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Bクラス争奪戦 第二章 ラウラウ編

始まりから激しい

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『ミカライト、カミラ、脱落!』


 脱落を知らせる学園長のアナウンスが、講堂の影に隠れる俺たちの元にも聞こえてきた。


「ミカライトが? 速いな……」

「優勝候補だったはずだけど。そう言えばあなた、ミカライトから何か貰ってなかった?」

「ああ、今つけてる黒のレザーグローブ貰った」

「なんで?」

「さあ? ミカライトが言ってたのは『これ渡しておくわァ♡ 私じゃなくて……そうねェ、貴女のファンからの贈り物よォ』だってさ」

「うわ、ソニアの声でミカライトの喋り方マネしてるとなんか違和感がすごいわね。というかファン? あなたファンが出来たの?」

「いや知らないけどさ。でもこのグローブは気に入ってる。カッコいいしな。ほら手の甲に白い鳥の翼のシルエットがプリントされててさ、両手くっつけると両翼になるんだよ」

「ふーん……」


 それはそれとして、とニーナは話を切り替える。そして手に持って出したのはフランのメモ機能に書かれているもの。
 そこには今回の優勝候補が箇条書きで書き記されていた。


「マメだな」

「何も出来ない分、このくらいはね。さて優勝候補のうちミカライトとカミラが脱落。彼女らの強みは戦闘経験の豊富さと、武器の扱いのうまさ。あの2人を倒せるのはガーリックとデットコンビくらい」

「つまりガーリック達は初めから動いているってわけか」

「他にも優勝候補の情報とか調べて、始まる前にある程度教えたと思うけど……改めて聞いとく?」

「そんなに多くないよな。うん、頼む」


 そうしてニーナは順番に教えてくれた。

 ○ガーリック・アクアパッツァとデット。あの2人は誰もがわかる最強タッグ。戦闘力のデットと知恵者のガーリックというコンビであり隙がない。

 ●メル・メウンタンとテンテラ・ルートフィスク。メルは愛称メル様と呼ばれていて、王族。才能自体は優秀だけど自分では動かず他人に任せっきりで、脅威はテンテラの方。テンテラは特別な能力を持っているそうでかなり危険。

 ○アシト・ポポララとバッカラ・アラビセンティア。脅威は完全にアシトの方らしく、Cクラスでも上位の実力者。コアにより『声』を鍛えていて大小高低どの音域にも変えられる喉を持っている。バッカラの方はただのメイド志望の生徒だけど上昇意識は高い。

 ●サンタンク・マスグーフとオトロゴン・プロテット。サンタンクは真っ赤な炎を使う魔法使いで、近距離戦が得意。オトロゴンは鉱夫の息子で力が強く、さらには『激灼拳げきしゃくけん』の使い手だ。どちらもCクラスでも随一の戦闘力を持つ。


「オトロゴンの激灼拳ってのは……」

「コアによる波動砲を中心とした拳法らしいわ」


 波動砲とは手から衝撃波を出すコアの技のこと。なんかどっかで食らった覚えがあるが……いつだっけ。


「そして最後に……」

「そ、ラウラウとナキアのコンビ。ナキアは戦闘力で褒められてるところを見た事がないけど、なんでラウラウは貴女を振ってナキアと組んだんだろうね」

「さあ? なんにせよラウラウも、何も考えてないってわけでもないだろうし。注意すべきはここに書かれてるチームで、蜂合わないようにしつつ冷静に———」

「あら、そんなにアタシの事を買ってくれているの?」

「!」

「えっ」


 ラウラウの声が、俺たちが隠れている講堂の壁の向こう側から聞こえてきた瞬間に、ニーナを自分の後ろに突き飛ばす。
 すると講堂の角向こうからラウラウが姿を見せた。手には回転する双剣の武器、時計剣を持っている。後ろにはメイド服のナキアもいる。
 状況を完全に把握するより先にラウラウが剣を振り上げて、こちらに向かってきた。ニーナを突き飛ばして自分から離し、木の棒を横にしてそれを受け止める。だが受け止めた木の棒が、時計剣が当たった所から割れてしまった。
 慌てて後ろに飛び退くが、着地に失敗して着地の衝撃をまともに足にくらってしまい、足がぐらつき膝をつく結果に。


「うくっ、きゅ、急だね」

「先に倒しやすい所から、ってね」

「倒しやすい……?」

「アンタの不安要素の話よ」


 剣を振りかぶりながらまた突進してくる。実際は切り付けるのではなく、持ち手や外側で殴りつけてくる。
 2つに割れた木の棒を、片方はニーナに投げ渡して、もう片方でラウラウの顔に突き刺す素振りを見せて牽制しながら、攻撃をかわす。
 しかしその程度の牽制はラウラウには効かない。一瞬強張ったがすぐさま逃げた俺に向かって武器を振り、腰を殴りつけられた。


「ぐうっ!」

「ナキア、退がっててね。アンタが狙われて、ワッペンが壊されるかも知れないから」

「お世話は必要ない? お腹空いてない?」

「さっきあなたの美味しいご飯を軽ーく食べさせてもらったからね、平気よ」


 ラウラウはナキアを後ろに退げてから、俺の方に近づく。俺は蹲って動けなかった。
 なんとか前みたいに、元の自分のパワーを想像して取り戻す感覚を呼び覚まそうと意識するが、まだ慣れない。


『リューミュ、アランマ! 脱落!』

『アカシア、テトナチア! 脱落!』

『リリー、ピア! 脱落!』


 ラウラウに迫られている最中に、アナウンスが連続して聞こえて来た。一気に3ペアが脱落してしまったらしい。
 リリーも脱落したのか。


「このスピード……デットしかあり得ないわね。マジで昇級を取りに来てるのかしら。けどデットなら前々からBクラスを狙えたはずだけど、今回は結構やる気みたい……なんでだろうね?」

「さ、さあ? 知らないわ」

「Bクラスと戦うよりも同じクラスの奴らを相手する方がラクだとか? 確かにデットは他人の気持ちを考えない人だし、納得できるわ。それとも、ガーリックから何か言われたのかしら」

「………」


 後ろでニーナが攻撃しようと前に出ようとしていたのでそれを後ろ手で止めてから、なんとか立ち上がる。
 そんな俺をジッと真顔で見つめてくるラウラウ。立つまで待っていたのは何故だろうか。


「……どうしたの? もしかして弱い私に気遣って手を抜いてるの?」

「いいえ、ワッペンをどこに付けているのかと探してただけ。けどしっかり見えたわ、胸につけているのね」


 ラウラウは腹に付けていたワッペンを弄りながらそう言った。


「狙いは定まったわ」

『ミウル、キール! 脱落!』

「そして時間もない。次で決めるわ」


 さらなる脱落者のアナウンスがされる。
 まずいまずい!絶対にここで力を出さなきゃダメだ!


「う、おおおおおおおお!!!」


 気合いの声を上げると同時に、ギブソンとの戦いで感じた感覚を思い出し、全身に力を込める。
 髪が逆立つ感覚がする。力が溢れる感じがある!


「行くぞ! ラウラウ!」

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