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第二章~Re: start~
…待って、最後のは違う
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先に降りた伯爵夫人に倣い、私も馭者の手を借りて馬車を降りる。
「「お帰りなさいませ、奥様」」
前回と同じ光景に同じ言葉。
懐かしいようななんだか不思議な感覚だった。
「アイリス、今日からはここで暮らすのよ」
ダリアから声をかけられて見上げると、あの時と同じ…感情の見えない冷たい瞳が私を見下ろしていた。
「はい、奥様。アイリスといいます。皆様、本日からお世話になります」
お出迎えに整列していた使用人たちへ頭を下げる。
「私の娘のアネスティラと、今年六歳になるシリウスよ」
「初めまして、アネスティラ様、シリウス様。アイリスといいます」
ダリアの言葉に小さく頷いて、仁王立ちのアネスティラと目を丸くして姉の影に隠れているシリウスへ改めて挨拶をする。
小さなシリウスを見て嬉しくなる。
目を潰されてしまった時、何より辛かったのはもうシリウスの顔を見れなくなってしまったことだった。
「アネスティラ、シリウス…この娘はお父様の遠い親戚の子で、先日御両親が事故で亡くなってしまったばかりなの。今後は我が家で面倒を見ることになったから、そのつもりでね」
「ふ~ん、髪が真っ白でお婆さんみたい」
「アネスティラ、レディはそんなことを言わないものよ。アイリスはあなたと同じ九歳だけど…あなたの専属侍女として育てるつもりよ」
「ほんと?!専属侍女だなんて嬉しい!!アイリスね!私の言うことには絶対服従しなきゃダメなのよ。わかった?」
「かしこまりました、アネスティラお嬢様」
「アイリス、シリウスです。よろしく…」
人見知りを発動させているシリウスに悶絶してしまいそうになる。
確かにこの頃のシリウスはこんな子だった。
見てはいけないものを見ているような気分になって、なんだかソワソワしてしまう。
「………シリウス様、アイリスです。どうぞ…よろしくお願い致します」
「ちょっと、あなたの主人は私なのよ?」
「ふふっ…失礼致しました、アネスティラお嬢様」
こうして、私の伯爵邸での二度目の生活は始まったのだった。
*
驚いたことに、私には回帰前と同じ部屋が割り当てられた。
恐らくセドリックが決めたのだろう。
本来ならば一階の個室を貰えるだけでも十分な待遇であったが、セドリックの遠縁という私の肩書きから大きな反発はなかったようだ。
回帰前と変わったこと、変わらないことをつい比べてしまう私がいる。
だが、これからやり直していくにあたり、この線引きは非常に重要になるだろうと思っている。
変わらないことに対しての対応は回帰前の情報を役立てることが出来るからだ。
逆に変わってしまったことには、変わった理由を検証する必要がある。
私のアクションによる変化なのか、別の要因によるものなのか…。
そんなことですら、私にとっては復讐の下準備のようでどこか楽しくもあった。
ネスティラの専属侍女という新しい肩書きを手に入れた私は、多くの事を学ぶ機会を得ていた。
アネスティラのサポートを柔軟に対応出来るよう、侍女としての仕事はもちろん貴族令嬢としてのアネスティラと同等の知識もしっかり習得しておかなければならない。
…とはいえ、私は貴族令嬢の礼儀作法は修了しているので、アネスティラのサポートに関しては特に不安はない。
私にとっては、侍女として他人に尽くすことの方が今までにない仕事だったのでいまいち想像出来なかった。
何より、仕えている主人があのアネスティラなのだから、どんなトラブルが発生するか分かったもんじゃない。
アネスティラのトラブルは、私の命に直結する問題にもなり得るのだ。
「まあ…礼儀作法に関してはもうほとんど完璧ですね」
私の為に用意された礼儀作法の先生から褒めてもらえる。
「この分なら礼儀作法は修了と判断しても問題はないでしょう、平民育ちだと聞いていたのであなたの理解力の高さには驚きましたわ。では、侍女として一番必要なもの、それはなんだと思いますか?」
「……主人に従順であること、ですか?」
「なるほど。ですが私は、従順では足りないと考えています」
「足りない…ですか?」
「ええ、必要なのは敬愛する心だと思っています。侍女に敬愛する気持ちが無ければ主人は侍女を信頼することはありません。これは使用人全般に言えることではありますが、専属侍女ともなればより主人に近しい存在になりますから格段の思いが必要になるでしょう。当然、これは逆の立場にも言えることです。主人は使用人から敬愛される人格を備えなければなりません。でなければ誰もついてきてはくれませんから」
「……侍女は主人を選べません。そんな状況でどうやって主人を敬愛出来るようになるのでしょうか?」
「敬愛出来る、そんな主人に変えるのですよ」
「………」
「主人を変えるというのはもちろん簡単なことではありません。主人へ諫言するにも信頼関係がなければ懲罰が必要とみなされることもあるでしょうし、言葉が過ぎれば解雇されてしまうかもしれません。ですが、侍女が誠心誠意主人の為に仕えていればそう難しいものでもないのですよ」
「………少し、難しいです」
先生が仰っていることは理解できる。
回帰前のヘリオとコンラッド王子のような関係を言っているのだろう。
しかし、私の主人がアネスティラな時点でこの問題は私にとってかなりの難題となっていた。
「ふふっ、そうですね。今はまだ、従順であることが必ずしも主人の為になるとは限らないという事を覚えておけばいいと思いますよ」
「はい、分かりました」
「では、本日の授業はここまでと致しましょう」
「はい、ありがとうございました」
最初の一年は邸宅内全般の仕事を覚えながらアネスティラの食事やティータイムのお手伝いなど、極力一緒に行動するよう言われて過ごした。
その結果、アネスティラと摩擦が起きないと判断されたのか、本格的な教育が始まって今に至る。
侍女として問題なしと先生から皆伝を貰えると、今後は本格的に侍女として外でのティーパーティーなどにもついて行くことになるそうだ。
正直、妹として過ごした過去よりも今の方がずっと過ごしやすい。
特に私の場合は、物欲もなくお嬢様として扱ってほしいわけでもないので、下に見られることもないこの身分がちょうど良く感じる。
食事に限って言えば断然前より食べれている。
邸宅の使用人達も、過去ではダリアの顔色を伺って私には極力近づかないようにしていたのだろう。
ロアンが可愛がってくれているからか、ほとんどの使用人が私に好意的な態度でいてくれている。
まぁ、何かとセドリックが気にかけてくれるのには少し驚いているが…
「……アイリス」
部屋に戻る途中で呼び止められて笑顔で振り向く。
「はい、シリウス様。如何されましたか?」
中腰で目線を合わせて訊ねると、シリウスの頬がほんのりと赤くなる。
「本を探すのを手伝って欲しいんだ」
「かしこまりました。本は何をお持ちしましょうか?」
「何冊かあって…僕も探すから一緒に書庫へ行ってくれる?」
「はい、ではお手伝いさせていただきます」
この身分になって良かったこと。
それはこうしてシリウスと一緒に居ても誰にも咎められないことだった。
「………」
シリウスの隣で歩きながら、ふと先程の先生の言葉が思い出される。
『敬愛出来る、そんな主人に変えるのですよ』
シリウスになら誠心誠意仕えることは可能だろう。
だがシリウスは成長するにつれ、ヘリオから少し危ない人という扱いを受けていた。
今回、ヘリオがどのように絡んでくるのかは分からないが…
今ならまだシリウスの志向性を変えることは出来るかもしれない。
『全て斬り捨てることに決めたんです』
『…鼠が居たので排除したまでです』
『…すこしは体力が付いたかと思いましたが、まだまだですね』
「……───!」
…待って、最後のは違う。
《過去のシリウス》の危険なワードを思い出そうとして関係のない事まで思い出してしまった。
つい真っ赤になってしまった顔を冷まそうとパタパタとあおいでいると、不思議そうな顔で見上げてくるシリウスと目が合う。
「どうかしたの?」
「…いいえ!なんでもありません」
可愛いらしい…!
今のシリウスにはとっても癒されている。
このまま真っ直ぐ成長してもらえるよう全身全霊で仕えること心に決める。
しっかり育ててみせますからね!と一人意気込みながら私はシリウスと書庫へ向かうのだった。
「「お帰りなさいませ、奥様」」
前回と同じ光景に同じ言葉。
懐かしいようななんだか不思議な感覚だった。
「アイリス、今日からはここで暮らすのよ」
ダリアから声をかけられて見上げると、あの時と同じ…感情の見えない冷たい瞳が私を見下ろしていた。
「はい、奥様。アイリスといいます。皆様、本日からお世話になります」
お出迎えに整列していた使用人たちへ頭を下げる。
「私の娘のアネスティラと、今年六歳になるシリウスよ」
「初めまして、アネスティラ様、シリウス様。アイリスといいます」
ダリアの言葉に小さく頷いて、仁王立ちのアネスティラと目を丸くして姉の影に隠れているシリウスへ改めて挨拶をする。
小さなシリウスを見て嬉しくなる。
目を潰されてしまった時、何より辛かったのはもうシリウスの顔を見れなくなってしまったことだった。
「アネスティラ、シリウス…この娘はお父様の遠い親戚の子で、先日御両親が事故で亡くなってしまったばかりなの。今後は我が家で面倒を見ることになったから、そのつもりでね」
「ふ~ん、髪が真っ白でお婆さんみたい」
「アネスティラ、レディはそんなことを言わないものよ。アイリスはあなたと同じ九歳だけど…あなたの専属侍女として育てるつもりよ」
「ほんと?!専属侍女だなんて嬉しい!!アイリスね!私の言うことには絶対服従しなきゃダメなのよ。わかった?」
「かしこまりました、アネスティラお嬢様」
「アイリス、シリウスです。よろしく…」
人見知りを発動させているシリウスに悶絶してしまいそうになる。
確かにこの頃のシリウスはこんな子だった。
見てはいけないものを見ているような気分になって、なんだかソワソワしてしまう。
「………シリウス様、アイリスです。どうぞ…よろしくお願い致します」
「ちょっと、あなたの主人は私なのよ?」
「ふふっ…失礼致しました、アネスティラお嬢様」
こうして、私の伯爵邸での二度目の生活は始まったのだった。
*
驚いたことに、私には回帰前と同じ部屋が割り当てられた。
恐らくセドリックが決めたのだろう。
本来ならば一階の個室を貰えるだけでも十分な待遇であったが、セドリックの遠縁という私の肩書きから大きな反発はなかったようだ。
回帰前と変わったこと、変わらないことをつい比べてしまう私がいる。
だが、これからやり直していくにあたり、この線引きは非常に重要になるだろうと思っている。
変わらないことに対しての対応は回帰前の情報を役立てることが出来るからだ。
逆に変わってしまったことには、変わった理由を検証する必要がある。
私のアクションによる変化なのか、別の要因によるものなのか…。
そんなことですら、私にとっては復讐の下準備のようでどこか楽しくもあった。
ネスティラの専属侍女という新しい肩書きを手に入れた私は、多くの事を学ぶ機会を得ていた。
アネスティラのサポートを柔軟に対応出来るよう、侍女としての仕事はもちろん貴族令嬢としてのアネスティラと同等の知識もしっかり習得しておかなければならない。
…とはいえ、私は貴族令嬢の礼儀作法は修了しているので、アネスティラのサポートに関しては特に不安はない。
私にとっては、侍女として他人に尽くすことの方が今までにない仕事だったのでいまいち想像出来なかった。
何より、仕えている主人があのアネスティラなのだから、どんなトラブルが発生するか分かったもんじゃない。
アネスティラのトラブルは、私の命に直結する問題にもなり得るのだ。
「まあ…礼儀作法に関してはもうほとんど完璧ですね」
私の為に用意された礼儀作法の先生から褒めてもらえる。
「この分なら礼儀作法は修了と判断しても問題はないでしょう、平民育ちだと聞いていたのであなたの理解力の高さには驚きましたわ。では、侍女として一番必要なもの、それはなんだと思いますか?」
「……主人に従順であること、ですか?」
「なるほど。ですが私は、従順では足りないと考えています」
「足りない…ですか?」
「ええ、必要なのは敬愛する心だと思っています。侍女に敬愛する気持ちが無ければ主人は侍女を信頼することはありません。これは使用人全般に言えることではありますが、専属侍女ともなればより主人に近しい存在になりますから格段の思いが必要になるでしょう。当然、これは逆の立場にも言えることです。主人は使用人から敬愛される人格を備えなければなりません。でなければ誰もついてきてはくれませんから」
「……侍女は主人を選べません。そんな状況でどうやって主人を敬愛出来るようになるのでしょうか?」
「敬愛出来る、そんな主人に変えるのですよ」
「………」
「主人を変えるというのはもちろん簡単なことではありません。主人へ諫言するにも信頼関係がなければ懲罰が必要とみなされることもあるでしょうし、言葉が過ぎれば解雇されてしまうかもしれません。ですが、侍女が誠心誠意主人の為に仕えていればそう難しいものでもないのですよ」
「………少し、難しいです」
先生が仰っていることは理解できる。
回帰前のヘリオとコンラッド王子のような関係を言っているのだろう。
しかし、私の主人がアネスティラな時点でこの問題は私にとってかなりの難題となっていた。
「ふふっ、そうですね。今はまだ、従順であることが必ずしも主人の為になるとは限らないという事を覚えておけばいいと思いますよ」
「はい、分かりました」
「では、本日の授業はここまでと致しましょう」
「はい、ありがとうございました」
最初の一年は邸宅内全般の仕事を覚えながらアネスティラの食事やティータイムのお手伝いなど、極力一緒に行動するよう言われて過ごした。
その結果、アネスティラと摩擦が起きないと判断されたのか、本格的な教育が始まって今に至る。
侍女として問題なしと先生から皆伝を貰えると、今後は本格的に侍女として外でのティーパーティーなどにもついて行くことになるそうだ。
正直、妹として過ごした過去よりも今の方がずっと過ごしやすい。
特に私の場合は、物欲もなくお嬢様として扱ってほしいわけでもないので、下に見られることもないこの身分がちょうど良く感じる。
食事に限って言えば断然前より食べれている。
邸宅の使用人達も、過去ではダリアの顔色を伺って私には極力近づかないようにしていたのだろう。
ロアンが可愛がってくれているからか、ほとんどの使用人が私に好意的な態度でいてくれている。
まぁ、何かとセドリックが気にかけてくれるのには少し驚いているが…
「……アイリス」
部屋に戻る途中で呼び止められて笑顔で振り向く。
「はい、シリウス様。如何されましたか?」
中腰で目線を合わせて訊ねると、シリウスの頬がほんのりと赤くなる。
「本を探すのを手伝って欲しいんだ」
「かしこまりました。本は何をお持ちしましょうか?」
「何冊かあって…僕も探すから一緒に書庫へ行ってくれる?」
「はい、ではお手伝いさせていただきます」
この身分になって良かったこと。
それはこうしてシリウスと一緒に居ても誰にも咎められないことだった。
「………」
シリウスの隣で歩きながら、ふと先程の先生の言葉が思い出される。
『敬愛出来る、そんな主人に変えるのですよ』
シリウスになら誠心誠意仕えることは可能だろう。
だがシリウスは成長するにつれ、ヘリオから少し危ない人という扱いを受けていた。
今回、ヘリオがどのように絡んでくるのかは分からないが…
今ならまだシリウスの志向性を変えることは出来るかもしれない。
『全て斬り捨てることに決めたんです』
『…鼠が居たので排除したまでです』
『…すこしは体力が付いたかと思いましたが、まだまだですね』
「……───!」
…待って、最後のは違う。
《過去のシリウス》の危険なワードを思い出そうとして関係のない事まで思い出してしまった。
つい真っ赤になってしまった顔を冷まそうとパタパタとあおいでいると、不思議そうな顔で見上げてくるシリウスと目が合う。
「どうかしたの?」
「…いいえ!なんでもありません」
可愛いらしい…!
今のシリウスにはとっても癒されている。
このまま真っ直ぐ成長してもらえるよう全身全霊で仕えること心に決める。
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