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しおりを挟むカーテンから差し込む光に顔をしかめながら俺は目を開けた。
いつもの自分の部屋じゃないベッドが体を起こすとギシッと軋む音がした。
ぼんやりとする頭で部屋を見渡す。同じ間取りだけど、物のないシンプルすぎる部屋。
……そっか、ここ葵の家か。
愛し合う、という表現が一般的に似合う行為を仕事に差し支えない程度にこのベッドでした。
気を失うようなこともなく、時折甘い台詞を耳元で囁かれ、労るように優しく髪をなで、手をのばして笑う葵はひどく扇情的で快楽に溺れた。俺はすがるように葵の名前を呼んだ。
ただの処理とは程遠い時間だった気がする。
前にした時は、正直怖いと思ってしまったこともあったけど最終的には体に気持ちいいことを徹底的に覚え込ませられ、快感に支配された体は葵を受け入れた。
でも、その時と昨日とでは全然違う。
快感に溺れたし、バカみたいに喘いだ。
だけど、優しくてまるで甘やかすように葵は抱いた……まるで恋人みたいに。
葵の好きにしたらいいって言ったけど、まさかあんな風に…と、昨日の記憶が蘇ってきたところで俺は顔が熱くなってぶんぶんと首を横に振った。
なんだかとても恥ずかしいし、ちょっとムズムズする。ムラムラの次はムズムズかよ…と、こそばゆい気持ちを誤魔化すように笑ってからベッドから出る。
本来のベッドの持ち主はここには居ない。
きっと早朝から仕事だろうと思ったところで、わがままにつき合わせてしまって悪かったな、と反省する。
靴下の履いていない足でペタペタと歩きながらリビングに行くと、机にメモと鍵が置いてあった。
真面目そうなきっちりとした丁寧な文字で、仕事に出かけるという内容のことと鍵をかけたらポストに入れておくように書かれていた。
俺はその紙に一言『ありがとう』と書いて、部屋を出た。
俺は今日の撮影に向けて支度を整えた。
シャワーを浴びて、水を飲みながらソファに座っているとインターフォンが鳴った。
画面を覗くと、すばるくんがにこやかに手を振っていた。
「もう、またナナは髪乾かしてない…」
「今出たところだ」
「もう…ほら、座って。乾かしてあげるから」
すばるくんに促されるままにソファに座ると、すばるくんは相変わらずの手際の良さでドライヤーを準備してスイッチをオンにする。
なでる髪が優しくて、心地よくて、起きたばかりなのに眠くなってきた。
「ほら、乾いたよ」
「ん……」
眠い。そう思いながら目をこすると、すばるくんに擦っちゃだめだと手を重ねられた。
「寝不足?目、赤いね…もしかして泣いたの?」
重ねた手が指と指を絡めるように恋人つなぎに変わる。
すばるくんは目を細めてから、俺の顔を覗き込むように見つめて微笑むとぺろっと目尻を舐めた。
「すばるく、ん…?」
「キスしていい?」
「え、でも…もうすぐ出発するんじゃ」
「大丈夫。時間ならまだあるよ…それとも僕とキスするの嫌になっちゃった?」
すばるくんの瞳が射抜くように俺を見る。
微笑んでいる瞳の奥に獰猛な獣がこちらを見ているような気がして、背筋がゾクッと震えた。
「嫌なんかじゃ…」
「そう」
すばるくんは呟くように言うと、手を握っていない方の手で俺の顔を掴み、ソファの背に頭を押さえつけるように唇を重ねた。
すばるくんにされるキスはびっくりするくらいいつも気持ちがいいし、官能的で体が熱くてたまらなくなるけど、こんな荒々しいキスは初めてだ。
「んっ、ふ…んんん」
すばるくんらしくない強引で暴力的なキスをされ息がうまくできない、酸素が圧倒的に足りない。頭がクラクラする。
割りと激しいキスはしてたけど、今日のは何か違う。気持ちいいけど、胸が苦しい。
酸素が吸えなくて苦しいのか、それはわからないけど苦しい。
仕事前にキスをしたとしても、触れ合うような…啄むようなキスとかしなかったのに、こんなキス……
そこまで考えていると、力が抜けてきて繋いで手が緩む。
だけど、手はそのまま解けることもなく、それどころか痛いくらいすばるくんに握られた。
「すば…っ、ごほっ、は」
唇が離れ、酸素が口と鼻から一気に流れこんできて体が貪欲に吸おうとしてむせた。
当たり前だ。口の中に溜まった唾液がいっぱいあるんだから。
「大丈夫、ナナ?」
咳き込む俺を心配するように背中を撫でてくれた。
優しい手は、いつものすばるくんに戻ったようでどことなくホッとした。
「大丈夫…ごめん、変なとこに入っただけだから」
「そっか。でも、もしかして嫌だった?」
「え」
すばるくんの手がぴとっ、と頬に触れてからスー、と人差し指だけが顎から首、首から胸へと下へ降りてきて、ピタッとちょうど股間の位置で止まる。
「勃ってない」
「~~~~ッ」
いや、確かにいつもこんなに激しいと勃っちゃうけどさ!!!!
まさかの発言に俺は思わず顔が熱くなる。口をパクパクとさせていると、すばるくんはフッ、と笑うとまだふにゃりと元気のない俺の息子をやわやわと揉んだ。
「えっ!?あ、すば…すばるくん!?」
「スボン越しだと痛い?」
「ふへ?い、痛くは…ひゃ!や、やめ…」
痛くはないけどなんでいきなり!?
いや、それより仕事の時間もうすぐなんじゃ…っ
スボンのチャックをおろされて、流石の俺も慌ててすばるくんの手を止めるように掴む。
すると悲しそうに目を伏せるので、俺は思わず「うっ」と言葉が詰まった。
いや、仕事……でも、すばるくんにそんな顔をされたら罪悪感が半端ない。
「えっと…」
なんて言おう。
でも仕事前だし、正直時間も気になる。
「だめ?」
コテンと首を傾げるように言うすばるくんに、俺は反射的に首を横に振った。
これがアイドルの本気ーーーっ!!!
自分も一応アイドルだが、こんなおねだりは似合わない。じゃあ、すばるくんはどうなのかと言われれば
めっちゃ似合う。
めちゃくちゃ似合う。マジでアイドル、どんなわがままだろうと叶えたくなる。
普段はキラキラの笑顔だけど、どちらかと言うと大人っぽい頼れる先輩だし、こういうのはSSRでは渚の担当だ。
すばるくんには、正直イメージがない。
でも、普段からのギャップからなのかわからないけどすごい破壊力だ。
「良かった。拒否されたら泣くところだったよ」
泣かせるかーーーい!!!
すばるくんを泣かせるなんてとんでもない。
自分が泣くほうがよっぽど良い。いや、泣かないけど……って、え!?すばるくん、俺のスボン…っ、なんで???
「なっ……ぁ、ひっ」
「ナナを僕が気持ちよくしたくて」
「ぁ、待って…!仕事、仕事行かなきゃ」
「大丈夫、あと一時間はあるよ」
大丈夫大丈夫、とすばるくんは有無を言わせず微笑むと俺の下着をずらす。
まだ柔らかいソコは、勢いよく飛び出さずひょこっと導かれるように顔を出した。
片手でゆっくりと擦られながら、やわやわと玉を揉まれる。
思わずゴクッと喉を鳴らすと、すばるくんは色っぽく微笑むと、あろうことか俺の反応しはじめたアレを止める隙きもなく口に運んだのだった。
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