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第一章【幼少編】
トラブル発生と謎の人物
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西の静かな住宅街を抜け、中心街の表通りに出ればそこはまるで別世界。昼間も賑わっているが夜はそれ以上の賑わいである、それは日が沈むと立ち並ぶ飲食店やカジノに風俗などのほぼ全ての店が開店しているからであり、各国から人種を問わず様々な人々がこの街に癒しや快楽を求めに来ているのだ。
そんな人々で賑わう表通りの舗装された道の端々には青銅で出来た街灯が均等に立ち並び、魔法によって点灯されている灯りが夜だという事を忘れさせるかのように輝いている。そして表通りの幅広い一本道から枝分かれしている無数にある細道にも店が立ち並んでいるが、表通りとは違ってぼったくりなどのお店も多く初めてこの街に来た人などがよく被害にあっているらしい。
「えっと…あ、見えた」
そんな中、俺は混雑している表通りの出来るだけ端を歩いていた。目立ちたくはないがこんな時間帯にこんな所で子供が出歩いてるのは珍しいので時折行き交う大人達は視線を向けて来るものの、遊びに来ている中でわざわざ面倒そうな事に首を突っ込みたがる者はおらず、特に誰にも邪魔される事なく俺は目的の店の前へと辿り着く事が出来た。
それは表通りに面した人の出入りが多い酒場。大きく開いた出入り口には酔っ払いなどがたむろっており、中の様子は外からでも分かるような喧騒具合である。
「へいへいへい!坊主、こんな夜遅くに出歩いてちゃ駄目じゃないか!」
その酒場に用があったので俺はそのまま酒場へ入ろうとしたものの、丁度店から出てきた上機嫌な太めの男に話しかけられた。
まだ青年の顔立ちをしており恰幅の良い体格をしている、飲み過ぎのせいか顔は真っ赤になって目の焦点が定まっておらず、親切でと言うよりは単純に興味本位で絡んで来ただけなようだ。
「…」
しかし名前すら知らないそんな酔っ払いの相手などをする義理もないので、俺は無視して店の中に入ろうとした。
「ってコラッ!ガキが無視してんじゃねぇ!」
「っ!」
しかし無視して通り過ぎようとすると男は態度が急変していきなり後ろから髪の毛を引っ張られてしまった。めちゃくちゃ痛くて髪の毛を掴んでいる男の手を必死で振り解こうとするが、背丈も半分ぐらいしかなくて腕力もかなわない子供の俺だと無駄な足掻きだった。
そんな俺達の事に気付いている周囲の連中は、我関せずと云わんばかりに通り過ぎ去って行く薄情な大人達。
「いっ、たいな!離せデブ!」
「このガキ、口の聞き方すら知らねぇのか!」
全然手を離そうとしない男に痛さで腹が立って悪態を吐くが、それが更に男を怒らせてしまった。
「――その辺で止めておけ」
「あぁ、誰だてめぇ?俺は今このガキに教育してやってんだ、なのになんでてめぇの頼みを聞かなくちゃならねぇんだよ!」
「…頼み?馬鹿かお前、これはお願いじゃなくて命令だ。分かったら今すぐその子を放せブタ野郎」
そんな時だった、男の背後からドスの利いた声がする。その声に気を取られたのか俺の髪を掴んでいる男の手の力が緩んだので俺はその隙を付いてようやく難を逃れる事が出来た。
そして急いで男から距離を取った後に視線を男の方に向けると、男は逃げた俺よりも先程の声の持ち主の方に何やら怒りの矛先を向けていた。
「この野郎、舐めた事言いやがって!」
「…」
怒りの矛先を向けられているその者は目の前に居る男ではなく俺の方に顔を向けているようだった。
ようだった、と言うのはその者はフード付の黒いローブを身に纏っておりそのフードで頭をすっぽりと覆い隠しているので、何処に目を向けているのか正確には覗き込んだりでもしなくては分かりそうにない。
そんな謎の人物は腕を組んでおり、またローブの上からでも分かるぐらい体格が良く背が高い。そして夜風に揺らいでローブの隙間から腰に差した剣の鞘が見え隠れしている。
西の静かな住宅街を抜け、中心街の表通りに出ればそこはまるで別世界。昼間も賑わっているが夜はそれ以上の賑わいである、それは日が沈むと立ち並ぶ飲食店やカジノに風俗などのほぼ全ての店が開店しているからであり、各国から人種を問わず様々な人々がこの街に癒しや快楽を求めに来ているのだ。
そんな人々で賑わう表通りの舗装された道の端々には青銅で出来た街灯が均等に立ち並び、魔法によって点灯されている灯りが夜だという事を忘れさせるかのように輝いている。そして表通りの幅広い一本道から枝分かれしている無数にある細道にも店が立ち並んでいるが、表通りとは違ってぼったくりなどのお店も多く初めてこの街に来た人などがよく被害にあっているらしい。
「えっと…あ、見えた」
そんな中、俺は混雑している表通りの出来るだけ端を歩いていた。目立ちたくはないがこんな時間帯にこんな所で子供が出歩いてるのは珍しいので時折行き交う大人達は視線を向けて来るものの、遊びに来ている中でわざわざ面倒そうな事に首を突っ込みたがる者はおらず、特に誰にも邪魔される事なく俺は目的の店の前へと辿り着く事が出来た。
それは表通りに面した人の出入りが多い酒場。大きく開いた出入り口には酔っ払いなどがたむろっており、中の様子は外からでも分かるような喧騒具合である。
「へいへいへい!坊主、こんな夜遅くに出歩いてちゃ駄目じゃないか!」
その酒場に用があったので俺はそのまま酒場へ入ろうとしたものの、丁度店から出てきた上機嫌な太めの男に話しかけられた。
まだ青年の顔立ちをしており恰幅の良い体格をしている、飲み過ぎのせいか顔は真っ赤になって目の焦点が定まっておらず、親切でと言うよりは単純に興味本位で絡んで来ただけなようだ。
「…」
しかし名前すら知らないそんな酔っ払いの相手などをする義理もないので、俺は無視して店の中に入ろうとした。
「ってコラッ!ガキが無視してんじゃねぇ!」
「っ!」
しかし無視して通り過ぎようとすると男は態度が急変していきなり後ろから髪の毛を引っ張られてしまった。めちゃくちゃ痛くて髪の毛を掴んでいる男の手を必死で振り解こうとするが、背丈も半分ぐらいしかなくて腕力もかなわない子供の俺だと無駄な足掻きだった。
そんな俺達の事に気付いている周囲の連中は、我関せずと云わんばかりに通り過ぎ去って行く薄情な大人達。
「いっ、たいな!離せデブ!」
「このガキ、口の聞き方すら知らねぇのか!」
全然手を離そうとしない男に痛さで腹が立って悪態を吐くが、それが更に男を怒らせてしまった。
「――その辺で止めておけ」
「あぁ、誰だてめぇ?俺は今このガキに教育してやってんだ、なのになんでてめぇの頼みを聞かなくちゃならねぇんだよ!」
「…頼み?馬鹿かお前、これはお願いじゃなくて命令だ。分かったら今すぐその子を放せブタ野郎」
そんな時だった、男の背後からドスの利いた声がする。その声に気を取られたのか俺の髪を掴んでいる男の手の力が緩んだので俺はその隙を付いてようやく難を逃れる事が出来た。
そして急いで男から距離を取った後に視線を男の方に向けると、男は逃げた俺よりも先程の声の持ち主の方に何やら怒りの矛先を向けていた。
「この野郎、舐めた事言いやがって!」
「…」
怒りの矛先を向けられているその者は目の前に居る男ではなく俺の方に顔を向けているようだった。
ようだった、と言うのはその者はフード付の黒いローブを身に纏っておりそのフードで頭をすっぽりと覆い隠しているので、何処に目を向けているのか正確には覗き込んだりでもしなくては分かりそうにない。
そんな謎の人物は腕を組んでおり、またローブの上からでも分かるぐらい体格が良く背が高い。そして夜風に揺らいでローブの隙間から腰に差した剣の鞘が見え隠れしている。
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