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第一章【幼少編】
商会
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「んじゃ、ねみーし用件済ませてさっさと帰ろうぜ。…で、商会との接触はどうすれば良いんだ?」
「うん。…まぁ見てて」
話しの飲み込みが早いルーカスは欠伸を噛み殺しながら酒場の中を見渡す。俺はそれに促されて前に来た時に親父がやっていた事をそのまま行ってみる事にした。とても簡単な事だ、店員を呼んで合言葉を言えば良いだけ。
「すみませーん」
「はぁーい」
俺は近くを通りかかった先程とは違う従業員の女性を呼び止める、すると女性は営業スマイル全開で此方に近寄って来た。
「ご注文でしょうか?」
「はい…。パンを一個にナイフとフォークとスプーンを付けて、支払いは後払いで」
際どい格好の女性は傍で立ち止まると呼び止めた俺をにこやかに見ながら、手には紙とペンを持って注文を取る素振りを見せている。そして俺はその女性に親父が言っていた言葉を伝えてみた。
「…ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」
「はい」
「それではご案内しまーす。どうぞこちらへ」
間違っていないか少し緊張したけど合言葉はちゃんと言えたようだ。女性は俺の注文を聞くと此方をじっと見つめ、そしてまたにこやかな笑顔になると俺達を案内してくれる為に先導する素振りを見せる。
俺はルーカスに目配せして一緒に立ち上がると、その女性の後ろに付いて行く。
女性とそれに付いて行く俺達は喧騒に包まれる酒場の中を通り、そして【従業員控室】と刻まれた金属のプレートが貼られた扉の中へと案内された。
扉を通ると複雑に入り組んだ廊下がありそこで更に二回扉を通る、そして最後に分厚い金属製の扉の前に案内されると女性は立ち止まったので俺達も足を止める。女性はそこでその金属製の扉を一瞬ずつ間を置きながら数回に分けてノックした。
そして女性が完全に手を止めると金属製の扉はゆっくりと勝手に開き始めた、恐らくは俺の家の扉と同じような原理なのだろう。
「それではごゆっくりどうぞー」
「あ、はい。ありがとうございます」
「…」
案内してくれた女性は笑顔で来た廊下を引き返して行った、残された俺達は女性の姿が見えなくなるとその扉の中へと足を踏み入れる。
そして扉を潜り入った部屋の中、俺達が部屋の中へ入ると扉は自動で閉まった。そして中を見渡せば部屋の中心には三脚のアンティークな丸テーブルが設置されておりテーブルの上には蝋燭で灯されたランプが一つ置かれている、部屋の中は窓が一つもないので丸テーブルの上に置かれたそのランプが唯一の灯りとして部屋の中を薄暗く照らし出していた。
「なんもなくね?」
「いや、まだなんだ」
隣でちょっと身構えていたルーカスは部屋の中を見渡して首を傾げる。けど俺は慌てる事なく設置された丸テーブルの傍まで近寄り、そして上に置かれたランプのガラス戸を開けて蝋燭の火を吹き消した。
吹き消した瞬間、当然の如く唯一の灯りを失った部屋の中は真っ暗な闇に包まれる。
しかしそれは一瞬の事だった。真っ暗に包まれた部屋の中に突然宙に浮く丸い謎の光源体が何個も現れてそれは意思を持っているかのようにゆらゆらと揺らぎながら天井へと集まっていき、やがて光源体は天井を埋め尽くして部屋の中を明るく照らし出す。
「…凄いな、随分凝った仕掛けだ」
「うん」
謎の光源体で明るく照らし出された部屋を再び見渡して見ると、扉は俺達が使った金属製の扉の一つしかなかった筈なのに部屋の対面にはいつの間にか木製の扉が現れていた。
「良し。行こう」
「おう」
俺達は現れたその扉の前まで行き、そして俺がその扉を開けて一緒に中へと入る。
「――いらっしゃい!」
扉を開けて中を見ると表の酒場と同じくらいのかなり大きな部屋であり、部屋の中は見渡す限り所狭しに奇妙な品々が陳列されていた。
そして扉の直ぐ横には机の上に足を置いて椅子に座りながら本を読んでいた男が入って来た俺達に気付いて野太い声で呼びかけて来る。
「うん。…まぁ見てて」
話しの飲み込みが早いルーカスは欠伸を噛み殺しながら酒場の中を見渡す。俺はそれに促されて前に来た時に親父がやっていた事をそのまま行ってみる事にした。とても簡単な事だ、店員を呼んで合言葉を言えば良いだけ。
「すみませーん」
「はぁーい」
俺は近くを通りかかった先程とは違う従業員の女性を呼び止める、すると女性は営業スマイル全開で此方に近寄って来た。
「ご注文でしょうか?」
「はい…。パンを一個にナイフとフォークとスプーンを付けて、支払いは後払いで」
際どい格好の女性は傍で立ち止まると呼び止めた俺をにこやかに見ながら、手には紙とペンを持って注文を取る素振りを見せている。そして俺はその女性に親父が言っていた言葉を伝えてみた。
「…ご注文は以上で宜しかったでしょうか?」
「はい」
「それではご案内しまーす。どうぞこちらへ」
間違っていないか少し緊張したけど合言葉はちゃんと言えたようだ。女性は俺の注文を聞くと此方をじっと見つめ、そしてまたにこやかな笑顔になると俺達を案内してくれる為に先導する素振りを見せる。
俺はルーカスに目配せして一緒に立ち上がると、その女性の後ろに付いて行く。
女性とそれに付いて行く俺達は喧騒に包まれる酒場の中を通り、そして【従業員控室】と刻まれた金属のプレートが貼られた扉の中へと案内された。
扉を通ると複雑に入り組んだ廊下がありそこで更に二回扉を通る、そして最後に分厚い金属製の扉の前に案内されると女性は立ち止まったので俺達も足を止める。女性はそこでその金属製の扉を一瞬ずつ間を置きながら数回に分けてノックした。
そして女性が完全に手を止めると金属製の扉はゆっくりと勝手に開き始めた、恐らくは俺の家の扉と同じような原理なのだろう。
「それではごゆっくりどうぞー」
「あ、はい。ありがとうございます」
「…」
案内してくれた女性は笑顔で来た廊下を引き返して行った、残された俺達は女性の姿が見えなくなるとその扉の中へと足を踏み入れる。
そして扉を潜り入った部屋の中、俺達が部屋の中へ入ると扉は自動で閉まった。そして中を見渡せば部屋の中心には三脚のアンティークな丸テーブルが設置されておりテーブルの上には蝋燭で灯されたランプが一つ置かれている、部屋の中は窓が一つもないので丸テーブルの上に置かれたそのランプが唯一の灯りとして部屋の中を薄暗く照らし出していた。
「なんもなくね?」
「いや、まだなんだ」
隣でちょっと身構えていたルーカスは部屋の中を見渡して首を傾げる。けど俺は慌てる事なく設置された丸テーブルの傍まで近寄り、そして上に置かれたランプのガラス戸を開けて蝋燭の火を吹き消した。
吹き消した瞬間、当然の如く唯一の灯りを失った部屋の中は真っ暗な闇に包まれる。
しかしそれは一瞬の事だった。真っ暗に包まれた部屋の中に突然宙に浮く丸い謎の光源体が何個も現れてそれは意思を持っているかのようにゆらゆらと揺らぎながら天井へと集まっていき、やがて光源体は天井を埋め尽くして部屋の中を明るく照らし出す。
「…凄いな、随分凝った仕掛けだ」
「うん」
謎の光源体で明るく照らし出された部屋を再び見渡して見ると、扉は俺達が使った金属製の扉の一つしかなかった筈なのに部屋の対面にはいつの間にか木製の扉が現れていた。
「良し。行こう」
「おう」
俺達は現れたその扉の前まで行き、そして俺がその扉を開けて一緒に中へと入る。
「――いらっしゃい!」
扉を開けて中を見ると表の酒場と同じくらいのかなり大きな部屋であり、部屋の中は見渡す限り所狭しに奇妙な品々が陳列されていた。
そして扉の直ぐ横には机の上に足を置いて椅子に座りながら本を読んでいた男が入って来た俺達に気付いて野太い声で呼びかけて来る。
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