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B級争奪戦のその後

争いの後の大浴場

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「ぷはー! んん~♡ 大きなお風呂に入りながらグレープジュースを一杯! これ以上の至福はないわね!」

「こぼしてお湯ん中に入れないでよ」


 ペアワッペンの優勝者が決定したのちに、学園長主導により大浴場が開放された。女子達は闘いの汗を流す。
 その広い浴槽の一角でグレープジュースの乗ったお盆を湯に浮かべ、幸せそうにくつろいでいるのはメル様。斜め前にはジト目で自分の入る湯が紫色にならない事を祈るテンテラがいる。
 優勝者である彼女らは明日、Bクラスへ行く。しかしそんな緊張は一切なく余裕な様子だった。


「はあ……完全に策略負けしたわ。悔しい。ごめんねマラカナ、私の作戦に付き合わせたのに負けちゃって……」

「あはは、私も無闇に飛び込んだから撃たれちゃったし、何も言えないよ」


 隣り合って浸かりながら慰め合うのはパスティラとマラカナ。マラカナは背中の硬化した肌が、浴槽のフチに当たってゴリゴリと音を鳴らしている。


「弓の先に付けるためにちぎった肉片は大丈夫だった?」

「へーきへーき、コアの治癒能力もあるし」

「おやおやテトナチアちゃん! 前に更衣室で揉んだ時よりも大きくなってない?」

「そんなすぐに大きくならないよ! ちょ、揉まないでー、ペティ!」


 その隣では仲良しな2人が乳を揉んだり揉まれたりしている。
 ある所ではどんよりと落ち込んでいる者がいたり、貴族らしく丁寧な洗い方で体を洗う者もいたりする。


「ナナちゃん相変わらず背が高くて羨ましいです」

「いやぁ、私としてはちっちゃなテシアが羨ましいんだけどね」


 背比べや、髪の長さ比べもされていた。
 姦しい戦いの後。


「ラ~ラ~♪」

「お、即興ライブ始まった?」

「ふふっ、アシトライブ開催しよっか?」

「相変わらず綺麗な歌声ねー……」

「これで落ち込んだ気分を吹っ飛ばせるかと思ってね」

「私の?」

「私とバッカラの。いやぁ、惜しいところまで行ったんだけどメル様に負けちゃったね」

「ごめん、私が戦力になれなかったから」


 落ち込むバッカラの肩に横から手が添えられる。湯に浸かるアシト、バッカラの隣に座る女の子ナキアだった。
 ナキアはニッコリと微笑む。


「大丈夫よバッカラ、私もそうだったから」

「ナキア……ふふっ、ありがと」

「ま、私達メイド志望は戦闘力はなくても献身力があれば良いわけだから」

「くすくす」


 ナキアはバッカラと笑い合う時に、ふと後頭部に視線を感じた。そちらを振り向くと隣にいるラウラウが視線を向けていた。


「ラウラウ? どうしたの?」

「いや……」


 ナキアから声をかけられて目を逸らしたラウラウが次に目を向けたのは他の女子達。のんびりとお風呂に浸かって笑い合ったり、今回の負けを慰め合ったり、イチャイチャと笑い合う彼女らの姿を見ていた。


「…………」

「もしかしてさ、こんな緩い感じなのは嫌?」

「えっ? あ! ご、ごめん! 別にそう言うわけじゃなくて」

「ううん、大丈夫。そうだよね。ソニアに負けて、意識は上に登る事に専念したいって思ってるんだよね」

「いや……ごめん。私出るね」


 立ち上がったラウラウの手を掴んで引き留めて、そのまま押し倒した。


「わぷっ⁉︎」


 ざぶん!と湯の中に仰向けに倒れるラウラウは、慌てて顔を出す。


「ぷはっ! な、何するの⁉︎」

「休もうよ! ラウラウ! 今は戦いの疲れを癒す時だよ!」

「っ! 休む……」

「そ! 出たら美味しいジェラート作ってあげるからさ」

「ん……分かった。ありがとうナキア」

「えへへ」


 ラウラウは思い出す。コアの本質が何か。まだ『技』が重要だと考えているが、しかしソニアとの戦いで学んだ『心』に基けば休む事も大切。だからラウラウは張り詰めた気持ちを休ませる事にした。


「もおォ~! あの時! あの時ガーリックが来なければァ!」

「ドンマイ」


 一方で、カミラに髪を洗われながら膨れっ面で文句を垂れるのは、一番に脱落してしまって悔しい思いをしているミカライト。


「結局なんなのよォ、アイツ! やっぱりサンタンクのためだったってコトなのォ?」

「みたいね。私たち全員、ガーリックの良いように使われたって感じね」

「デットも含めてねェ……くそォ」


 ミカライトが視線を向けたのは、傷だらけの身体を雑に洗うデット。
 デットはミカライトの視線に気づいたが視線を向けることなく洗い続けて、泡をシャワーで洗い落とすと誰もいない場所で浴槽に浸かった。


「なんでデットはガーリックと組んだんだろうね」

「さあァ? なんか言われてたみたいだけどォ」

「私の予想が正しければソニア関連だと思うんだけど」

「ソニアちゃん? あらあらァ、どこもかしこもあの子に注目しだしたってことかしらァ」


 カミラの見解を聞いてミカライトはケラケラと笑い飛ばした。
 カミラは彼女がどうしてそこまで笑うのか分からなかった。不意に横に視線を向ける。そちらには傷一つない綺麗で真っ白な肌を丁寧に洗うニーナがいる。


「ニーナ、ソニアはどこ? 来てないみたいだけど———」

「ニーナ! ソニアはどこなんだ? 探してるんだが!」


 カミラが質問したのと同時に、ニーナの後ろから金髪の少女が目を大きくしながら同じ質問をした。彼女の名前はミウル。


「ミウル? どうしてソニアを探してるの?」

「えっ! い、いやぁ、そのぉ……へへへ」


 ミウルは照れくさそうに身を捩り、頭をかいた。その仕草にカミラは何にもわからなかったが、ミカライトはすぐに察した。
 ミカライトは、なるほどソニアに惚れたのか、と心の中で答えを出す。声には出さないが。


「で、ニーナ、ペアだったでしょ? ソニアはどこ?」

「ソニアは……」


 それまでずっと黙っていたニーナはゆっくりと口を開いて答えた。


「学園長が用意した個人部屋に行ってるはず」
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