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第二章【少年期・旅立ち編】
焦心苦慮
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「さぁ。どうぞ」
「……」
エンブリヲがその扉を開けて先に中に入る様に促して来るので、俺は言われた通りに先に扉の中へと入る。
扉の先は薄暗い小さな部屋であった。窓は一つもなく、部屋の真ん中に木製の机とそれを挟む様に背凭れのない椅子が二つあるだけの侘しい部屋。
「さてと。…では今から貴方の拘束を解きますが、面倒なので馬鹿な真似はよして下さいね」
「無実なんですから、馬鹿な真似なんてしません」
「ふっ。そうですか、それは殊勝な事です」
俺が部屋の中に入るとエンブリヲも続けて中に入り、そのまま扉を閉めて鍵を掛けた。そして俺を拘束していた縄を解いたので、ようやく身動きが取れる様になる。
「では、取り敢えず奥側の椅子に座って下さい」
「…はい」
そして言う通りに奥側の椅子に座ると、エンブリヲは俺を拘束していた縄を小さく纏めながら机を挟んだ手前側の椅子に座った。
「――さて。では取り調べを行う前に、取り調べを行う者として改めて自己紹介して置きましょう。…私はスタンゲッタ・エンブリヲ。王都の近衛兵であり、円卓の騎士団に所属しておりまして、先程述べた任務の為にこの街にへと派遣されて来ました。宜しくお願いしますね」
「…は、はぁ。…宜しくお願いします」
椅子に座った後に少し緊張して固まったままでいると、机を挟み向かい合って座ったエンブリヲは律儀に自己紹介をして来たので俺は適当に返事をする。
「では先ず。貴方を此処に連行した訳は殺人の容疑が係っているからですが、何か弁明はありますか?」
「はい。先程何回も言った通りに俺は殺してませんし、ルーカスが帰って来たら直ぐに疑いは晴れると思います」
「ふむ、そう言えばあまりにも馬鹿馬鹿しいので伺ってませんでしたが一応聞いておきますね。…その魔法使いのルーカスと云う人物が捕まえに行った犯人は何方なのでしょうか。心当たりがある人物なのですか?」
「……えっと…」
俺はシヴァの名前を出そうとした時、ふと言葉が詰まってしまった。まだシヴァ本人から何も聞いていないのに、犯人扱いしても良いのだろうかと。
それに恩人を売る様な真似がどうしても引っ掛かってしまう。
「…すみません。俺があの家に行った時には既にクレアは殺されていて、詳しく聞く前にルーカスが犯人を捕まえに行くと言って魔法で消えてしまったので、犯人の事は良く分かりません」
――と、苦し紛れの嘘を言ってしまった。後でばれると面倒な事になりかねないが、やはり本人の口から何があったのかを聞かなければどうしても犯人扱いする事が出来ない。
「…ふむ。まぁ良いでしょう。では貴方があの家に行った経緯を聞かせて下さい」
「…はい。えっと、今日あの家に住んでいる人と会う約束をしていたんですが、会う時間帯になっても来なかったのでちょっと心配になって家を訪ねて見たんです。そうしたら玄関の鍵が開いてたので中に入ったら、リビングでルーカスが倒れてたので起こした後に一緒に寝室に向かって其処でクレアの遺体を発見しました」
「なるほど。それで会う約束をしていたあの家の住人とは誰なのですか?…貴方の口振りからすると、遺体で発見されたクレアさんではないですよね?」
「はい…シヴァ。あ、いや。シルヴァーって言う人です」
シヴァがクレアを殺したかも知れないと云う事はおくびにも出さずに、それとなくシヴァの名前を出す。
「んっ…シルヴァー?……まさかとは思いますが…もしかして、先程言っていたルーカスと言う人物と何か関わりがある方なのですかね?」
「はっ?…えっ。はい。ルーカスの祖父ですが」
「!!?――と言う事は…その者は‘シルヴァー・ヴィ・ランスロット’だとでも言うのですか……ありえない…だが一般人が知れる情報ではない筈…まさか本当だと言うのか」
「…?」
するとシヴァの名前を聞いた途端、何故かエンブリヲの余裕に満ちた表情に陰りが見えた。
俺は意味が分からないので思わず首を傾げた。
「……」
エンブリヲがその扉を開けて先に中に入る様に促して来るので、俺は言われた通りに先に扉の中へと入る。
扉の先は薄暗い小さな部屋であった。窓は一つもなく、部屋の真ん中に木製の机とそれを挟む様に背凭れのない椅子が二つあるだけの侘しい部屋。
「さてと。…では今から貴方の拘束を解きますが、面倒なので馬鹿な真似はよして下さいね」
「無実なんですから、馬鹿な真似なんてしません」
「ふっ。そうですか、それは殊勝な事です」
俺が部屋の中に入るとエンブリヲも続けて中に入り、そのまま扉を閉めて鍵を掛けた。そして俺を拘束していた縄を解いたので、ようやく身動きが取れる様になる。
「では、取り敢えず奥側の椅子に座って下さい」
「…はい」
そして言う通りに奥側の椅子に座ると、エンブリヲは俺を拘束していた縄を小さく纏めながら机を挟んだ手前側の椅子に座った。
「――さて。では取り調べを行う前に、取り調べを行う者として改めて自己紹介して置きましょう。…私はスタンゲッタ・エンブリヲ。王都の近衛兵であり、円卓の騎士団に所属しておりまして、先程述べた任務の為にこの街にへと派遣されて来ました。宜しくお願いしますね」
「…は、はぁ。…宜しくお願いします」
椅子に座った後に少し緊張して固まったままでいると、机を挟み向かい合って座ったエンブリヲは律儀に自己紹介をして来たので俺は適当に返事をする。
「では先ず。貴方を此処に連行した訳は殺人の容疑が係っているからですが、何か弁明はありますか?」
「はい。先程何回も言った通りに俺は殺してませんし、ルーカスが帰って来たら直ぐに疑いは晴れると思います」
「ふむ、そう言えばあまりにも馬鹿馬鹿しいので伺ってませんでしたが一応聞いておきますね。…その魔法使いのルーカスと云う人物が捕まえに行った犯人は何方なのでしょうか。心当たりがある人物なのですか?」
「……えっと…」
俺はシヴァの名前を出そうとした時、ふと言葉が詰まってしまった。まだシヴァ本人から何も聞いていないのに、犯人扱いしても良いのだろうかと。
それに恩人を売る様な真似がどうしても引っ掛かってしまう。
「…すみません。俺があの家に行った時には既にクレアは殺されていて、詳しく聞く前にルーカスが犯人を捕まえに行くと言って魔法で消えてしまったので、犯人の事は良く分かりません」
――と、苦し紛れの嘘を言ってしまった。後でばれると面倒な事になりかねないが、やはり本人の口から何があったのかを聞かなければどうしても犯人扱いする事が出来ない。
「…ふむ。まぁ良いでしょう。では貴方があの家に行った経緯を聞かせて下さい」
「…はい。えっと、今日あの家に住んでいる人と会う約束をしていたんですが、会う時間帯になっても来なかったのでちょっと心配になって家を訪ねて見たんです。そうしたら玄関の鍵が開いてたので中に入ったら、リビングでルーカスが倒れてたので起こした後に一緒に寝室に向かって其処でクレアの遺体を発見しました」
「なるほど。それで会う約束をしていたあの家の住人とは誰なのですか?…貴方の口振りからすると、遺体で発見されたクレアさんではないですよね?」
「はい…シヴァ。あ、いや。シルヴァーって言う人です」
シヴァがクレアを殺したかも知れないと云う事はおくびにも出さずに、それとなくシヴァの名前を出す。
「んっ…シルヴァー?……まさかとは思いますが…もしかして、先程言っていたルーカスと言う人物と何か関わりがある方なのですかね?」
「はっ?…えっ。はい。ルーカスの祖父ですが」
「!!?――と言う事は…その者は‘シルヴァー・ヴィ・ランスロット’だとでも言うのですか……ありえない…だが一般人が知れる情報ではない筈…まさか本当だと言うのか」
「…?」
するとシヴァの名前を聞いた途端、何故かエンブリヲの余裕に満ちた表情に陰りが見えた。
俺は意味が分からないので思わず首を傾げた。
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