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一話

勇者学園は勇者のためにある

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 俺……というか元々ソニア本人が通っていた学園の名前は勇者学園、安直な名前だが日本語と酷似した文字と読み方でそう言う名前である。
 中高一貫校であり中学の時からソニアは通っていて、ルームメイトのロザリアも中学の時からソニアの知り合いでルームメイトである。


「でさー、ソニアも見たでしょ? 126代目勇者様の召喚の儀式。その時から思ってたけど、やっぱ今回の勇者様はカッコいいよね。見た目もそうだし、どことなく強い感じがするって言うかさ!」

「ああ、うん」


 中学からのルームメイトと言っても、仲良さげではあるがソニアとロザリアは程々の付き合いをしていたらしい。互いのことはある程度知っているが、両者間の関係性は程よく距離がある。
 まあそれでも女同士という気の緩みがあり、ロザリアは俺の心をよくざわめかせる。今も朝の支度中なのだが、自分の大きな胸を見てしまう問題もあるのに、隣ではロザリアも制服に着替えている途中だった。
 女の子の肌が見えてしまい、慌てて目を逸らす。


「ん? どうしたの?」

「い、いや……」


 ルームメイトの着替えを見ないように体ごと顔を逸らす。
 そして自分の身体も見ないようにして、今朝の『私たちは勇者様のサポートするために学園に通っている』というロザリアの発言を思い出し、また勇者学園について考える。


(勇者学園は毎年召喚される勇者の旅や戦闘をサポートする『仲間』を育てる学校)


 召喚される勇者は必ず15歳である。
 そしてこの学園に通う生徒たちは15歳になると王都の大神殿にて行われる勇者召喚を見学し……そして学園を卒業する時に、その召喚された勇者から仲間として選ばれる。
 そうして勇者は魔族との戦いに赴くのだ。


(アイツは、ソニアは元に戻る気がないように思える)


 テレビでのパレードの映像を見る限り、アイツは楽しそうにしていた。そういえば入れ替わりが発覚した後もアイツは悲観した様子はなかった。


(元に戻る気がないのなら……)


 このまま俺はソニアという異世界の女子として生きていくことになる。それは嫌だ。
 勇者は魔王を倒せば元の世界に返してもらえる。俺は元の世界に帰りたいから、一刻も早く元に戻ってさっさと魔王とやらを倒したい。
 しかし向こうにその気がないのなら、近づく事すら難しいだろう。


(けどこの学園を卒業する時、仲間を選ぶ勇者はアイツだ。だったら……この学園で文句なしの、仲間にせざるを得ないほど優秀な成績を得て、アイツに選ばれれば接近できる)


 俺のこの学園での目的はそれだ。それともう一つ、元に戻る方法だ。
 なんとか女子の制服を着終わって、慣れない服の感覚に、その決意を強くする。


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