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第二章【少年期・旅立ち編】
諸行無常
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「…あ、あの。それでレイ様はその話…お受けなさったのですか?」
「まぁ当主からの直々の命令だし、こっちから断れなかったんだ」
「そ、そうなんですか…」
――急な話に戸惑っているのか、エマは伏し目がちになって口を噤む。
「それとその結婚相手、婚約者として数日後から家に住む事になっちゃったんだ。…ほらっ。俺の部屋の反対側の隣の部屋、空き部屋だから多分其処に住む事になる」
「……えぇっ!?…あ、いや。…そ、そうなんですね」
伏し目がちだったエマは顔を上げると目を見開いて、先程よりも驚いた表情を浮かべて此方を見た。――確かに突然幼馴染の結婚話や、その婚約者の同居の話などを聞かされて驚くなと言う方が無理があるだろう。
…当事者である自分も未だに意味不明で戸惑っているのだから。
「…まぁ、でも君は気にしなくても良いよ。何とかして直ぐにでも婚約は解消するから」
「えっ…で、でも向こうの当主からの直々の命令なのでは…?」
「うん。だから婚約を結ばされた…アリアって言う同い年の子だけど、その子から婚約を解消させようと思ってるんだ。――幸い今日の初対面で随分嫌われていたから、簡単な事だと思うし」
「そ、そうですか。良かった…じゃない。…えーっと。レイ様!わ、私も何か協力します!」
エマは俺の考えを聞くと何かを決心した様で妙に張り切り、両手で握りこぶしを作って此方にガッツポーズを見せて来た。
「協力って…今言ったけど、簡単だと思うから別に大丈夫だよ」
しかし多忙なメイドの仕事をしてくれているエマに、こんな簡単であろう事を協力して貰い手を煩わせる事もないと思いやんわりと断る。
「――…だ、駄目ですよレイ様、そんな甘い考えじゃ!」
「えっ?」
「えっ?じゃありません!…良いですか、女心は複雑なんです!些細な事でも心境の変化が訪れてしまうんですよ!」
「…そ、そうなの?」
珍しくエマが俺に対して怒った感情をぶつけて来た。とは言っても本気で怒っている様子でもないが、何故か妙な迫力があるので少したじろいでしまう。
「そうなんです!…それにレイ様、女性に本気で嫌がる事はしないじゃないですか。それで万が一そのアリア…さんが本気でレイ様の事を好きになってしまったら…ど、どうするんですか!」
「……」
――なるほど。アリアとは同性の女の子であるエマの言う事なのだから一理あるかも知れない。…確かに交際経験すらない自分が女心を理解する事なんて無理があるし、それを気兼ねなく相談出来る異性の相手なんてエマしかいない。
それに正直あの我が儘そうな奴と結婚なんて絶対にしたくないが、それでもエマの言う通り嫌われる為に一線を越える気は全くないので、彼女に協力して貰った方が確実だろう。
「うーん…分かった。ごめんエマ。…さっきの言葉は訂正して、やっぱり協力して貰って良いかな?」
「は、はい!勿論協力します!…絶対に阻止しましょう!!」
「あ、う、うん…そうだね」
最終的には何故か自分よりもエマの方が乗り気になっていた。普段は常に落ち着いているエマのそのあまりの高ぶった乗り気に少し戸惑いつつも、協力してくれる事に感謝した。
―――
――
―
「まぁ当主からの直々の命令だし、こっちから断れなかったんだ」
「そ、そうなんですか…」
――急な話に戸惑っているのか、エマは伏し目がちになって口を噤む。
「それとその結婚相手、婚約者として数日後から家に住む事になっちゃったんだ。…ほらっ。俺の部屋の反対側の隣の部屋、空き部屋だから多分其処に住む事になる」
「……えぇっ!?…あ、いや。…そ、そうなんですね」
伏し目がちだったエマは顔を上げると目を見開いて、先程よりも驚いた表情を浮かべて此方を見た。――確かに突然幼馴染の結婚話や、その婚約者の同居の話などを聞かされて驚くなと言う方が無理があるだろう。
…当事者である自分も未だに意味不明で戸惑っているのだから。
「…まぁ、でも君は気にしなくても良いよ。何とかして直ぐにでも婚約は解消するから」
「えっ…で、でも向こうの当主からの直々の命令なのでは…?」
「うん。だから婚約を結ばされた…アリアって言う同い年の子だけど、その子から婚約を解消させようと思ってるんだ。――幸い今日の初対面で随分嫌われていたから、簡単な事だと思うし」
「そ、そうですか。良かった…じゃない。…えーっと。レイ様!わ、私も何か協力します!」
エマは俺の考えを聞くと何かを決心した様で妙に張り切り、両手で握りこぶしを作って此方にガッツポーズを見せて来た。
「協力って…今言ったけど、簡単だと思うから別に大丈夫だよ」
しかし多忙なメイドの仕事をしてくれているエマに、こんな簡単であろう事を協力して貰い手を煩わせる事もないと思いやんわりと断る。
「――…だ、駄目ですよレイ様、そんな甘い考えじゃ!」
「えっ?」
「えっ?じゃありません!…良いですか、女心は複雑なんです!些細な事でも心境の変化が訪れてしまうんですよ!」
「…そ、そうなの?」
珍しくエマが俺に対して怒った感情をぶつけて来た。とは言っても本気で怒っている様子でもないが、何故か妙な迫力があるので少したじろいでしまう。
「そうなんです!…それにレイ様、女性に本気で嫌がる事はしないじゃないですか。それで万が一そのアリア…さんが本気でレイ様の事を好きになってしまったら…ど、どうするんですか!」
「……」
――なるほど。アリアとは同性の女の子であるエマの言う事なのだから一理あるかも知れない。…確かに交際経験すらない自分が女心を理解する事なんて無理があるし、それを気兼ねなく相談出来る異性の相手なんてエマしかいない。
それに正直あの我が儘そうな奴と結婚なんて絶対にしたくないが、それでもエマの言う通り嫌われる為に一線を越える気は全くないので、彼女に協力して貰った方が確実だろう。
「うーん…分かった。ごめんエマ。…さっきの言葉は訂正して、やっぱり協力して貰って良いかな?」
「は、はい!勿論協力します!…絶対に阻止しましょう!!」
「あ、う、うん…そうだね」
最終的には何故か自分よりもエマの方が乗り気になっていた。普段は常に落ち着いているエマのそのあまりの高ぶった乗り気に少し戸惑いつつも、協力してくれる事に感謝した。
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