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「今まで、あなたを独りにして……本当にごめんなさい」
体の芯から湧き出たような熱い涙が溢れ、頬を伝った。
「百合……君は」
流れ落ちる涙はそのままに、百合は鬼嶋の横に置いた、スプレーマムの花束を手に取った。
「……綺麗だな。洋菊?」
「『あの時』、私は庭に咲き残った菊をあの庵に置いていったの」
ハッとしたように、鬼嶋は百合の顔を見た。
「『ひととせにふたたび匂ふ……』あなたが教えてくれた歌」
何百年も前に別れ別れになった『ゆり』の顔が、今ここにいる百合に完全に重なった。
「……帰ってくるつもりだった。帰って来たかった。ごめんなさい。こんなに待たせてしまって」
細い肩を震わせて泣き崩れそうになる百合を、鬼嶋は全てを受け止めるように抱きしめた。
「詫びる必要なんてない。……君は俺の元に戻って来てくれた。これからはずっと一緒にいられる……そうだろ?」
鬼嶋の言葉を聞いた瞬間、心の中に重く垂れこめていた感情が霧散したように百合は感じた。
午後にかかろうかという時間の夏の日差しが窓越しにさんさんと差し込んでいるのが、やけに眩しく感じられる。
「ええ、これからはずっと一緒に……」
今、何の迷いもなく、そう言えることが百合には心から嬉しかった。
「ずっと、あなたの傍にいます」
広い背中に腕を回して抱きしめながら、百合は思った。
自分の居場所はここだ。
何があってももう二度とこの温もりを失いたくない……。
帰るべき場所にようやく辿り着いた安心と鬼嶋への思いを胸に抱いて、百合はほっと溜息をもらした。
体の芯から湧き出たような熱い涙が溢れ、頬を伝った。
「百合……君は」
流れ落ちる涙はそのままに、百合は鬼嶋の横に置いた、スプレーマムの花束を手に取った。
「……綺麗だな。洋菊?」
「『あの時』、私は庭に咲き残った菊をあの庵に置いていったの」
ハッとしたように、鬼嶋は百合の顔を見た。
「『ひととせにふたたび匂ふ……』あなたが教えてくれた歌」
何百年も前に別れ別れになった『ゆり』の顔が、今ここにいる百合に完全に重なった。
「……帰ってくるつもりだった。帰って来たかった。ごめんなさい。こんなに待たせてしまって」
細い肩を震わせて泣き崩れそうになる百合を、鬼嶋は全てを受け止めるように抱きしめた。
「詫びる必要なんてない。……君は俺の元に戻って来てくれた。これからはずっと一緒にいられる……そうだろ?」
鬼嶋の言葉を聞いた瞬間、心の中に重く垂れこめていた感情が霧散したように百合は感じた。
午後にかかろうかという時間の夏の日差しが窓越しにさんさんと差し込んでいるのが、やけに眩しく感じられる。
「ええ、これからはずっと一緒に……」
今、何の迷いもなく、そう言えることが百合には心から嬉しかった。
「ずっと、あなたの傍にいます」
広い背中に腕を回して抱きしめながら、百合は思った。
自分の居場所はここだ。
何があってももう二度とこの温もりを失いたくない……。
帰るべき場所にようやく辿り着いた安心と鬼嶋への思いを胸に抱いて、百合はほっと溜息をもらした。
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