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第68話

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「お前っ、さっき撃たれたのか!」

「……油断しました。申し訳ありません」

「早くっ、手当を、すぐに医者にっ!」

部屋から出ようとする僕を、オスカーは止めた。


「お止めください。私がここまで来た苦労を、無にされるおつもりですか?」

「でも、その血……」

 尋常な出血量ではない。
このままでは、オスカーは……。

「大丈夫です。かすった程度です。それに、人はそんなに簡単に死んだりはしません」

 僕はシーツでオスカーの腹を押さえると、オスカーをベッドに横たえた。

「迎えがくるまでおとなしくしてろ」

 アリスとテレンスは、死んだように動かない。
 僕は念のため、二人をロープで後ろ手に縛った。




「ルイ様……」

「何だ?」

「あなたに、お話ししなければいけないことがあります」
 オスカーは、まっすぐに僕を見た。顔からは血の気が引いている。

「話はこんど聞く。今はじっとしてろ!」

「おそらく、これが最後の機会になると思います。どうか、聞いてください……」

 切実な願い。僕は小さく息をつき、オスカーのそばに寄った。

「――私は、あなたの父親と、あなたたちにより、家族を奪われました」

 あなたたち、とオスカーは言った。




 僕とルイ――。

 双子のことを言っているのだ。

「執務室で、ご覧になったのでしょう? あの新聞記事。女性を食いものにして、大学を解雇されたというのは、私の父です」

「オスカーの……」

「父はその後、自らの潔白を証明するといって、ナイフで自決しました。……馬鹿な男だ。私はずっとそう思って生きてきました。――真実を知るまでは」

 オスカーは目を見開き、天井を見上げた。

「私が18歳になったとき、父のかつての友人を通じて、死んだ父から遺書が届きました。その内容は驚くべきものでした。いままで、私の生活を援助してくれていた、グレイソン・ダグラスという人物に、父は陥れられていたというものでした」

「僕の父が……」

「彼は、私の学費や生活費などをすべて負担していましたが、グレイソン・ダグラスと私は面識がありませんでした。彼の方も、私の顔など見たくもなかったのでしょう。自分の妻の前夫との間にできた子供など……」


「……妻だって!? オスカーは……、じゃあ」


「私は、あなたのお母様と、その前夫との間にできた子供です。意味は……わかりますね?」


「それなら、僕と、オスカーは……」

「異父兄弟です……」

 オスカーは、苦しげに息を吐いた。




 ――そんなことが……。

 オスカーはそれを知っていて、ずっと、僕と……。

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