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第3話
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「はあ……」
これからまた一週間、憂鬱な学園生活が始まるのかと思うと、自然とため息が出る。
ちなみに俺には前世の記憶がある。
幼いころはただの夢だと思っていたが、やけに生々しいその記憶は何度も何度も俺の脳内に繰り返され、ある日自然と気が付いたのだ。
――この繰り返し見せられる夢は、俺の前世だったんだと。
その記憶では、俺はしがない「サラリーマン」というやつであり、日本という国の東京というところに住み、毎日満員電車に揺られながら、仕事をこなしては家に帰る…‥という生活を送っていた。
30歳ころまでの記憶しかなく、結婚相手がいたわけでも、子供がいたわけでもない。それ以上も生きていたのかはわからないが、俺の前世の記憶からは抜け落ちている。
それはともかく、幼少期も少年期も青年期も、前世の俺は本当にごく普通の一般人であり、それが俺の今世に色濃く影響しているのだろうと思われてならない。
そして俺は断言する。
――その前世の記憶は、俺の今世に全く役に立っていない!!!!
「はあ……」
またため息をつき、馬車の小窓に映るとっても平凡な自分のお顔をしみじみと眺める。
この黒髪黒目が、この異世界ではかなり貴重なもので、魔王の生まれ変わりや、誰も得ることのできない闇のパワーの持ち主の特徴ではないかと、ひそかに期待した時期もあった。
だって前いた世界では、そういう転生もののアニメやゲームがてんこ盛りだったし!
それに、俺の周りは金髪に銀髪、赤毛にクリーム色、はたまた前世ではありえない特殊な毛色など、とてもカラフルな髪色の人間ばかりだったから。
だが……、
まだ幼いころ、城下町の祭りに連れて行ってもらった俺は驚愕した。
一般人である町のみなさまは、そろって俺のような黒や、茶交じりの黒っぽい髪色をしていたのだ。瞳の色も然り。
――黒、こげ茶は平民の色……。
そう、俺はその時知ったのだ。あのキンキラキンの髪色のお母様お父様、そして弟アルベルトこそが選ばれしお貴族様の髪色だったということを!!!
うつらうつらしていると、俺の通うお貴族様御用達の学園の立派な門があらわれる。
ちなみに、ソルグバーグ家は押しも押されもせぬ名門一家であるからして、その馬車もほかの生徒たちの乗ってくるものよりグレードがかなり高い。
もちろん通っている生徒たちはほぼ全員貴族であるからして、それなりのお家柄の方たちばかりだ。
だが、そんな中、とりわけ豪華な馬車から降り立つ、黒髪黒目の冴えない俺!
この気持ちをわかってもらえるだろうか?
めちゃくちゃすごいスーパーカーから一流芸能人が出てくるかと思いきや、ただのしょっぼいおっさんだったときのがっかり感!
毎回周りの生徒たちに、そんな思いを味わわせてしまう悲しみ。
案の定注目を浴びた俺は、さっそく門のそばにいたほかの生徒からひそひそされている。
俺はぐっと拳を握り締め、下を向いて歩いていく。
――気にしない、気にしない。
これからまた一週間、憂鬱な学園生活が始まるのかと思うと、自然とため息が出る。
ちなみに俺には前世の記憶がある。
幼いころはただの夢だと思っていたが、やけに生々しいその記憶は何度も何度も俺の脳内に繰り返され、ある日自然と気が付いたのだ。
――この繰り返し見せられる夢は、俺の前世だったんだと。
その記憶では、俺はしがない「サラリーマン」というやつであり、日本という国の東京というところに住み、毎日満員電車に揺られながら、仕事をこなしては家に帰る…‥という生活を送っていた。
30歳ころまでの記憶しかなく、結婚相手がいたわけでも、子供がいたわけでもない。それ以上も生きていたのかはわからないが、俺の前世の記憶からは抜け落ちている。
それはともかく、幼少期も少年期も青年期も、前世の俺は本当にごく普通の一般人であり、それが俺の今世に色濃く影響しているのだろうと思われてならない。
そして俺は断言する。
――その前世の記憶は、俺の今世に全く役に立っていない!!!!
「はあ……」
またため息をつき、馬車の小窓に映るとっても平凡な自分のお顔をしみじみと眺める。
この黒髪黒目が、この異世界ではかなり貴重なもので、魔王の生まれ変わりや、誰も得ることのできない闇のパワーの持ち主の特徴ではないかと、ひそかに期待した時期もあった。
だって前いた世界では、そういう転生もののアニメやゲームがてんこ盛りだったし!
それに、俺の周りは金髪に銀髪、赤毛にクリーム色、はたまた前世ではありえない特殊な毛色など、とてもカラフルな髪色の人間ばかりだったから。
だが……、
まだ幼いころ、城下町の祭りに連れて行ってもらった俺は驚愕した。
一般人である町のみなさまは、そろって俺のような黒や、茶交じりの黒っぽい髪色をしていたのだ。瞳の色も然り。
――黒、こげ茶は平民の色……。
そう、俺はその時知ったのだ。あのキンキラキンの髪色のお母様お父様、そして弟アルベルトこそが選ばれしお貴族様の髪色だったということを!!!
うつらうつらしていると、俺の通うお貴族様御用達の学園の立派な門があらわれる。
ちなみに、ソルグバーグ家は押しも押されもせぬ名門一家であるからして、その馬車もほかの生徒たちの乗ってくるものよりグレードがかなり高い。
もちろん通っている生徒たちはほぼ全員貴族であるからして、それなりのお家柄の方たちばかりだ。
だが、そんな中、とりわけ豪華な馬車から降り立つ、黒髪黒目の冴えない俺!
この気持ちをわかってもらえるだろうか?
めちゃくちゃすごいスーパーカーから一流芸能人が出てくるかと思いきや、ただのしょっぼいおっさんだったときのがっかり感!
毎回周りの生徒たちに、そんな思いを味わわせてしまう悲しみ。
案の定注目を浴びた俺は、さっそく門のそばにいたほかの生徒からひそひそされている。
俺はぐっと拳を握り締め、下を向いて歩いていく。
――気にしない、気にしない。
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