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第1話
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俺は、天使に羽で全身をくすぐられていた。
なぜか俺は素っ裸で、しかも天使は、天使だというのに、俺に触れる手つきがなんだか怪しい。
「んっ……」
額、頬、唇、顎、首、鎖骨……。
ここまでは良かったが、その羽は俺の両乳首をかなり執拗にくすぐったかとおもうと、へその周りを一周し、
そのまま当然のように下腹部へおりていった。
「だめ……だっ!」
天使サマからの性的な刺激に、すでに俺の一物はすっかり持ち上がっていた。
耳元で、クスクスと笑い声が聞こえる。
天使ってこんなにエロくて意地悪なんだっけ?
次の瞬間、俺自身が温かい何かに包まれる。そこは湿っていて、淫靡に蠢いていて、まるで……。
「もうだめっ……! んあっ!」
あっというまに果ててしまった俺に、天使がささやきかける。
『気持ちよかった……?』
あれ、この低音ボイス、どこかで……?
『気持ちよかった? アントン……?』
ちょ、ちょっと待て、これって……。
『すごく可愛い……、アントン兄様、兄さま……』
この声は間違いなく……、
「兄さん!」
「わあっ!!!!」
低音イケボに耳元でささやかれ、俺は完全に覚醒した。
がばりと起き上がると、俺の枕元には、憐れむような視線を向ける美しい男が立っていた。
「やっとお目覚めですか? もう皆そろっていますよ」
「あ、ああ、起きた。もうすっかり目が覚めたよ。ありがとうアルベルト」
さっきまでのあられもない夢を思い出し、思わず自分を確認したが、きちんと絹の寝間着を着込んでいる。
ついでに自分自身も確かめてみたが、大丈夫だった。朝勃ちなどしていない。
「学園に戻る日でしょう? 遅刻しますよ。支度が終わったらすぐに下りてきてください。」
「わかった……」
必要事項だけ告げると、もう用は済んだとばかりに長身の男は、さっさと俺の部屋を出ていく。
アルベルト・ソールバルグ。
少し長めの銀色の髪に、神秘的な青紫色の瞳。
由緒正しい騎士の一族・ソールバルグ家の次男。次期騎士団長として将来を嘱望される眉目秀麗な若者。
そして、
――信じられないことに、俺の弟である。
階下の食卓には、俺の家族が勢ぞろいしていた。
「おはよう、アントン! 昨日はぐっすり眠れたの?」
声をかけてきたのは、アルベルトそっくりの銀髪に紫の瞳をした、シルヴィア・ソールバルグ。
俺のお母様であり、なんとこの国の第一騎士団の団長様でもある!
朝からその神々しいばかりの美しさに、俺の目は眩む。
「アントンはまた今日から学園に戻るんだな。さみしくなるよ」
優しい微笑みを向けてくるのはコンラード・ソールバルグ。
金髪碧眼の美しいその壮年の男性は俺のお父様だ。そして、この国の第二騎士団の団長様だ!
俺の両親は二人とも、この国を守る騎士様なのである。
そして――、
「早く席についてください。遅れますよ」
苛立ちをあらわにし、冷徹な青紫色の瞳を向けてくるのは、俺の一つ下の弟、アルベルト。
一応敬語を使っているが、俺を兄として敬う気持ちなど、これっぽっちもないことはよくわかっている。
「寝過ごしてしまいました。すみません。……おはようございます」
席に着く俺は、黒髪黒目。すらりとした長身の3人に比べて、頭一つ分以上背も低い。
鍛えぬかれた美しい肉体を誇る3人とは違い、体つきもみっともないほど貧弱である。
そして、うっかり神々の庭に迷い込んでしまったのかと勘違いするほど完璧な美貌の3人に比べ、びっくりするほど凡庸な俺の目鼻立ち。
――そう。俺は、場違いな人間なんだ。
なぜか俺は素っ裸で、しかも天使は、天使だというのに、俺に触れる手つきがなんだか怪しい。
「んっ……」
額、頬、唇、顎、首、鎖骨……。
ここまでは良かったが、その羽は俺の両乳首をかなり執拗にくすぐったかとおもうと、へその周りを一周し、
そのまま当然のように下腹部へおりていった。
「だめ……だっ!」
天使サマからの性的な刺激に、すでに俺の一物はすっかり持ち上がっていた。
耳元で、クスクスと笑い声が聞こえる。
天使ってこんなにエロくて意地悪なんだっけ?
次の瞬間、俺自身が温かい何かに包まれる。そこは湿っていて、淫靡に蠢いていて、まるで……。
「もうだめっ……! んあっ!」
あっというまに果ててしまった俺に、天使がささやきかける。
『気持ちよかった……?』
あれ、この低音ボイス、どこかで……?
『気持ちよかった? アントン……?』
ちょ、ちょっと待て、これって……。
『すごく可愛い……、アントン兄様、兄さま……』
この声は間違いなく……、
「兄さん!」
「わあっ!!!!」
低音イケボに耳元でささやかれ、俺は完全に覚醒した。
がばりと起き上がると、俺の枕元には、憐れむような視線を向ける美しい男が立っていた。
「やっとお目覚めですか? もう皆そろっていますよ」
「あ、ああ、起きた。もうすっかり目が覚めたよ。ありがとうアルベルト」
さっきまでのあられもない夢を思い出し、思わず自分を確認したが、きちんと絹の寝間着を着込んでいる。
ついでに自分自身も確かめてみたが、大丈夫だった。朝勃ちなどしていない。
「学園に戻る日でしょう? 遅刻しますよ。支度が終わったらすぐに下りてきてください。」
「わかった……」
必要事項だけ告げると、もう用は済んだとばかりに長身の男は、さっさと俺の部屋を出ていく。
アルベルト・ソールバルグ。
少し長めの銀色の髪に、神秘的な青紫色の瞳。
由緒正しい騎士の一族・ソールバルグ家の次男。次期騎士団長として将来を嘱望される眉目秀麗な若者。
そして、
――信じられないことに、俺の弟である。
階下の食卓には、俺の家族が勢ぞろいしていた。
「おはよう、アントン! 昨日はぐっすり眠れたの?」
声をかけてきたのは、アルベルトそっくりの銀髪に紫の瞳をした、シルヴィア・ソールバルグ。
俺のお母様であり、なんとこの国の第一騎士団の団長様でもある!
朝からその神々しいばかりの美しさに、俺の目は眩む。
「アントンはまた今日から学園に戻るんだな。さみしくなるよ」
優しい微笑みを向けてくるのはコンラード・ソールバルグ。
金髪碧眼の美しいその壮年の男性は俺のお父様だ。そして、この国の第二騎士団の団長様だ!
俺の両親は二人とも、この国を守る騎士様なのである。
そして――、
「早く席についてください。遅れますよ」
苛立ちをあらわにし、冷徹な青紫色の瞳を向けてくるのは、俺の一つ下の弟、アルベルト。
一応敬語を使っているが、俺を兄として敬う気持ちなど、これっぽっちもないことはよくわかっている。
「寝過ごしてしまいました。すみません。……おはようございます」
席に着く俺は、黒髪黒目。すらりとした長身の3人に比べて、頭一つ分以上背も低い。
鍛えぬかれた美しい肉体を誇る3人とは違い、体つきもみっともないほど貧弱である。
そして、うっかり神々の庭に迷い込んでしまったのかと勘違いするほど完璧な美貌の3人に比べ、びっくりするほど凡庸な俺の目鼻立ち。
――そう。俺は、場違いな人間なんだ。
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