死刑囚だった俺は異世界転生しても主人公ではなかったので裏社会で成り上がる

第一章【幼少編】

数日後

※


「……」

――翌朝。自分の部屋のベッドの上で目が覚めたが、いつもよりだいぶ遅い時間に目が覚めてしまっていた。エマの家から退散してルーカスと別れた後、いつも通りにこっそりと自分の部屋に戻った俺は使わなかった持ち物を元の場所に戻した後にぐっすりと眠りについたが、いつも起こしに来てくれていたエマが来ていなかったので遅くに目が覚めるのもしょうがない。


「…まぁ。来ないよな」

とても来れる様な状況ではない筈だから、それも当然である。…俺達がした事はきっと今頃騒ぎになっているであろう。少し心配だが今はこっちが直接的な行動を起こす訳には行かず、エマの家を後にする時にルーカスがしてくれた細工が上手く行く事を願うしかない。



――
―

それから更に数日が経った。ここ数日はずっと家に篭って一人で勉強などをして時間を潰していた。そして念には念を入れる為に、ルーカスは暫くの間屋敷には来ない。しかし何処で見張っているのか良く分からないが、外に行けば何処からともなくルーカスが護衛として付いて来てくれるので安心であるが、ルーカスとは友達と云う様な関係ではないので外に出ても一人で遊ぶ気にはなれず、ほぼ自分の部屋で引き籠りの生活を送っている。
…そうしてあらためて自分の交友関係を見直して見ると、絶望的に交友関係が狭い事を思い知らされた。


「…俺って友達少ないな」

椅子に座りながら勉強机に本を広げてそれを見ていた俺は、ふと顔を上げて目の前の開いた窓の外を見上げる。そしてもう少し社交性でも身に着けないと、などと思っていると部屋の扉がノックされた。


「誰？」

「私です若様」

「んっ、ちょっと待ってね。――お待たせ。どうしたの？」


扉の向こうから声を掛けて来たのは執事のシュトロハイムであった。俺は何の用かと本を閉じて椅子から降りると部屋の中を歩いて扉を開けた。
扉を開けると其処には執事服を着たいつもと変わらぬシュトロハイムが立っていたので、俺は長身の彼を見上げながら尋ねた。


「はい。当主様からの言伝で、執務室に来る様にとの事です」

「…父上が。何の用かな？」

「申し訳ありません。詳しい内容は私には伝えられていませんので、当主様に直接伺うしかないかと」

「そう…分かった。それじゃ直ぐに行くね」

「はい、畏まりました。それでは失礼致します」

「うん」


シュトロハイムは一礼すると廊下の向こうへと去って行った。


「……良しっ！たぶん成功したんだな…それ以外にあいつが俺を呼ぶ理由もないし」

俺はその後ろ姿を見届けた後、呼んだ理由は察しがついているが惚けていたので一旦扉を閉めて一人でガッツポーズをする。
そして気を取り直し、見た目と変わらないすっとぼけた子供の振りをしながら一階の親父が居るであろう執務室にへと向かった。