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第一章【幼少編】
目には目を、歯には歯を⑤
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「ははっ。何か面白いなお前等。――そうだエマ。…何やら無神経な質問しちまったお詫びに、その怪我治してやろうか?」
「…えっ?…い、良いんですか?」
「あぁ。その程度の怪我なら治癒魔法で一瞬で治せるしな」
「――それはちょうど良かった。さっきルーカスが来る前に、シヴァの孫の人が治せる魔法を持っているなら、来たら治して貰おうって話をしてたんだ」
「そうか、なら話は早いな。…それじゃ、ちょこっと指先を腫れている部分に触れさせて貰うぞ」
「…は、はい」
ルーカスは両目を瞑ったエマの左目付近の腫れている部分に、刺激を与えない様にそっと右手の人差し指を当てる。
すると呪文を唱えていないのに、エマの怪我の部分に触れている彼の指先がシヴァと同じ様に一瞬淡い光に包まれた。
「良し治った」
「……わぁ!ありがとう、ルーカスさん」
そしてルーカスが手を離すと目を瞑っていたエマはゆっくりと目を開け、自分の左目付近に手を伸ばして触り、全く腫れがない事が分かるとルーカスに笑顔でお礼を言った。
「おう。どう致しまして。…やっぱり女の子の顔にはでかい腫れよりも笑顔が一番だな」
「……凄いな…」
優しくエマの頭を撫でるルーカスのその姿にシヴァの面影が重なって見えた。俺はそんな二人の様子を見て押し黙る。
(…無詠唱。…昨日言ってた事、ハッタリとかじゃないんだ…)
――エマが治って良かったと思う反面。俺はシヴァから聞いた事のある難しいと言われている無詠唱での魔法の行使を顔色一つ変えずに行い、ルーカスがエマの怪我を軽々と治した事の方に気を取られてしまっていたのだ。
そして昨晩ルーカスがシヴァよりも魔法の腕は自分の方が上と言っていた事を思い出す。
「んっ。どうしたレイ?」
「…あ、あぁうん。何でも無いよ」
「そうか?なら良いが」
エマの怪我を治し終わったルーカスは此方の方に顔を向け、その言葉で気を取られてしまっていた俺は我に返ってそれとない感じの返事をした。
「…そうだエマ。ちょっと喉乾いたし、三人分の飲み物貰って来てくれないかな?」
「あ、はい。分かりました!」
そしてエマの用件は済んだのでルーカスと二人で少し話しをしたいと思い、それを聞かれたく俺はエマを部屋から遠ざける為に適当な用事をお願いする。そのお願いにエマはこくりと頷くと部屋を出て行った。
「――ふぅ。やれやれ…ったく、わざわざ初対面の振りとかさせやがって」
「あははっ。ごめんごめん。エマに余計な心配を掛けさせたくないからさ」
「…まっ、確かに良い子そうだしな。お前の気持ちも良く分かるよ。…で、それとエマに席を外させたのは何かあるのか?」
「…うん。ちょっと…ね」
エマが部屋から出て行き扉が閉まると、ルーカスはその場で腰を下ろして絨毯の上に座ったので俺も傍で適当に座った。そしてルーカスは頭をぽりぽりと掻きながら軽く悪態を吐いた後、何かを察した様子で俺を真っ直ぐに見て来たので、俺も真剣な目でルーカスを見ながら思いついた事を話し始める。
「――…今日の夜って空いてるかな?」
「んっ。別に予定とかないが…なんだ、またどっか行くのか?護衛だから外に出る場合には付いて行くぞ」
「あぁ、うん…ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど…」
と、俺はそっとルーカスに耳打ちをする様に自分の考えを伝えた。
―――
――
―
「…えっ?…い、良いんですか?」
「あぁ。その程度の怪我なら治癒魔法で一瞬で治せるしな」
「――それはちょうど良かった。さっきルーカスが来る前に、シヴァの孫の人が治せる魔法を持っているなら、来たら治して貰おうって話をしてたんだ」
「そうか、なら話は早いな。…それじゃ、ちょこっと指先を腫れている部分に触れさせて貰うぞ」
「…は、はい」
ルーカスは両目を瞑ったエマの左目付近の腫れている部分に、刺激を与えない様にそっと右手の人差し指を当てる。
すると呪文を唱えていないのに、エマの怪我の部分に触れている彼の指先がシヴァと同じ様に一瞬淡い光に包まれた。
「良し治った」
「……わぁ!ありがとう、ルーカスさん」
そしてルーカスが手を離すと目を瞑っていたエマはゆっくりと目を開け、自分の左目付近に手を伸ばして触り、全く腫れがない事が分かるとルーカスに笑顔でお礼を言った。
「おう。どう致しまして。…やっぱり女の子の顔にはでかい腫れよりも笑顔が一番だな」
「……凄いな…」
優しくエマの頭を撫でるルーカスのその姿にシヴァの面影が重なって見えた。俺はそんな二人の様子を見て押し黙る。
(…無詠唱。…昨日言ってた事、ハッタリとかじゃないんだ…)
――エマが治って良かったと思う反面。俺はシヴァから聞いた事のある難しいと言われている無詠唱での魔法の行使を顔色一つ変えずに行い、ルーカスがエマの怪我を軽々と治した事の方に気を取られてしまっていたのだ。
そして昨晩ルーカスがシヴァよりも魔法の腕は自分の方が上と言っていた事を思い出す。
「んっ。どうしたレイ?」
「…あ、あぁうん。何でも無いよ」
「そうか?なら良いが」
エマの怪我を治し終わったルーカスは此方の方に顔を向け、その言葉で気を取られてしまっていた俺は我に返ってそれとない感じの返事をした。
「…そうだエマ。ちょっと喉乾いたし、三人分の飲み物貰って来てくれないかな?」
「あ、はい。分かりました!」
そしてエマの用件は済んだのでルーカスと二人で少し話しをしたいと思い、それを聞かれたく俺はエマを部屋から遠ざける為に適当な用事をお願いする。そのお願いにエマはこくりと頷くと部屋を出て行った。
「――ふぅ。やれやれ…ったく、わざわざ初対面の振りとかさせやがって」
「あははっ。ごめんごめん。エマに余計な心配を掛けさせたくないからさ」
「…まっ、確かに良い子そうだしな。お前の気持ちも良く分かるよ。…で、それとエマに席を外させたのは何かあるのか?」
「…うん。ちょっと…ね」
エマが部屋から出て行き扉が閉まると、ルーカスはその場で腰を下ろして絨毯の上に座ったので俺も傍で適当に座った。そしてルーカスは頭をぽりぽりと掻きながら軽く悪態を吐いた後、何かを察した様子で俺を真っ直ぐに見て来たので、俺も真剣な目でルーカスを見ながら思いついた事を話し始める。
「――…今日の夜って空いてるかな?」
「んっ。別に予定とかないが…なんだ、またどっか行くのか?護衛だから外に出る場合には付いて行くぞ」
「あぁ、うん…ちょっと手伝って欲しい事があるんだけど…」
と、俺はそっとルーカスに耳打ちをする様に自分の考えを伝えた。
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