23 / 60
第一章【幼少編】
目には目を、歯には歯を⑦
しおりを挟む
――
―
「…さてと。そろそろ行こうかな」
開いた窓から空を見上げれば満天の星空、時間帯はもう夜中を回っている。
動き易く目立たない恰好に着替えて準備万端で待っていたので、早速色々と詰め込んだ革製のリュックサックを背負って部屋の出入り口である扉の内鍵を閉め、ベッドの下から長いロープを取り出して窓から屋敷を抜け出した。
「お待たせ」
「――おう。来たか。…ってなんだ、重そうなリュック背負ってる見たいだが」
「うん。昨日商会から持って来た物を色々と入れてるんだ」
「そうか…ははっ。それは面白そうだな」
そして屋敷を囲う鉄柵のいつもの部分から敷地外に出ると、其処で待ち合わせをしていたルーカスが既に待っていた。
彼も俺と同じく目立たないラフな服装に着替えており、ローブを着ていないので初めてその中身の鍛え抜かれた筋骨隆々な体がはっきりと見て取れる。
「…あれっ。そっちは剣を置いて来たの?」
「んっ?あぁ、この襤褸服だと剣を差してたら目立つだけだからな。短剣だけ持って来た」
そんなルーカスの姿を見ると手ぶらだと思ってしまったが、俺の言葉にルーカスは自身の懐に手を入れると短剣を取り出して見せてくれた。
「なるほど…良し。じゃあ行こう、付いて来て」
「おう」
彼は短剣を懐に戻した。そして自身の倍ぐらいある背丈の彼を後ろに引き連れ、俺は数回だけ訪れた事のあるエマの家へと向かう。
――そして時間にすれば十数分程の距離を人目に付かない様に歩いていると、何事もなく目的の家へと辿り着いた。
目の前に広がるエマの家は俺の住んでいる屋敷よりはこぢんまりとしているが、一般的な家よりはだいぶ大きなレンガ造りの三階建てであり庭付きである。
「…この家なのか?」
「うん」
「そうか…お前に言うのもなんだが、アイザック家って本当に落ちぶれてるんだな。…アイザック家の幹部の住処だって言うのに、警備してる奴が一人も居ないようだし」
「…そうだね」
こんな真夜中ではなくて昼間の時間帯に数回しか来た事がないので気にした事が無かったが、確かに見渡してみても外には人の気配が全くない。
「まっ、俺達には好都合ってもんだな。…通りすがりでも見られないうちに、さっさと行こうぜ」
「うん。早速行こう」
そしてそのままルーカスと一緒に目の前に広がるエマの家の玄関に行くと、俺は背伸びをして玄関の扉に取り付けられた来訪を知らせる金具の取っ手を握り、それを数回扉に打ち付けた。
「…出て来ないな」
「うーん…エマから聞いてた話だと、父親は毎日かなり遅い時間帯まで起きてるって言ってたけど…まぁ、エマは寝てるだろうし。今日は父親も早めに寝ちゃったのかな?」
「そうか…それじゃあ早速俺の出番だな」
「あぁ、うん。お願い」
俺は扉の前から退いてルーカスに場所を譲ると、彼は玄関の扉に片手の手の平を押し当てた。
「良し。開いたぜ」
するとその瞬間に金属が擦れる音がしたかと思ったら、扉がゆっくりと半開きになった。
見れば扉の内側の閂が開けられており、ルーカスが魔法で開けてくれた事が分かる。
「良し入るか。…処で、標的は何階か分かるのか?」
「うん。入った事はないけど、エマの父親の部屋は一階の一番奥だよ」
「そうか。んじゃ行こう」
そしてルーカスが開けてくれた玄関の扉から、俺達はエマの家に無断で上り込む。
―
「…さてと。そろそろ行こうかな」
開いた窓から空を見上げれば満天の星空、時間帯はもう夜中を回っている。
動き易く目立たない恰好に着替えて準備万端で待っていたので、早速色々と詰め込んだ革製のリュックサックを背負って部屋の出入り口である扉の内鍵を閉め、ベッドの下から長いロープを取り出して窓から屋敷を抜け出した。
「お待たせ」
「――おう。来たか。…ってなんだ、重そうなリュック背負ってる見たいだが」
「うん。昨日商会から持って来た物を色々と入れてるんだ」
「そうか…ははっ。それは面白そうだな」
そして屋敷を囲う鉄柵のいつもの部分から敷地外に出ると、其処で待ち合わせをしていたルーカスが既に待っていた。
彼も俺と同じく目立たないラフな服装に着替えており、ローブを着ていないので初めてその中身の鍛え抜かれた筋骨隆々な体がはっきりと見て取れる。
「…あれっ。そっちは剣を置いて来たの?」
「んっ?あぁ、この襤褸服だと剣を差してたら目立つだけだからな。短剣だけ持って来た」
そんなルーカスの姿を見ると手ぶらだと思ってしまったが、俺の言葉にルーカスは自身の懐に手を入れると短剣を取り出して見せてくれた。
「なるほど…良し。じゃあ行こう、付いて来て」
「おう」
彼は短剣を懐に戻した。そして自身の倍ぐらいある背丈の彼を後ろに引き連れ、俺は数回だけ訪れた事のあるエマの家へと向かう。
――そして時間にすれば十数分程の距離を人目に付かない様に歩いていると、何事もなく目的の家へと辿り着いた。
目の前に広がるエマの家は俺の住んでいる屋敷よりはこぢんまりとしているが、一般的な家よりはだいぶ大きなレンガ造りの三階建てであり庭付きである。
「…この家なのか?」
「うん」
「そうか…お前に言うのもなんだが、アイザック家って本当に落ちぶれてるんだな。…アイザック家の幹部の住処だって言うのに、警備してる奴が一人も居ないようだし」
「…そうだね」
こんな真夜中ではなくて昼間の時間帯に数回しか来た事がないので気にした事が無かったが、確かに見渡してみても外には人の気配が全くない。
「まっ、俺達には好都合ってもんだな。…通りすがりでも見られないうちに、さっさと行こうぜ」
「うん。早速行こう」
そしてそのままルーカスと一緒に目の前に広がるエマの家の玄関に行くと、俺は背伸びをして玄関の扉に取り付けられた来訪を知らせる金具の取っ手を握り、それを数回扉に打ち付けた。
「…出て来ないな」
「うーん…エマから聞いてた話だと、父親は毎日かなり遅い時間帯まで起きてるって言ってたけど…まぁ、エマは寝てるだろうし。今日は父親も早めに寝ちゃったのかな?」
「そうか…それじゃあ早速俺の出番だな」
「あぁ、うん。お願い」
俺は扉の前から退いてルーカスに場所を譲ると、彼は玄関の扉に片手の手の平を押し当てた。
「良し。開いたぜ」
するとその瞬間に金属が擦れる音がしたかと思ったら、扉がゆっくりと半開きになった。
見れば扉の内側の閂が開けられており、ルーカスが魔法で開けてくれた事が分かる。
「良し入るか。…処で、標的は何階か分かるのか?」
「うん。入った事はないけど、エマの父親の部屋は一階の一番奥だよ」
「そうか。んじゃ行こう」
そしてルーカスが開けてくれた玄関の扉から、俺達はエマの家に無断で上り込む。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる