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第75話
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「ディラン! 会いたかった!」
路地裏に入って人目がなくなったところで、たまらず僕はディランに抱き着いていた。
「ルイ、悪いな。仕事中だったんだろ」
ディランが僕を抱きしめ、僕の銀色の髪をかき回す。
「大丈夫だよ。でも、どうしたんだ? こっちに戻ってくるのって、あと三日先のはずだっただろ?」
「調査が無事終わったところで、ちょうど船に空きが出てさ! お前に逢いたくて、すぐに飛び乗って戻ってきたんだ!」
口調から、喜びがあふれ出ている。帰ってきたばかりのディランは、軍服のようなカーキ色のジャケットを着て、さらに日焼けをして逞しくなっていた。
「早く戻ってこれて、よかった!」
ディランは王立学院卒業後、動物学の研究の職についていた。2か月前から師事していた教授とともに、調査のためジシー大陸に渡っていたのだ。
「二か月も離れ離れだっただろ。もう、今すぐ、お前を抱きたくて、たまんねえ……」
ディランの吐息に、僕の身体も熱くなった。
「僕も……、早く、ディランと……」
「それに、お前のそばにいられないんじゃ、アイツとの約束、守れないからな……」
ディランの言葉に、僕は『彼』を思い出した。
「今日から俺、お前んちに厄介になるわ」
「えっ、うちに?」
ディランの言葉に、僕は驚いて顔を上げた。
「ああ、母さん、新しい恋人ができたみたいでさ。あのアパートメントで3人暮らしってのもちょっとな。伯父さんにも言っといてくれよ。部屋一つ空けといて……、いや、お前の部屋でいいか。デカいサイズのベッド用意しといてくれよ!」
「……もうっ!お父さんもいるのに、そんなこと、できるわけないだろ!」
思わず赤くなる。
「いいだろ? そろそろ俺たちの関係を、もっとオープンにしとかないと」
ディランが僕の頬を撫でる。
「今まででもう十分、オープンになってるような気がするけど……」
僕が口ごもると、
「いや、そういう意味じゃなくってだな……。その、もっと公的な意味で、ちゃんとしたいっつーか……。ま、今日の夜ちゃんと話そう!」
ディランが快活に笑う。
「うん……」
若葉色の瞳に見つめられ、胸がいっぱいになる。
離れていても、いつもディランに支えられている。
――僕の、まぶしい恋人。
「ところで、お前、何か変わりはないか?」
ディランの声のトーンが、急に変わった。
「えっ? 別に。何も変わらないけど……」
「そっか、ならいいや……」
珍しくディランは言いよどむ。
「なんだよ? 何か気になること?」
「いや、ジシー大陸の有名な呪術師だっていう婆さんにさ……。俺の身に、何かよくない不吉な影が近づいて来てるって言われて……」
僕は思わずふきだした。
「なに? ディランってそういう占いとか信じるタイプなんだ? ちょっと可愛いところもあるんだね」
「バッ、バカ! そんなんじゃない。なんかちょっと気になったっつーか……」
「でも、気をつけなきゃ。でもその予言のことも心配だし、これから僕と一緒に暮らそう?」
僕が言うと、
「ああ、そうだな。さっそく今晩、お前のこと、メチャクチャに抱いてやるから……」
僕の耳たぶをつまんだディランの声に熱がこもる。
「ここで……、そういうこと言うなよ……」
僕の声にも、熱いため息が混じる。
「……愛してるよ、ルイ」
低い囁き声に、心が震える。
「僕も、愛してる……ディラン」
唇が重なった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
路地裏に入って人目がなくなったところで、たまらず僕はディランに抱き着いていた。
「ルイ、悪いな。仕事中だったんだろ」
ディランが僕を抱きしめ、僕の銀色の髪をかき回す。
「大丈夫だよ。でも、どうしたんだ? こっちに戻ってくるのって、あと三日先のはずだっただろ?」
「調査が無事終わったところで、ちょうど船に空きが出てさ! お前に逢いたくて、すぐに飛び乗って戻ってきたんだ!」
口調から、喜びがあふれ出ている。帰ってきたばかりのディランは、軍服のようなカーキ色のジャケットを着て、さらに日焼けをして逞しくなっていた。
「早く戻ってこれて、よかった!」
ディランは王立学院卒業後、動物学の研究の職についていた。2か月前から師事していた教授とともに、調査のためジシー大陸に渡っていたのだ。
「二か月も離れ離れだっただろ。もう、今すぐ、お前を抱きたくて、たまんねえ……」
ディランの吐息に、僕の身体も熱くなった。
「僕も……、早く、ディランと……」
「それに、お前のそばにいられないんじゃ、アイツとの約束、守れないからな……」
ディランの言葉に、僕は『彼』を思い出した。
「今日から俺、お前んちに厄介になるわ」
「えっ、うちに?」
ディランの言葉に、僕は驚いて顔を上げた。
「ああ、母さん、新しい恋人ができたみたいでさ。あのアパートメントで3人暮らしってのもちょっとな。伯父さんにも言っといてくれよ。部屋一つ空けといて……、いや、お前の部屋でいいか。デカいサイズのベッド用意しといてくれよ!」
「……もうっ!お父さんもいるのに、そんなこと、できるわけないだろ!」
思わず赤くなる。
「いいだろ? そろそろ俺たちの関係を、もっとオープンにしとかないと」
ディランが僕の頬を撫でる。
「今まででもう十分、オープンになってるような気がするけど……」
僕が口ごもると、
「いや、そういう意味じゃなくってだな……。その、もっと公的な意味で、ちゃんとしたいっつーか……。ま、今日の夜ちゃんと話そう!」
ディランが快活に笑う。
「うん……」
若葉色の瞳に見つめられ、胸がいっぱいになる。
離れていても、いつもディランに支えられている。
――僕の、まぶしい恋人。
「ところで、お前、何か変わりはないか?」
ディランの声のトーンが、急に変わった。
「えっ? 別に。何も変わらないけど……」
「そっか、ならいいや……」
珍しくディランは言いよどむ。
「なんだよ? 何か気になること?」
「いや、ジシー大陸の有名な呪術師だっていう婆さんにさ……。俺の身に、何かよくない不吉な影が近づいて来てるって言われて……」
僕は思わずふきだした。
「なに? ディランってそういう占いとか信じるタイプなんだ? ちょっと可愛いところもあるんだね」
「バッ、バカ! そんなんじゃない。なんかちょっと気になったっつーか……」
「でも、気をつけなきゃ。でもその予言のことも心配だし、これから僕と一緒に暮らそう?」
僕が言うと、
「ああ、そうだな。さっそく今晩、お前のこと、メチャクチャに抱いてやるから……」
僕の耳たぶをつまんだディランの声に熱がこもる。
「ここで……、そういうこと言うなよ……」
僕の声にも、熱いため息が混じる。
「……愛してるよ、ルイ」
低い囁き声に、心が震える。
「僕も、愛してる……ディラン」
唇が重なった。
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