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第二章【少年期・旅立ち編】
帰り道
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「――さて。若、もう降りても大丈夫でありやすよ」
剣を鞘に収めて地面に置いていた杖を手に取り杖を突くシヴァは振り返り、馬車の窓から顔を覗かせていた俺を見る。
「うん」
そして再び扉を開けて馬車から降りると、地面に横たわっている複数の骸を踏まない様に避けながらシヴァの傍まで近寄った。
「…ねぇシヴァ。こいつ等って、やっぱりサルヴァトーレ…さんが差し向けたのかな?」
「……あっしも最初はそう思ったんですがね。しかしだとすると、あっしの事を良く理解している筈なのに刺客がチンピラ十数人は陳腐過ぎやすな。…それにサルヴァトーレの旦那は闇討ちなんて狡い事をする様な性格でもありやせんし…恐らくサルヴァトーレの旦那はこの件に関知してないと思いやすよ」
「えっ。じゃあ、ルチアーノ家は関係ないのかな?」
「いや。サルヴァトーレの旦那‘は’関知してないと思いやす…しかし状況的に十中八九ルチアーノ家は関知してるでしょうな。理由は…恐らく先程の婚約の話を快く思わない何者かの仕業でありやしょう。旦那の考えは良く分かりやせんが御嬢さん本人があれほど嫌がっていたのだから、家族全員が婚約に賛成って事でもないでしょうしな」
「…まぁ、確かにルチアーノ家に命を狙われる理由って言ったらそれぐらいしか思い当たらないね。――…はぁ。まったく、面倒事が増えたや」
未だに継母から命を狙われている身なのに、更にやっかいな事になって思わず肩を落としてしまった。
「まっ。この件はあっしが誰の仕業か調べて置きやすので、取り敢えず帰るとしやしょう。人が居ないとは云え、何時無関係の者が通り掛かるか分かりやせんし」
するとシヴァに慰められている様に優しく肩を叩かれる。
「そうだね…うん」
――確かに地面に横たわる複数の斬殺死体の傍に何時までも居る事もないので、シヴァに同意して頷いた。
「…それでは御者が居ないからあっしが馬車を走らせやすんで、若は馬車の中に戻って下せぇ」
「分かった」
そしてシヴァは杖を突きながら馬車の外に備え付けられている御者が座る椅子に座り、俺は再び馬車の中に戻った。
すると少ししてから馬車はゆっくりと動き出す。
「ルチアーノ家との確執は作りたくないんだよな――…はぁ。厄介だな」
婚約話に続いて厄介な案件が立て続けに増え、ルチアーノ家の誰かが自分の命を狙っているという事に頭が痛くなる。…それの気を紛らわす為に走り出した馬車の窓から外の景色をボーっと眺めながら、屋敷に着くまでの時間を潰す事にした。
剣を鞘に収めて地面に置いていた杖を手に取り杖を突くシヴァは振り返り、馬車の窓から顔を覗かせていた俺を見る。
「うん」
そして再び扉を開けて馬車から降りると、地面に横たわっている複数の骸を踏まない様に避けながらシヴァの傍まで近寄った。
「…ねぇシヴァ。こいつ等って、やっぱりサルヴァトーレ…さんが差し向けたのかな?」
「……あっしも最初はそう思ったんですがね。しかしだとすると、あっしの事を良く理解している筈なのに刺客がチンピラ十数人は陳腐過ぎやすな。…それにサルヴァトーレの旦那は闇討ちなんて狡い事をする様な性格でもありやせんし…恐らくサルヴァトーレの旦那はこの件に関知してないと思いやすよ」
「えっ。じゃあ、ルチアーノ家は関係ないのかな?」
「いや。サルヴァトーレの旦那‘は’関知してないと思いやす…しかし状況的に十中八九ルチアーノ家は関知してるでしょうな。理由は…恐らく先程の婚約の話を快く思わない何者かの仕業でありやしょう。旦那の考えは良く分かりやせんが御嬢さん本人があれほど嫌がっていたのだから、家族全員が婚約に賛成って事でもないでしょうしな」
「…まぁ、確かにルチアーノ家に命を狙われる理由って言ったらそれぐらいしか思い当たらないね。――…はぁ。まったく、面倒事が増えたや」
未だに継母から命を狙われている身なのに、更にやっかいな事になって思わず肩を落としてしまった。
「まっ。この件はあっしが誰の仕業か調べて置きやすので、取り敢えず帰るとしやしょう。人が居ないとは云え、何時無関係の者が通り掛かるか分かりやせんし」
するとシヴァに慰められている様に優しく肩を叩かれる。
「そうだね…うん」
――確かに地面に横たわる複数の斬殺死体の傍に何時までも居る事もないので、シヴァに同意して頷いた。
「…それでは御者が居ないからあっしが馬車を走らせやすんで、若は馬車の中に戻って下せぇ」
「分かった」
そしてシヴァは杖を突きながら馬車の外に備え付けられている御者が座る椅子に座り、俺は再び馬車の中に戻った。
すると少ししてから馬車はゆっくりと動き出す。
「ルチアーノ家との確執は作りたくないんだよな――…はぁ。厄介だな」
婚約話に続いて厄介な案件が立て続けに増え、ルチアーノ家の誰かが自分の命を狙っているという事に頭が痛くなる。…それの気を紛らわす為に走り出した馬車の窓から外の景色をボーっと眺めながら、屋敷に着くまでの時間を潰す事にした。
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