一族の名に恥じない凄腕の剣の使い手でもある。
アデラは自分の瞳に映える青色のドレスに、青い宝石の首飾りを身につけている。
エリアスは、フェルセン家のカラーである深緑色の錦糸をあしらったフロッグコートに、レースを襟元と袖口にふんだんにつかったヒラヒラなブラウス、黒ビロードのスリムなタイプのズボン。
ストレートの長い金髪を深緑色のリボンで結び、後ろに垂らしている。
王冠こそないが、その姿は、まるで絵本から出てきた王子様そのものだった。
この世界では、一般的に男子は貴族も短髪にしているものが多い。俺もそうだ。
だが、エリアスほどの美しい髪の毛の持ち主なら、伸ばさなければもったいないというものだろう。そしてその美しいお顔に、背中の半分まである長い髪は違和感が全然ない。
そう。エリアスは顔だけ見れば、美少女そのもの!
こんなこと死んでも言えないが、並んで座るアデラよりもちょっとだけ可愛い!
そういうアデラも、学園の三大美女の一人として有名なのだから、この二人の顔面偏差値がいかほどなものか、お察しだろう。
毎度のことだが、俺はエリアスとアデラの醸し出すゴージャスかつファビュラスな雰囲気に圧倒されていた。
こんな美しすぎる二人が婚約者同士なんて、本当に絵になりすぎる!!
「アントン、また週末実家に帰ってたの?」
アデラがその赤い唇を釣り上げる。
「うん、いろいろと用事があって」
僕は腰掛けると、今日のランチのサンドイッチに手を伸ばす。
「アントンはいつも週末帰っちゃうよね。僕、一緒に買い物に行きたかったのになあ」
エリアスの言葉に、アデラはうなずく。
「そうよ! たまには私達と週末一緒に過ごしましょ!」
「……あはは、考えておくよ」
俺は適当に返事をする。仲睦まじい婚約者同士の邪魔をする趣味は、俺にはない。
エリアスともアデラともクラスも違うが、こうして一緒にランチをすることは入学直後からの日課となっていた。
エリアスとアデラは、学園でたった二人、俺に優しくしてくれる貴重な人間だ。
とはいっても、アデラは血は繋がっていないが従姉だし、エリアスはその婚約者だから、多分、おそらく……、いや絶対、親族だから仕方なく仲良くしてくれてるってことだろうけど。
でも教室では、友人もおらず、ほとんどクラスメートとも口を聞かない俺にとって、このランチタイムに二人と過ごす一時は俺の心のオアシスとなっていた。
「その青い石、すごくきれいだね」
アデラの首飾りを褒める。今まで見たことのない宝石だった。
「アントン! やっぱり気づいてくれたのね。これはね、エリアス様に買っていただいたの。私がいつも頑張っているからって、そのご褒美なんですって!」
アデラはとてもうれしそうだ。どう見ても、とても値が張りそうなネックレスだ。
「アデラがどうしてもほしいっていうから、奮発したんだ。……愛する人のためだよ。これくらい当たり前だよ」
エリアスはにっこりとほほ笑み、俺を見た。
その流し目的な色っぽい目つきに、俺はうっかりドキッとしてしまう。
――恐るべし、超絶美形の威力!
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