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六話

格上の意気込み

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 ギブソンはボロボロの姿で現れた。口からは血が流れて、服はあちこち破れて、アザもできていた。
 と、ギブソンと黒髪メガネの二人の後ろから、勇者紅屋桜姫が現れた。


「ギブソン! 待って! まずはコアで治してから……!」

「ハアハア……い、いらん」


 息切れしながらも、治そうと手をかざした紅屋の手を振り払い、ギブソンは俺の元まで来た。
 そばに立つと身長差は歴然で、見下ろされる。
 しかしそれよりも俺は、ギブソンのボロボロの姿が気になって仕方ない。


「ど、どうしたんだよ、その姿!」

「ちょっとばかし、走ってきた、だけだ。準備運動で……」


 俺はギブソンの後ろの方にいる黒髪メガネの方を見た。すると向こうは俺の視線に気づき、肩をすくめて首を横に振った。


「違うんだよコイツ。昨日の勝負の傷が癒えないまま、Aクラスのやつに戦い挑んだり、先生にも何人か挑んでさ。この戦いへ向けた特訓だとか言って」

「おいライドウ! 余計なこと言うな!」


 ライドウ、と呼ばれた黒髪メガネはため息をついて、手を振って観客席の方に行った。心配する紅屋も連れて。


「はあはあ……そう、言えば、ベニちゃんに聞いたが。あの“悪者”、帰ったんだってな」

「………」

「なんで帰ったんだろうな?」


 俺が原因だと思ってるのか?
 いやそんな事よりも、ちょっとばかし、いやだいぶ今プライドが傷つけられてるんだが。


「おい、ふざけんなよ」

「悪かったよ、変な戦いに付き合わせて。でも俺はこうしないと分からないタチで……」

「そうじゃねぇ!」


 俺はギブソンの前から離れると、壁に向かって、ロケット頭突きして突撃した。周りから騒めく声が聞こえる。
 当然弱いこの体だと、そんなことをすれば頭からすぐに血が出てくる。ふらつく足元を気につけながら元の位置に戻ってくる。
 血が片目に入って見えにくいが、ギブソンの顔はポカンとしていた。その顔を指差す。


「んな……傷だらけのハンデ、ふざけんじゃねぇ! あうあっ」


 これでフェアだ、と思いきや割とダメージ大きかったようで血が出過ぎてるようだ。膝から力が抜ける。それでもギブソンを睨む。


「うぐっ……か、格上だからってな、俺をナメンな」

「へっ、へへ……」

「こ、ここまでやったんだ、今更やめるなんて無しだ。思いっきりやれよ」

「やっぱ面白いやつだな、お前」


 ところでさ、とギブソンは続ける。


「この勝負、いつ始まると思う?」

「え?」

「もう始まってるんだよ」


 気づけばそばにいたはずの学園長がいなくなっている。形式とか正式とか、そう言うものは昇格戦であろうと存在しないみたいだ。
 砂で汚れた手を差し伸べられる。


「立つまで待つ。それがフェアだ」

「……手は、いらねぇ」


 その手を振り払って、自分の力で立ち上がる。
 そうして睨み合う。ギブソンの体全体から伝わるパワーは、絶好調だと言っている。


「先手はどっちにする?」

「ジャンケン。ちゃんと最初はグーしろよ」

「え? お前んとこはそうなのか? まあいいか」


 そして俺がグー、ギブソンがチョキを出した瞬間———ギブソンの腹を肘鉄で殴りつけた。


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