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第二章【少年期・旅立ち編】

驚天動地

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「ふむ。驚かれている様ですが、取り敢えず立ち入らせて貰いますよ。――この鼻につく酷い臭い、確実に何かありますので…彼方達は家の中を調べなさい。私がこの少年を見ておくのでね」

「「「…ははっ!」」」


言っている意味が分からずに困惑していると、スタンゲッタと名乗る目の前の金髪の優男は後ろに引き連れている数人の衛兵達に指示を出し、その指示を受けた衛兵達は扉の前に立っている俺を押し退けて家の中に入り込む。


「――ちょ、ちょっと待って下さい!」

「おっと。捜査の邪魔をしないで下さいね、貴方は殺人の容疑者なのですから」

「いや。だからそれは何かの誤解です!…た、確かにこの家の住人が一人殺されましたが、それは俺の仕業じゃないです」

「ふむ。まぁ、弁明は詰所で聞きますよ」


何だかややこしい事になっているので、俺は一旦家の中に入り込んだ衛兵達を引き留めようとするが、スタンゲッタによって止められてしまった。
俺は立ち塞がるスタンゲッタに誤解を解こうと必死になるが、彼は全く興味を示さずに適当にあしらわれてしまう。


「…?」

――あれっ?

俺はスタンゲッタの言動に一つの疑問が湧き、少し冷静になった。


「……あ、あの。スタンゲッタ…さん」

「いえいえ。名乗りましたが私、その名は好きではないのですよ。拷問卿スタンゲッタなんて物騒過ぎて美しくないでしょう?――だからエンブリヲと呼んで下さい」

「あ、はい…えっと、エンブリヲさん。…俺、アイザック家の人間マフィアですよ?弁明は詰所でって…逮捕する気なんですか?そもそも殺してはないけど…そんな権限は衛兵にない筈です」


――と、俺は自分の立場を盾にする。この街の裏社会を取り仕切っている五大組織の共同体コミュニティが街の領主に莫大な献金をしている以上は、余程目立つ事でもしない限りは捕まる事はない…筈なのだ。


「…ふっ」

するとエンブリヲは優しく笑みを浮かべながら、俺を真っ直ぐに見つめて来た。


「そんな事は知っていますよ。貴方達マフィアがこの街の領主に莫大な献金をする事で、貴方達の大概の犯罪行為に目を瞑っている事ぐらい。…だから少し前に新たに王となった公明正大なフィンリー王の命により、数日前に監査団私達が不正の全容を掴む調査を兼ねて王都から直々にこの街に派遣されて来たのですよ、そして私はこの街の事を詳しく知る為に住人が多く住まうこの地区の衛兵長に赴任したのです。…なのでマフィアの不正な特権は、私には通用しないと思って下さいね」

「…えっ?」


――何処からどうやってこの街の実情が王都まで伝わったのかは知る由もないが、ついにこの街を実質的に支配している裏社会に王都の干渉が入ってしまった事に驚いてしまった。
そしてそれを聞かされた俺は同時に自分の今の立場が非常に危ういものである事に気付いて、緊張からか心臓の鼓動が速くなってしまっていた。


「――衛兵長!死体を一つ発見しました!」

「…ふむ。さて、どうやら殺人があったと言う通報は本当の様でしたね。…検分に立ち会って貰いたいので、貴方も付いて来て下さいね」

「……」
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