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第50話

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「目を閉じるな、俺を見ろ」
 たまらず、固く目をつむっていると、無慈悲な声が降りてくる。

 うっすらと目を開けると、テレンスが腕組みをしたまま、僕を見下ろしている。欲情したその表情。

「くっ……」

「そうだ、足を開いて、もっと良く見せろよ……。お前の、先走りが出てるぜ。そろそろ限界か?」

「あっ……」
 テレンスの目の前で、全裸で自らを慰める……。

 あまりにも屈辱的で、僕の精神を破壊するのに充分な行為だった。

「俺の目を見て、イクんだ。イクときは、俺の名前を呼べ。何度も言わせるなよ。できなかったら、もう一度だ」

「あっ、くうっ……」
 テレンスに見つめられ、僕は手を動かしていた。感じるはずなどないと思っていたのに、身体は反応し、もう少しで達してしまいそうだった。

「もっと先も触れよ。ほら、ビクビクしてる。いつもそんな風に自分でしてるのか?」

「やっ、あ……」

「最高にいい眺めだ。見てるだけで、俺もイキそうだよ……。ほらルイ、こっちを見ろ。感じてるのか……。綺麗だよ、ほら、俺の名前を呼んで……」
 テレンスが目を細める。

 自分でもよくわからない感情が、身体中を駆け巡る。
 感じてはいけないのに、達したいという思いが、僕の手を自然と早める。

「あっ……、ああっ、テレンスっさん……」

「ルイ……」

「テレンスさんっ……」
 テレンスと目を合わせ、テレンスの名前を呼びながら、僕は精をほとばしらせていた。



「よかったぜ……ルイ」
 テレンスは言うと、僕のそばにしゃがみ込んだ。

「……どうして」
 僕は言った。

「どうして、僕に、こんなことを……」

 ノエル・ホワイトというかつての恋人。
 そして、妹のアリスとキスしていたというテレンス。
 彼の想いはどこへ向かっているのか。


「どうして? そんなの……決まってる」
 テレンスは喉の奥で笑うと、僕の髪をつかんで、自分の方に向けた。

「ルイ……、お前が大嫌いだからだよ」
 顔を寄せると、噛みつくように口づけてくる。

「んっ……」

「大嫌いだ。嫌いすぎて、頭がおかしくなりそうだ。お前のすべてを破壊してやる」
 テレンスは言うと、灰色のズボンの前を緩めた。

「さあ、これが欲しかったんだろう。たっぷり味あわせてやるよ」
 ほぐすこともせずに、いきなりテレンスは僕を貫いた。

「あっ、あああっ――」
 痛みと圧迫感で、声が漏れる。

「力を抜けっ
 僕の尻をたたくと、テレンスは強引に腰を進める。

「やめろっ、痛いっ……」

「痛くしてるんだよ。でも、どうせすぐに、気持ちよくなるんだろっ?」

 荒い息が、僕の耳にかかる。

「嫌だっ、あっ、あっ……」

「狭いな……。あれから、アダムには抱いてもらえなかったのか?」
 含み笑い。

 僕は首を振る。

「ディランとは、そんなんじゃないっ!」

「嘘をつくなよ。じゃあ、なんで男を知ってるんだ? ほら、もう俺のことしっかりくわえ込んで離そうとしないぜ」
 激しく揺すぶられる。テレンスのモノが、僕の内部でこすれ、次第に快感を引き出していった。

「違うっ……」

「違わないよ。男が欲しくてたまらないんだろう? アダムとは別れろ。今日からお前は、俺のモノだ」

「あっ、くっ、あああああ……」

「くそっ、締め付けてくるっ……」

 苦しげに言うと、テレンスは僕の最奥を突いた。

「あっ、ああっ」
 快感に身体が反る。

「この……淫売がっ!」

「ああああっ……」

 僕は完全に、テレンスに支配されていた。




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