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第一章【幼少編】
謀
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一階に降りて廊下を進み、とある部屋の扉の前で足を止めた。
「――父上、レイです。シュトロハイムから伝言を貰って来ました」
その扉をノックする。其処はシュトロハイムが言っていた親父の執務室である。
「…入っていいぞ」
ノックをして少しだけ待つと、中から返事が返って来た。俺はその言葉通りに扉を開けて部屋へと入った。
「…エマ?」
「あ、レイ様。…す、すみません。数日間レイ様に会えなくて……その…」
「スチュアートの娘、お前の話は後にしてくれ」
「は、はい。申し訳ありません…」
部屋の中に居た一人は俺を呼んだ本人、書類の束が山積みになっている机に肘を置いて高そうな椅子に座っていた立派な口髭を生やしている黒いスーツを着た親父だった。親父はエマを黙らせると俺の方に目を向ける。
そしてもう一人、エマがその机を挟んで立っていた。黒いワンピースの上からフリルの付いた白いエプロンを着て頭には白のヘッドドレスを付けており、それがエマの赤毛頭の目立っていたくせ毛を押さえている。
…そう。その姿は正しくメイドであり、何故かエマはメイド服姿の可愛らしい恰好をしていたのであった。
「…えっと。父上、これはどういう事ですか?」
「あぁ。お前もロックは知っているだろ」
「はい。…エマの父ですよね。何度か見かけた事があります」
「…実はな。数日前にロックの家が強盗に押し入られて、ロックは殺されちまったんだ」
「そんな!強盗に…?」
――それを聞いて白々しく、初めて聞いて吃驚した様な表情をして見る。
「あぁ。今犯人を捜しているが…見つかるかどうかは分からん。…まぁそれは置いといて、それでな。ロックの家の無事だった隠し金庫から遺書が見つかってな。もしもの時には大変世話になった信頼出来るシルヴァーに大事な娘の面倒をお願いしたいと書き置きがしてあったんだ」
「そうなん…ですか」
「あぁ。それでな、ロックは良く働いてくれた忠誠心溢れる奴だったから、その最後の願いを聞き届けてやろうと思ったんだが…」
「…だが?」
「まぁ…シルヴァーも歳だし殆ど隠居している様なものだしな。こんな小さな娘を引き取るのは難だろうと思って、家で引き取る事にした」
「…えっ」
――計算が狂った。…と言うか、その遺書はルーカスがロックの筆跡を複製して書いた偽物である。マフィアと云う職業上いつ死ぬかも知れない命であるので、早くから遺書を残して置く事はたいして珍しくないのでそれについては全く怪しんでいない様であった。…しかし親父の気紛れの親切心のせいで、細工は少し失敗してしまっていた様だ。
「え、えーっと…それで、なんでエマはメイドの恰好をしてるんですか?」
「あぁ。ただで住まわせて貰うのは気が引けるらしくてな、それだったら丁度良いから家のメイド…見習いとして働いて貰おうと思ってな。お前の遊び相手をさせていたが、問題ないだろ?」
「……」
――良いのだろうか…?本当はシヴァにエマの事を引き取って貰ってハッピーエンド、めでたしめでたしで終わらせる筈だったんだけど、まさかこんな事になるとは…
「レ、レイ様…御迷惑でしょうか…」
「いや。迷惑じゃないよ…うん。まぁ、自分としては問題ありませんよ父上。何時までも友達が女の子のエマ一人じゃなんだと思っていましたので」
エマはもじもじとしながら不安そうな表情を此方に向けた。俺が嫌がっていると思ってしまったのかも知れないのでそれを否定すると、親父の提案を受け入れる。
「そうか、なら良い。話は以上だから二人とも部屋から出ろ…ついでにお前の部屋の隣の部屋をその娘に宛がうから、案内してやれ」
「は、はい」
「分かりました、失礼します…行こうエマ」
椅子に座っている親父に小さく頭を下げた後、メイド服姿のエマと一緒に執務室を出た。
「――父上、レイです。シュトロハイムから伝言を貰って来ました」
その扉をノックする。其処はシュトロハイムが言っていた親父の執務室である。
「…入っていいぞ」
ノックをして少しだけ待つと、中から返事が返って来た。俺はその言葉通りに扉を開けて部屋へと入った。
「…エマ?」
「あ、レイ様。…す、すみません。数日間レイ様に会えなくて……その…」
「スチュアートの娘、お前の話は後にしてくれ」
「は、はい。申し訳ありません…」
部屋の中に居た一人は俺を呼んだ本人、書類の束が山積みになっている机に肘を置いて高そうな椅子に座っていた立派な口髭を生やしている黒いスーツを着た親父だった。親父はエマを黙らせると俺の方に目を向ける。
そしてもう一人、エマがその机を挟んで立っていた。黒いワンピースの上からフリルの付いた白いエプロンを着て頭には白のヘッドドレスを付けており、それがエマの赤毛頭の目立っていたくせ毛を押さえている。
…そう。その姿は正しくメイドであり、何故かエマはメイド服姿の可愛らしい恰好をしていたのであった。
「…えっと。父上、これはどういう事ですか?」
「あぁ。お前もロックは知っているだろ」
「はい。…エマの父ですよね。何度か見かけた事があります」
「…実はな。数日前にロックの家が強盗に押し入られて、ロックは殺されちまったんだ」
「そんな!強盗に…?」
――それを聞いて白々しく、初めて聞いて吃驚した様な表情をして見る。
「あぁ。今犯人を捜しているが…見つかるかどうかは分からん。…まぁそれは置いといて、それでな。ロックの家の無事だった隠し金庫から遺書が見つかってな。もしもの時には大変世話になった信頼出来るシルヴァーに大事な娘の面倒をお願いしたいと書き置きがしてあったんだ」
「そうなん…ですか」
「あぁ。それでな、ロックは良く働いてくれた忠誠心溢れる奴だったから、その最後の願いを聞き届けてやろうと思ったんだが…」
「…だが?」
「まぁ…シルヴァーも歳だし殆ど隠居している様なものだしな。こんな小さな娘を引き取るのは難だろうと思って、家で引き取る事にした」
「…えっ」
――計算が狂った。…と言うか、その遺書はルーカスがロックの筆跡を複製して書いた偽物である。マフィアと云う職業上いつ死ぬかも知れない命であるので、早くから遺書を残して置く事はたいして珍しくないのでそれについては全く怪しんでいない様であった。…しかし親父の気紛れの親切心のせいで、細工は少し失敗してしまっていた様だ。
「え、えーっと…それで、なんでエマはメイドの恰好をしてるんですか?」
「あぁ。ただで住まわせて貰うのは気が引けるらしくてな、それだったら丁度良いから家のメイド…見習いとして働いて貰おうと思ってな。お前の遊び相手をさせていたが、問題ないだろ?」
「……」
――良いのだろうか…?本当はシヴァにエマの事を引き取って貰ってハッピーエンド、めでたしめでたしで終わらせる筈だったんだけど、まさかこんな事になるとは…
「レ、レイ様…御迷惑でしょうか…」
「いや。迷惑じゃないよ…うん。まぁ、自分としては問題ありませんよ父上。何時までも友達が女の子のエマ一人じゃなんだと思っていましたので」
エマはもじもじとしながら不安そうな表情を此方に向けた。俺が嫌がっていると思ってしまったのかも知れないのでそれを否定すると、親父の提案を受け入れる。
「そうか、なら良い。話は以上だから二人とも部屋から出ろ…ついでにお前の部屋の隣の部屋をその娘に宛がうから、案内してやれ」
「は、はい」
「分かりました、失礼します…行こうエマ」
椅子に座っている親父に小さく頭を下げた後、メイド服姿のエマと一緒に執務室を出た。
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