41 / 60
第二章【少年期・旅立ち編】
帰り道
しおりを挟む
「――さて。若、もう降りても大丈夫でありやすよ」
剣を鞘に収めて地面に置いていた杖を手に取り杖を突くシヴァは振り返り、馬車の窓から顔を覗かせていた俺を見る。
「うん」
そして再び扉を開けて馬車から降りると、地面に横たわっている複数の骸を踏まない様に避けながらシヴァの傍まで近寄った。
「…ねぇシヴァ。こいつ等って、やっぱりサルヴァトーレ…さんが差し向けたのかな?」
「……あっしも最初はそう思ったんですがね。しかしだとすると、あっしの事を良く理解している筈なのに刺客がチンピラ十数人は陳腐過ぎやすな。…それにサルヴァトーレの旦那は闇討ちなんて狡い事をする様な性格でもありやせんし…恐らくサルヴァトーレの旦那はこの件に関知してないと思いやすよ」
「えっ。じゃあ、ルチアーノ家は関係ないのかな?」
「いや。サルヴァトーレの旦那‘は’関知してないと思いやす…しかし状況的に十中八九ルチアーノ家は関知してるでしょうな。理由は…恐らく先程の婚約の話を快く思わない何者かの仕業でありやしょう。旦那の考えは良く分かりやせんが御嬢さん本人があれほど嫌がっていたのだから、家族全員が婚約に賛成って事でもないでしょうしな」
「…まぁ、確かにルチアーノ家に命を狙われる理由って言ったらそれぐらいしか思い当たらないね。――…はぁ。まったく、面倒事が増えたや」
未だに継母から命を狙われている身なのに、更にやっかいな事になって思わず肩を落としてしまった。
「まっ。この件はあっしが誰の仕業か調べて置きやすので、取り敢えず帰るとしやしょう。人が居ないとは云え、何時無関係の者が通り掛かるか分かりやせんし」
するとシヴァに慰められている様に優しく肩を叩かれる。
「そうだね…うん」
――確かに地面に横たわる複数の斬殺死体の傍に何時までも居る事もないので、シヴァに同意して頷いた。
「…それでは御者が居ないからあっしが馬車を走らせやすんで、若は馬車の中に戻って下せぇ」
「分かった」
そしてシヴァは杖を突きながら馬車の外に備え付けられている御者が座る椅子に座り、俺は再び馬車の中に戻った。
すると少ししてから馬車はゆっくりと動き出す。
「ルチアーノ家との確執は作りたくないんだよな――…はぁ。厄介だな」
婚約話に続いて厄介な案件が立て続けに増え、ルチアーノ家の誰かが自分の命を狙っているという事に頭が痛くなる。…それの気を紛らわす為に走り出した馬車の窓から外の景色をボーっと眺めながら、屋敷に着くまでの時間を潰す事にした。
剣を鞘に収めて地面に置いていた杖を手に取り杖を突くシヴァは振り返り、馬車の窓から顔を覗かせていた俺を見る。
「うん」
そして再び扉を開けて馬車から降りると、地面に横たわっている複数の骸を踏まない様に避けながらシヴァの傍まで近寄った。
「…ねぇシヴァ。こいつ等って、やっぱりサルヴァトーレ…さんが差し向けたのかな?」
「……あっしも最初はそう思ったんですがね。しかしだとすると、あっしの事を良く理解している筈なのに刺客がチンピラ十数人は陳腐過ぎやすな。…それにサルヴァトーレの旦那は闇討ちなんて狡い事をする様な性格でもありやせんし…恐らくサルヴァトーレの旦那はこの件に関知してないと思いやすよ」
「えっ。じゃあ、ルチアーノ家は関係ないのかな?」
「いや。サルヴァトーレの旦那‘は’関知してないと思いやす…しかし状況的に十中八九ルチアーノ家は関知してるでしょうな。理由は…恐らく先程の婚約の話を快く思わない何者かの仕業でありやしょう。旦那の考えは良く分かりやせんが御嬢さん本人があれほど嫌がっていたのだから、家族全員が婚約に賛成って事でもないでしょうしな」
「…まぁ、確かにルチアーノ家に命を狙われる理由って言ったらそれぐらいしか思い当たらないね。――…はぁ。まったく、面倒事が増えたや」
未だに継母から命を狙われている身なのに、更にやっかいな事になって思わず肩を落としてしまった。
「まっ。この件はあっしが誰の仕業か調べて置きやすので、取り敢えず帰るとしやしょう。人が居ないとは云え、何時無関係の者が通り掛かるか分かりやせんし」
するとシヴァに慰められている様に優しく肩を叩かれる。
「そうだね…うん」
――確かに地面に横たわる複数の斬殺死体の傍に何時までも居る事もないので、シヴァに同意して頷いた。
「…それでは御者が居ないからあっしが馬車を走らせやすんで、若は馬車の中に戻って下せぇ」
「分かった」
そしてシヴァは杖を突きながら馬車の外に備え付けられている御者が座る椅子に座り、俺は再び馬車の中に戻った。
すると少ししてから馬車はゆっくりと動き出す。
「ルチアーノ家との確執は作りたくないんだよな――…はぁ。厄介だな」
婚約話に続いて厄介な案件が立て続けに増え、ルチアーノ家の誰かが自分の命を狙っているという事に頭が痛くなる。…それの気を紛らわす為に走り出した馬車の窓から外の景色をボーっと眺めながら、屋敷に着くまでの時間を潰す事にした。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!


なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる