8 / 60
第一章【幼少編】
夜の街へ
しおりを挟む
――
―
「んー…ってもう夜か。もう遅いしまた明日にしようか」
「…分かりました。それでは今日の処は失礼致しますね」
「うん。ばいばい、また明日」
それから色々な話しをしているといつの間にか日が完全に沈み快晴だった空には満天の星が散らばっている、俺は部屋の窓からそれを確認するといつまでもエマを留めて置くわけには行かないので今日の処は取り敢えず解散を提案した。
その提案をエマは了解して椅子から立ち上がり俺に別れの挨拶をすると、部屋のドアのカギを開けて出て行く時に此方に向かって小さく一礼をしてからドアを閉めて立ち去って行った。
「…さて」
エマが出て行き一人になった俺はもう一度窓から夜空を見る。一応、家族と呼べる三人は一階で仲良く夕食を食べている頃だろう。だが俺の飯は部屋の前に使用人が持ってくるようになっているので俺から会おうとしない限り夜は屋敷内に居る者達と会う事はない。
「行くか」
俺はベッドの上に放り投げていた上着を着直して部屋のカギを閉めると、ベッドの下から長いロープを引っ張り出した。それはたまに夜に外へ遊びに行く時に使っている家から抜け出す為の物。…俺は結構行動力のあるガキだったようで、外出を禁じられている夜にたまにこっそり抜け出してエマの家や中心街まで遊びに行っていたりしていたようである。
継母がそんな俺の行動を把握していない以上は昼間よりも遥かに安全なのは間違いないので、俺は思い立ったが吉日とばかりに出来る事は何でもしておこうと思っていたので中心街に行こうと思い、ロープの端を部屋のいつも通りの場所に括り付けた後ロープを窓から外へと垂らす。
「ごめんねエマ」
…エマはとても親身になってくれて素直にありがたいと思っている。だが、だからこそ出来るだけ危険な目に遭わせたくはない。昼間はいつもエマと一緒に居るので、俺はなるべく危ない橋は継母に行動を把握されない一人で動ける夜に渡ろうと決めたのだ。
そして俺は慣れた手つきで垂れたロープを伝って二階の窓から裏庭へと出る。警備の者達は外から中へ侵入してきそうな者などに目を光らせてる為、薄暗い夜に屋敷の窓から垂れたロープなどに気付く者はおらず、また警備の巡回ルートなどは分かっているので特に慎重になる事もなく裏庭を横切って屋敷を囲う鉄柵の傍に立つ。
「んっしょ…」
屋敷を囲う鉄柵は特殊な物となっており、鉄柵に誰かが触れば感知する魔法が施されている。
だが昔、俺がシヴァに頼み込んで子供が通れるぐらいの極一部だけを条件として、鉄柵に掛けられたその魔法を解除してくれていた。勿論その事を知っているのは他にはエマしかいない。
俺は三人の秘密のその魔法が施されていない鉄柵の隙間を上手く潜り抜け、そして後ろを振り返って特に異常がない事を確認すると眠る事のない賑やかな中心街へと向かった。
―
「んー…ってもう夜か。もう遅いしまた明日にしようか」
「…分かりました。それでは今日の処は失礼致しますね」
「うん。ばいばい、また明日」
それから色々な話しをしているといつの間にか日が完全に沈み快晴だった空には満天の星が散らばっている、俺は部屋の窓からそれを確認するといつまでもエマを留めて置くわけには行かないので今日の処は取り敢えず解散を提案した。
その提案をエマは了解して椅子から立ち上がり俺に別れの挨拶をすると、部屋のドアのカギを開けて出て行く時に此方に向かって小さく一礼をしてからドアを閉めて立ち去って行った。
「…さて」
エマが出て行き一人になった俺はもう一度窓から夜空を見る。一応、家族と呼べる三人は一階で仲良く夕食を食べている頃だろう。だが俺の飯は部屋の前に使用人が持ってくるようになっているので俺から会おうとしない限り夜は屋敷内に居る者達と会う事はない。
「行くか」
俺はベッドの上に放り投げていた上着を着直して部屋のカギを閉めると、ベッドの下から長いロープを引っ張り出した。それはたまに夜に外へ遊びに行く時に使っている家から抜け出す為の物。…俺は結構行動力のあるガキだったようで、外出を禁じられている夜にたまにこっそり抜け出してエマの家や中心街まで遊びに行っていたりしていたようである。
継母がそんな俺の行動を把握していない以上は昼間よりも遥かに安全なのは間違いないので、俺は思い立ったが吉日とばかりに出来る事は何でもしておこうと思っていたので中心街に行こうと思い、ロープの端を部屋のいつも通りの場所に括り付けた後ロープを窓から外へと垂らす。
「ごめんねエマ」
…エマはとても親身になってくれて素直にありがたいと思っている。だが、だからこそ出来るだけ危険な目に遭わせたくはない。昼間はいつもエマと一緒に居るので、俺はなるべく危ない橋は継母に行動を把握されない一人で動ける夜に渡ろうと決めたのだ。
そして俺は慣れた手つきで垂れたロープを伝って二階の窓から裏庭へと出る。警備の者達は外から中へ侵入してきそうな者などに目を光らせてる為、薄暗い夜に屋敷の窓から垂れたロープなどに気付く者はおらず、また警備の巡回ルートなどは分かっているので特に慎重になる事もなく裏庭を横切って屋敷を囲う鉄柵の傍に立つ。
「んっしょ…」
屋敷を囲う鉄柵は特殊な物となっており、鉄柵に誰かが触れば感知する魔法が施されている。
だが昔、俺がシヴァに頼み込んで子供が通れるぐらいの極一部だけを条件として、鉄柵に掛けられたその魔法を解除してくれていた。勿論その事を知っているのは他にはエマしかいない。
俺は三人の秘密のその魔法が施されていない鉄柵の隙間を上手く潜り抜け、そして後ろを振り返って特に異常がない事を確認すると眠る事のない賑やかな中心街へと向かった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
Sランク冒険者の受付嬢
おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。
だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。
そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。
「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」
その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。
これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。
※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。
※前のやつの改訂版です
※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する
山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。
やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。
人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。
当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。
脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる