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第一章【幼少編】

取引

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「何をお探しで?うちは多種多様の奴隷を取り揃えていますし、最高にハイになれる'魔薬'なんかもありますよ。まぁ何にせよお客様は神様ですので、誠心誠意込めて対応させて貰います!」


本を机の上に置いて立ち上がり、怪しい笑みを浮かべて営業トークをしながら此方に近付いて来たその男。首元まである長いドレッドヘヤに全身日焼けしたような肌の黒さをしており、メガネを掛けている見たいだがその右目のレンズには罅が入っていた。
そしてノースリーブの白シャツを着ているので鍛え上げられた筋肉が非常に目立っている、また背が高いなと思ったルーカスよりも背が高くて俺の身長の二倍以上は軽くありそうだ。


「あ、あの…武器が欲しいんですが」

前に親父と来た時は一見優しげな初老の男が応対していたので、今まで全て前回通りの展開だったのに此処だけこんな怪しさ満点のやばそうな男と変わっている事など思っておらず、俺はちょっと困惑しながら話し掛ける。


「なるほど。此処に来たって事は…特別な物をお望みですね。ではどんな武器が望みですかね?普通の殺しなら殺傷能力の高い武器の代表格である魔砲でしょうかね。中でもつい最近バルト帝国軍用の最新モデルの魔砲を店主のわたくしが裏から直々に手に入れて来て入荷しましてね、値段は張りますがその威力は店主わたくしが責任持って保障しますよ。こっそり殺したい暗殺とかでしたら普通の治癒魔法ヒーラじゃ治せない商会オリジナル配合の毒薬が一番ですね!ちょっと大量入荷しちゃったんで、今ならお買い得にしときますし!」

「んー…」


見た目によらずきちんと接客する男の物騒な提案に俺はどうしようかと考えた。すると隣で黙っていたルーカスはそこで徐に口を開く。


「そういや今更だけど。レイ、お前金持ってんのか?」

「…あっ、そうだ」


――店主の見た目のインパクトが強すぎてうっかりその事を忘れてしまっていた。
いや、別にお金を持って来た事を忘れてたのではなく、その金銭の当ての事を尋ねる事を忘れてたのだ。だいたいこんな裏の商売の違法な品々を買うのに子供のお小遣いじゃ何年何十年貯めれば良いか分からず話にならないだろうし、仮に家の財産をこっそり持ち出してもそれが発覚した時の継母の追及が面倒である。

そんな俺の金銭の当てとは、この前親父が俺を此処に連れて来る前に親父が俺を連れて街へ遊びに行った先はこの店の数軒挟んだ先にあるカジノであり、親父はそこで持ち金を全部使い果たしてしまったのだが家までわざわざ帰る事が面倒な親父は直ぐ傍の此処に寄り、そして何個も指に付けていた高そうな指輪の一つを売りに来ていたのだ。

つまり商会は買い取りも行っていそうなのだ、それが俺の当て。
勿論中途半端な物じゃ買い取ってくれないだろうが、親父が宝石付きの指輪を売っていたのでそういう物なら買い取ってくれるのだろうと考えた上での事である。


「大丈夫、当てがあるんだ。…すみません、此処って品物の買い取りってしてますか?」

俺はルーカスにそう言った後、店主の方に顔を向けて最初に尋ねておきたかった事を聞く。
これはあくまでただの当てでしかないので、実際に取引は見ていたが俺の持っている物を買い取ってくれる確証はない。お得意様限定とか大人じゃなけりゃ駄目とか云った規定があるのかも知れないので、もし駄目なのならば何の収穫もないが今日の処は帰るしかない。


「えぇ、してますよ。けど商会の支店は販売がメインなので、買い取りは貴金属などの小物類のみとさせて貰ってます。…当然出所は聞きませんのでご安心を!」

「そうですか。良かった」


そう言いながら俺に向けてしてきた店主の全然似合わないウィンクはそっとスルーして胸を撫で下ろす。どうやら来た意味はあったようだ。
そして俺は店主の言質も取った事なので、ジャケットの中に着込んでいる白シャツのボタンを上から数個外して首にずっと掛けていたネックレスを外してそれを店主に見せる。


「買い取って貰いたいのはこれなんですが」

「…ほうほう。こりゃあ、何と珍しい物をお持ちで」

「えっ、そうなんですか?」
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