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第2話

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 俺は拾われっ子だ。

 お父様とお母様が、行きたくもない王室の舞踏会に出た帰り道、城下町の人通りの少ない小道に俺は捨てられていたのだとういう。

 魔力の高いお父様が、俺の泣き声を察知し、みすぼらしい布にくるまれて、木箱に入れられている赤ん坊の俺を見つけてくれたのだ。

 はっきりいって二人には感謝しかない。

 だって、拾った俺を自分たちの養子にしてくれて、何不自由なく育ててくれた。

 どこからどう見ても、みっともない俺を、家族の一人、しかも長子として育ててくれている。

 普通だったら、どこか施設に預けるか、引き取ったとしても使用人か庭師として屋敷に置くくらいなものなのに……。

 しかし、そんな俺を内心苦々しく思っているのが、弟のアルベルトだ。

 当然自分が受けるべき長子としての扱いを、アルベルトはすべて養子の俺に奪われている。

 そして、お父様とお母様は、自分の子でない俺を溺愛しているのに、実子のアルベルトにはそこそこ冷たい。(特にお母様)

 実子だからこそ、騎士団を受け継ぐものとして厳しく育てなければいけないことはわかるが、幼心にいかにも格下の俺が格別の扱いをうけるのはさぞかしムカついたことだろう。

 とういうわけで、アルベルトの俺に対するあたりはきつい。



 パンに卵料理と紅茶の朝食を済ませると、あっという間に出発の時間になってしまった。

 青い上衣を着て、黒いブーツをはいた俺を、家族3人が見送ってくれる。さらに後ろに控えるのは、執事やメイド長をはじめとした、この広大なソールバルグ家のお屋敷にお勤めの方々…‥。

 俺は、16歳になった秋から、貴族の子弟たちが学ぶ学校に通っている。現在15歳のアルベルトも、16歳になったら入学する予定だ。

 学校は馬車で2時間ほど。通えないこともないが、基本的に全寮制である。

 しかし俺はとある事情があって、こうして毎週末帰ってこなければならないのだが……。





「行ってらっしゃい。また週末帰ってきてね」

 涙ぐむお母様にひしと抱きしめられる。基本女性というのはふんわりと柔らかい感触らしいのだが、お母様はこの国一番の騎士。

 腹筋がバッキバキなので、お胸以外は非常に固い感触である。


「アントン、勉強だけでなく息抜きもしっかりするんだよ」

 優しいお父様のことが、俺は大好きだ。だが、騎士団でドラゴンを倒すときのお父様は周りの騎士たちが震え上がるほど恐ろしいらしい……。



「くれぐれも、問題など起こさないようにしてくださいね」

 ため息交じりで声をかけてくるアルベルトに、俺はあいまいな笑みを浮かべる。


 向こうが嫌っていても、こちらとしてはなんとか友好な関係を保ちたいと常々思っているのだ。

 特に俺の将来のためにも……。


「笑ってごまかしても駄目ですよ」


 アルベルトは冷えた表情のまま、俺の耳元に手を伸ばす。


「……っ」

 冷たい指先にビクッとするが、その手は俺の右耳のピアスに触れただけだった。


「また週末帰ってきてください」

「うん、いつもありがとう。アルベルト」


 そうだ。どんなに蔑まれたって、俺はアルベルトにゴマをすり続けなければならない。

 

 俺の生殺与奪の権は、アルベルトに握られているのだから!!




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