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第一章【幼少編】

目には目を、歯には歯を⑥

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耳打ちをした俺の提案をルーカスは直ぐに了承してくれたお陰で話しは直ぐに終わり、戻って来たエマが運んで来てくれた飲み物を飲みながら三人でのんびりと時間を潰して過ごしていた。


「…あっ。もう遅い時間帯ですね。レイ様、そろそろ私はこれで失礼致しますね。…えっと、ルーカスさんもまた明日」

「んっ…あぁ、そうだね。それじゃあエマ、また明日」

「おぉ。じゃあなエマ」


そして何時もの通りに夜を迎えてエマは俺に丁寧な挨拶をした後に、気さくなルーカスのお陰で彼に対しての人見知りが薄れた様子で部屋を出て帰って行った。


「――…さてと。エマも帰ったから…俺も一旦帰って目立たない恰好に着替えて来るから、真夜中に例の所で落ち合おう」

「…でも本当に良いの?…見返りとか渡せないし、ばれたら少しやばい事になるけど」

「ははっ。…そんな事は気にすんな。女や子供を甚振る馬鹿を懲らしめるのに協力は惜しまないさ。それに俺はアイザック家自体に仕えている訳でもないから何もしがらみがないし、アイザック家の奴に何しようとも自由さ…まぁ、爺ちゃんにばれたら…ちょっとやばいが。…ばれなきゃ大丈夫だ」

「うん、分かった…本当にありがとう」


俺はルーカスの協力の申し出に心から感謝した――そう。俺はエマは助ける為にその元凶であるエマの父親を消そうと考えたが、ルーカスの魔法を目の当たりにしてその力を上手く使えば虐待を矯正出来るのでないかと考えた。

…矯正とは言っても、勿論優しく言葉で諭そうとなんて甘い考えはなく、ルーカスの力を借りる以上は強制的に虐待するのを矯正させるつもりである。


「…それじゃあな。また後で」

「うん。また後で」


そしてルーカスも不敵な笑みを浮かべながら帰って行き、残された俺は真夜中に行う初めての汚れ仕事に向けて準備を開始した。


「――昨日色々と買って置いて良かったな。ついでに色々と試して見るか…」

と、普通は不謹慎極まりない事ではあるが――俺は若干前世の私怨も入ってしまっているのだろうか?
…虐待野郎をきつく懲らしめるのを少しだけ楽しみに感じながら俺は勉強机の一番下の引き出しを開け、昨日商会から契約に基づいて持って来た品々が入っている鍵付きの木箱を取り出す。


「さてと…何を持って行こうかな。っと」

そして木箱を机の上に置いてから別の場所に隠している鍵を取り、勉強机に戻ってから椅子に座ってその木箱を開けた。木箱を開けると中には一見得体の知れない数々の品が入っている。
自分自身も木箱の中にある殆どの品は、店主の丁寧な接客での説明が無ければ使用方法が全然分からなかった物が多い。

そんな品々を良く見定めながら、真夜中までは時間もあるので俺は今日使う物を時間を掛けて吟味し始めた。



―――
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