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第二章【少年期・旅立ち編】

五年後

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――それから五年程の月日が流れた。

俺は用心深く日々の生活を送っていたので継母に命を奪われる事もなく、来たる日に備えて研鑽を積む毎日を送っていた。

そして去年の暮れから親父の体調が悪化してしまったので、十五歳となった俺はアイザック家当主の代理としてたまに働き始めていたのであった。


「…レイ様。起きて下さい、朝ですよ」

「……うーん…ふぁーっ。…んっ、お早う」


そんなある日の事、幼い頃からエマに起こされていた俺は今日も彼女によって起こされた。
目を擦って大きな欠伸をしてみた後、ベッドの隣に立っているエマを見る。


「はい。お早うございます!」

数年前に色々とあってメイド見習いとして一緒にこの屋敷で住み始めた幼馴染の彼女は、少し前にメイド長が引退したと同時に引き継ぐ形で正式なメイドとしてこの屋敷で働いている。
そんな彼女は既にメイド服姿で朝から元気いっぱいな様子であった。


「…」

「あれっ。どうかされましたか?」

「あ、いや。…何でもないよ、ハハッ。さて起きようかな」

「はい!朝食の準備が出来てますよ」


まじまじとエマを見ていたのが危うくばれそうになったので、誤魔化しながらベッドから降りる。

――エマは昔から可愛いが、成長期を迎えて更に可愛くなっていた。ぼさぼさなくせ毛の目立つ赤毛頭だった彼女の髪は整えられて艶やかな紅い長髪となっており、仕事の邪魔になるそうなので後ろ髪は編み込んでいる。肌を見れば暴力を振るわれる様な事もないので痣一つないきめ細かな肌を取り戻していた。
そしてメイド服の上からでもはっきり分かってしまう彼女の凄く女性らしく成長した体つきは時折目のやり場に困ってしまう。

(…はぁ)

と、心の中で溜め息を吐いてしまった。――数年前から成長期の一環として男の朝の生理現象が起こる様になり、毎朝起こしに来てくれる彼女に見られると何だか気不味い感じがするのでもう起こさなくても良いよと話したが、何故か珍しく猛反対されてしまい、済し崩し的に今日まで変わる事無く起こして貰っている。
…彼女にとって毎朝起こしてくれるのは親切心以外の何物でもないのであろうが、此方は何時も彼女が起こしに来てくれる少し前に生理現象を鎮める為に既に起きており、その後何時も寝た振りをしているのだ。


「…頂きます」

「はい、どうぞ」


しかし何時までもこの様な事をするのは面倒なので近い内にもう一度きちんと話しをしようと思いながら、ベッドから降りた俺はエマが用意してくれた朝食を食べ始めたのであった。
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