死刑囚だった俺は異世界転生しても主人公ではなかったので裏社会で成り上がる

信長くん

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第一章【幼少編】

形見

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俺が店主に見せたのは大人の親指の爪ぐらいの小さな丸く加工されてる宝石が付いたネックレスだった。
それはこの世界で俺を生んで亡くなった母が身に付けていた唯一の形見であり、物心付いた頃にシヴァから直接渡された物である。
シヴァが言うには母のメイドをしていた奥さんが俺の出産時にも立ち会っており、そこで死に間際に母から将来息子に直接渡して欲しいと頼まれ、それを自分が受け取って預かっていたそうだ。
…しかし俺の母は何故不幸な目に合うのだろうか。前の世界でもDV親父から俺を守る為に逃げて身体が弱いのに無理して俺を育ててくれた果てに長年の無理が祟って身体を壊し、そのまま亡くなってしまった。
そしてこの世界では俺を生んだ事によって死んでしまった。

―――直接ではないが、間接的にはどちらも俺が殺したようなものだ。

そんな母の形見であるが今は形見おもいでよりも身を守れる道具が欲しい。俺は特別な力を備えている訳でもなく、救い様のない嫌な前世の記憶があるだけの取り柄は没落マフィアの跡取り(暫定)の立場だけだから、想像に過ぎないがきっと母も形見を売る事を許してくれるだろう。


「――いや。首に巻く装身具の部分は特別な物じゃないですが、付いている宝石はこの世界の極一部の地域でしか採掘出来ない鉱石に特殊な加工を施した青生生魂色アポイタカラの宝石ですよ。お客様、まだお若いから宝石の価値とか詳しく知らないのだと思いますけど、こりゃあとんでもなく希少な宝石ですね…その若さで相当危ない橋を渡っておられるようで」

「?」


そんな事を考えていた俺に怪しく笑いかけてくる店主に対して首を傾げる。
店主は俺がどっかから盗んだ物だとでも思っているのだろうか?出所は聞かないと言った以上特に詮索はして来ないが、此方からわざわざ出所を言うような事でもない。


「…まぁ。どう思われても良いですけど、どのくらいで買い取って貰えるんですか?」

そんな事よりも知りたい事を尋ねる。店主の口ぶりからすると結構な高値で買い取って貰えそうであるが店主の言う通り宝石の価値なんて良く分からないし、俺に渡してくれたシヴァからも母の形見程度の話しか聞いていないので値打ちがどのくらいなのか見当もつかない。


「うーん。…表でも裏でも青生生魂色アポイタカラの宝石なんて滅多に流通しないし、希少過ぎるから定まった価値が分からないんですよね。…確か去年頃に裏の方で出回ったこの宝石よりも少し小さい物は金貨一万枚程の値が付いたみたいですが」

「…えっ。そんなにするんですか⁉」

「レイ、お前すげーの持ってんだな…」


一緒に話を聞いていたルーカスはびっくりした表情をしているが、それよりも俺自身が驚いている。
何故なら金貨一枚には大人一人が普通の生活を一ヶ月程送れる事が出来る価値がある。それをこんな小さな宝石がそれ程の高価な物だとは夢にも思っていなかった。


「どんくらい希少な物か分かって頂けたようで。…しかし店としては買い取りしてるって明言した以上は買い取りたいのは山々ですが、流石にこのレベルの高価な物は上の方と相談しないとなりませんねぇ。それに相談したとしても買い取りの許可が下りるかどうか…」

「高すぎるから買い取れないって事ですか?」

「…はい、通常ならそうさせて貰う処ですが。どうですかお客様、私と取引しませんかね?」

「取引?」

「えぇ、簡単な取引ですよ。…深く詮索はしませんが、お客様その若さで商会に武器を買いに来るくらいだから何か事情でもあるんでしょうから、この先も色々と物入りになったりするでしょうし物々交換と行きませんか?」

「それって…この店の商品で対価を払うって事ですか?」

「その通り、飲み込みが早くて助かります。…去年流通した宝石の価値から算出するなら、この大きさなら金貨一万と二、三千枚ぐらいの値は確実に付くと思いますんで、手数料を除いてお客様は金貨一万枚分のうちの商品を好きな時に来て持って行けるって取引です。――ちなみににうちは商会の支店の中でもトップクラスの品揃えを誇っていますよ!地上は一階だけですけど、地下は十階まであるんで!」

「…」


随分手数料をぼったくるんだな、とは思うがそもそも金貨一万枚の大金で買い取ってくれたとしてもそんな大量の硬貨を持ち歩く事なんて出来ないし隠し場所もない。それにこの店はこれから先もやっかいになりそうなので、元々そんな値打ちのある物とは思っていなかったしこの取引は良いのではないかと感じる。


「…分かりました。良いですよ、その物々交換の取引で」

「ありがとうございます!では先ずは契約と行きましょうか、取引に大事なのは何よりも契約ですからね。少しお待ちを!」


俺はその取引を受ける事にして了承すると、店主は満面の笑みを浮かべて店の奥へと足早に引っ込んで行った。
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