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第69話
しおりを挟む「グレイソン・ダグラスは、父を陥れ死に追いやっただけでなく、私から母を奪った。そして……、あなたたちを生んだことで、母は命まで奪われた……」
確かに、僕たちを産んですぐ、母親は死んだと聞いている。
「真実を知り、私は長い間ずっと……復讐の機会を狙っていました。そんなとき、ダグラス家の執事であるジェイコブ・ドラモンドが、死んだ母の貴金属を少しずつ売りさばいていることを知ったのです。王都の質屋で現場を捕らえると、あっさり白状しました。小金ほしさに、執事という立場を利用し、屋敷のものを見つからない程度に盗み出しては、売り飛ばしていたそうです。
そこで、私は彼を脅し、彼の甥ということにして、ダグラス家に入り込むことに成功しました。信用されているドラモンドの血縁者ということで、ほとんど身元調査もされませんでした。
そして、ジェイコブ・ドラモンドから、ルイ・ダグラスについての事件と、その秘密も聞かされました。あなたが持ち出したあのナイフは、いざというときの脅しのいい材料になるからと、処分せずに、ジェイコブから私に託されたものです」
「だから……、オスカーが持っていたのか……」
先代の執事、ジェイコブ・ドラモンドについての、ルイからの警告はこのことだったのだ。
「あなたとワード君の関係を知ったとき、使えると思いました。
あなたが男を愛する人間なら、身も心も奪い、あなたを私の意のままに操ろうと思った。
そして、あなたを私の手に堕とすことで、グレイソン・ダグラスへとあなたへ報いを受けさせようと考えた。
――知らないとはいえ、血のつながった兄に抱かれるんです。これ以上の復讐はないでしょう」
オスカーの告白に、僕は信じられない思いだった。
「ルイ様……、あなたのお父様は、私にあなたを抱くように指示などしていません。そもそも、あなたとワード君との関係も、何もご存じないはずです。
さすがに、どんな理由があろうとも、自分の息子の身体を執事に与えようという親など、どこにもいないでしょう……。
でも、私の言葉をそのまま信じてしまうほど、あなたの心は、新雪のように、真っ白で純粋だった。
あなたと暮らし、あなたを抱くたびに、私はあなたの汚れない心に触れた。そして、深い罪悪感とともに、……生まれたのはあなたへの愛情でした。
まさか、この私が人を愛することができるなんて……思いもよりませんでしたよ。それほどまでに、あなたは……私の中で、尊い存在になってしまった」
オスカーが僕の手を取る。
オスカーの指先は、冷たくなっていた。
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