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第六章 声
第41話 一介のモブな船長
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――船員食堂
食堂に木霊するララの声。
それは――魔王シャーレの名――
水夫たちが酒を飲み、肩を組み、陽気に歌い賑やかだった食堂が沈黙に包まれる。
彼らは口々にこう囁く。
「今、魔王シャーレって?」
「いや、聞き間違いだろう? なんで魔王がこんなとこにいるのさ?」
「そうだぜ。だいたい、あの方々はクラーケンから俺たちを守ってくれたのに」
「でもよ、ララって子は魔族なんだろ? その子が魔王と言っているなら……」
「たしかに魔王なら、クラーケンくらい倒せるよな。実際、とんでもなく強かったし」
囁きは重なり合い、音が膨れ上がり広がっていく。
その囁きだった声が鼓膜に響く喧噪へ変わろうとしたところで、水夫の親方の声が響いた。
「てめぇら、静かにしろ!」
親方がのっしのっしと巨漢を揺らしてこちらへ向かってくる。
さらに彼の後ろからは見知らぬ中年の男が歩いてくる。
親方は途中で立ち止まり、見知らぬ中年の男へ道を譲り、彼に声を掛ける。
「船長、彼らです」
「そうか……」
船長と呼ばれた男は左目に眼帯を付けて、三角帽を頭にかぶり、右足が悪いのか、杖を手にして足を支えるように立っている。
船長と呼ばれたが、見た目は客船の船長というよりも海賊の船長。
船長は俺たち全員へさらりと瞳を振って、帽子を取り胸に当てると礼を述べた。
「俺はこの船を預かる船長ドラルだ。クラーケンから船を救って貰い、助かった。本来なら俺が真っ先に礼を述べるべきだろうが、乗客や荷物や船の被害確認を優先しちまってな。まずは詫びを。そして、礼を。非礼、すまねぇ。そして、ありがとう」
俺は席を立ち、丁寧に礼を述べる船長へ言葉を返す。
「いえ、船長として、まずはやるべきことを優先するのは当然でしょう。理解できますから詫びなど」
「そう言ってもらえるとありがてぇ。それで……」
船長は右目をシャーレへ向けた。
俺は急ぎ、彼女に敵意がないことを伝えようとしたが、その声を船長の左手が遮り、彼は言葉を発する。
「……魔族ってのは人間の敵だ。ほとんどの奴が恐れてるし、嫌ってる。だが、あんたらは俺たちと客と船を救ってくれた。海の男ってのは恩義を忘れたりしねぇ」
彼は杖でどんと床を叩き、水夫たちへ向き直る。
「ここにいる方々は何者でもねえ! 俺たちの恩人だ! てめぇら、今の話、口外するんじゃねぇぞ! わかったな!!」
「「「うっす!!」」」
水夫たちの声が食堂に響く。
船長は口端を少し上げて、俺たちへ顔を向ける。
「フフ、海の男は口が固い。信用してくれ」
「船長、お気遣い、ありがとうございます」
「な~に、恩人ってのは本当のことだしな。だが……あっと、シャーレ殿」
船長は言葉をどもらせて、シャーレの名を呼ぶ。
相手が魔王とわかり、緊張が言葉に表れているのだろう。
シャーレもそれを感じ取り、彼を恐れさせないよう、淡白に一言返した。
「なに?」
「まぁ、なんだ。御覧の通り、あんたを責めたり、船から降りろなんて無茶は言わねぇ。もちろん、何故ここに? なんて問いもしねぇ。今回の件は俺たちは知らなかったで貫き通す」
「ええ、そうね。そうした方がいいでしょう」
「それとだ、さすがに再びの乗船は許可できねぇ。恩人に対してこのような言葉をかけるのはあまりにも恩知らずだと思うだろうが……」
「いえ、立場は理解できる……見逃してくれて、ありがとう」
「そうか、理解してもらえてよかった。それじゃ、食事としばしの船旅を楽しんでくれ」
そう彼は言葉を残し、親方と一緒に食堂から出て行った。
アスカはテーブルに顎を乗せて去り行く船長の背中を見つめ、レムもまたアスカの視線の先にある船長の姿を瞳で追う。
「ほ~、中々の人物じゃの~。客船の船長にしておくにはもったいない」
「魔族……さらに、魔王となれば、人間にとって、恐怖の対象。そうでありながら、恩人、とまで称するとは……この時代を、生きる人々は、心が柔軟なようで」
彼女はラプユスへ視線を移す。
レムの瞳に映し出されたラプユスはイカリングを味わいながら声を返す。
「はむはむ、いえいえ珍しいですよ。この時代でも魔族は敵ですから」
「ですが、あなたは、聖女でありながら、シャーレを受け入れている」
「聖女だからこそですよ! シャーレさんの愛は本物。愛に貴賎なし、種族の隔たりなし。愛の伝道師たるこのラプユスは愛を信じ、その結末が良きものであるよう見守っていたいのです」
ふんすと、鼻息を荒く飛ばすラプユスを目にしたレムは微笑む。
「フフ、本当にこの時代は面白い。私の時代ならば、聖女であっても……」
友人でありながら自分を裏切った聖女を思い出し、彼女は心を悲しみの色に染めた。
だけどすぐに、微笑みを取り戻す。
「本当に、良き時代です」
二人のやり取りをシャーレは黒の瞳で受け止め、船長たちが立ち去った扉へ視線を投げる。
そして、こう言葉を落とした。
「私は、人間を見誤っていた」
「シャーレ?」
「魔族と人は相容れぬ存在。絶対の敵。そう思っていた。だけど、違うのかも」
シャーレは目の前のスープを軽くかき混ぜ、瞳を俺へ寄せる。
「フォルス……だけだと思った」
「え?」
「私は人間とまともに会話をしたことがなかった。人間は魔族と敵対する存在……それだけだと思っていた。だけど、あなたは私に優しくしてくれた。命を奪おうとしたのに」
「それは、まぁ、優しいというか、俺がおくびょう――」
「私を優しく包み込み、唇まで奪った……」
「え!? ちょっと、また記憶が改ざんされて――」
もちろん、奪ったのはシャーレからで俺じゃない!
しかし、俺の声は全く届かず、彼女は一人語りを続ける。
その語りには誰の声も届かない。
「城から出て、あなたと出会い、アスカという変な生き物と出会った」
「待て、変なとはなんじゃ! 変なとは!?」
「聖女でありながら、人間や魔族の隔たり無く平等に愛を知ろうとする、野蛮な少女に出会った」
「ちょっと待ってください! 野蛮って、それが私への評価なんですか!?」
「フォルスによって心を取り戻し、憎しみ克服し、私と聖女を受け入れることのできる心の強さを持ちながら、なぜか何かにつけて自傷行為に走る危ない勇者に出会った」
「あの、微妙に、評価が、おかしいのですが……」
最後に、シャーレは船長の影が消えた扉を見つめる。
「私が伝え聞いた人間は獰猛で狡猾な存在だった。だけど、違った。愛があり、義理堅く、仁に厚い人々だった。私は王でありながら、狭い世界を生きていたようね……」
シャーレは遠くを見つめて、視野を大きく広げる。
彼女は今、魔族だけを知る魔王という名の籠から羽ばたき、世界を知ったのだ。
でも――
「なんぞ、納得いかんのじゃが……?」
「同感です。評価されてるのにけなされてる感じがして……」
「たしかにショックですが、彼女は魔王。他者を褒めるのが苦手、なのかもしれません……ショックですが……」
三人を横目に、ララが裂きイカをマヨネーズにつけつつ声を掛けてくる。
「語られるだけいいじゃん。私なんかなんもなしよ。まぁ、出会ったばかりだし、同じ魔族だし、語ることもないんだろうけどさ」
これは、船長ドラルをきっかけに、シャーレの心に大きな変化をもたらす出来事だった。
同時に、俺たちの心が微妙な空気に満たされる出来事でもあった。
――おまけ・船の通路
食堂から出た船長と親方が通路を歩む。
親方は前を歩く船長へ尋ねる。
「よろしいんで? たしかに恩人ですが、魔族。しかも魔王。そんなもんを乗船させたとなってはあとあと」
「魔王――だからこそなんだよっ」
「へ?」
船長は足を止めて後ろを振り返る。
そして、両手をわなわなさせながら親方へ語る。
「いいか、相手はただの魔族じゃねぇ! クラーケンをあっさり殺っちまう魔王だぞ! 周りにいる連中もヤバいくらいに強いしよ! そんな連中の不興を買ってみろ! 殺されちまうだろ!」
「え、ああ~、そうですね」
「だからこそ、ちょっと上から目線で懐を大きく見せて、全然かまわねぇぜ感を出して誤魔化したんだよ! わかるか!?」
「なるほど、そういうことでしたか」
彼は三角帽に片手を置いて、大きなため息をつく。
「はぁ~~、マジでビビった。こっちが優位であるよう錯覚させるために魔王にあんな口聞いてよ。内心、殺されたらどうしようかな~。で、いっぱいいっぱいだったぜ」
「船長、頑張りましたね」
「ああ、頑張った。ある意味、船員と船を救ったといっても過言じゃねぇ」
「それじゃあ、この後どうします。陸に着き次第、警吏に報告でも?」
「馬鹿言え! そんなことして恨まれでもしたら事だろ! だから、俺たちは何も聞かなかった見なかった。あいつらは恩人。それで終いだ」
「そうですか」
船長は杖を突いて、前を歩き始める。
こう言葉を残して。
「ま、恩人ってのはマジだしな。魔王様が何を考えてるのか知らねぇが、俺たち庶民にとってはどうでもいいこと。そんなもんは勇者にでも任せるさ」
「ははは、そうですね」
食堂に木霊するララの声。
それは――魔王シャーレの名――
水夫たちが酒を飲み、肩を組み、陽気に歌い賑やかだった食堂が沈黙に包まれる。
彼らは口々にこう囁く。
「今、魔王シャーレって?」
「いや、聞き間違いだろう? なんで魔王がこんなとこにいるのさ?」
「そうだぜ。だいたい、あの方々はクラーケンから俺たちを守ってくれたのに」
「でもよ、ララって子は魔族なんだろ? その子が魔王と言っているなら……」
「たしかに魔王なら、クラーケンくらい倒せるよな。実際、とんでもなく強かったし」
囁きは重なり合い、音が膨れ上がり広がっていく。
その囁きだった声が鼓膜に響く喧噪へ変わろうとしたところで、水夫の親方の声が響いた。
「てめぇら、静かにしろ!」
親方がのっしのっしと巨漢を揺らしてこちらへ向かってくる。
さらに彼の後ろからは見知らぬ中年の男が歩いてくる。
親方は途中で立ち止まり、見知らぬ中年の男へ道を譲り、彼に声を掛ける。
「船長、彼らです」
「そうか……」
船長と呼ばれた男は左目に眼帯を付けて、三角帽を頭にかぶり、右足が悪いのか、杖を手にして足を支えるように立っている。
船長と呼ばれたが、見た目は客船の船長というよりも海賊の船長。
船長は俺たち全員へさらりと瞳を振って、帽子を取り胸に当てると礼を述べた。
「俺はこの船を預かる船長ドラルだ。クラーケンから船を救って貰い、助かった。本来なら俺が真っ先に礼を述べるべきだろうが、乗客や荷物や船の被害確認を優先しちまってな。まずは詫びを。そして、礼を。非礼、すまねぇ。そして、ありがとう」
俺は席を立ち、丁寧に礼を述べる船長へ言葉を返す。
「いえ、船長として、まずはやるべきことを優先するのは当然でしょう。理解できますから詫びなど」
「そう言ってもらえるとありがてぇ。それで……」
船長は右目をシャーレへ向けた。
俺は急ぎ、彼女に敵意がないことを伝えようとしたが、その声を船長の左手が遮り、彼は言葉を発する。
「……魔族ってのは人間の敵だ。ほとんどの奴が恐れてるし、嫌ってる。だが、あんたらは俺たちと客と船を救ってくれた。海の男ってのは恩義を忘れたりしねぇ」
彼は杖でどんと床を叩き、水夫たちへ向き直る。
「ここにいる方々は何者でもねえ! 俺たちの恩人だ! てめぇら、今の話、口外するんじゃねぇぞ! わかったな!!」
「「「うっす!!」」」
水夫たちの声が食堂に響く。
船長は口端を少し上げて、俺たちへ顔を向ける。
「フフ、海の男は口が固い。信用してくれ」
「船長、お気遣い、ありがとうございます」
「な~に、恩人ってのは本当のことだしな。だが……あっと、シャーレ殿」
船長は言葉をどもらせて、シャーレの名を呼ぶ。
相手が魔王とわかり、緊張が言葉に表れているのだろう。
シャーレもそれを感じ取り、彼を恐れさせないよう、淡白に一言返した。
「なに?」
「まぁ、なんだ。御覧の通り、あんたを責めたり、船から降りろなんて無茶は言わねぇ。もちろん、何故ここに? なんて問いもしねぇ。今回の件は俺たちは知らなかったで貫き通す」
「ええ、そうね。そうした方がいいでしょう」
「それとだ、さすがに再びの乗船は許可できねぇ。恩人に対してこのような言葉をかけるのはあまりにも恩知らずだと思うだろうが……」
「いえ、立場は理解できる……見逃してくれて、ありがとう」
「そうか、理解してもらえてよかった。それじゃ、食事としばしの船旅を楽しんでくれ」
そう彼は言葉を残し、親方と一緒に食堂から出て行った。
アスカはテーブルに顎を乗せて去り行く船長の背中を見つめ、レムもまたアスカの視線の先にある船長の姿を瞳で追う。
「ほ~、中々の人物じゃの~。客船の船長にしておくにはもったいない」
「魔族……さらに、魔王となれば、人間にとって、恐怖の対象。そうでありながら、恩人、とまで称するとは……この時代を、生きる人々は、心が柔軟なようで」
彼女はラプユスへ視線を移す。
レムの瞳に映し出されたラプユスはイカリングを味わいながら声を返す。
「はむはむ、いえいえ珍しいですよ。この時代でも魔族は敵ですから」
「ですが、あなたは、聖女でありながら、シャーレを受け入れている」
「聖女だからこそですよ! シャーレさんの愛は本物。愛に貴賎なし、種族の隔たりなし。愛の伝道師たるこのラプユスは愛を信じ、その結末が良きものであるよう見守っていたいのです」
ふんすと、鼻息を荒く飛ばすラプユスを目にしたレムは微笑む。
「フフ、本当にこの時代は面白い。私の時代ならば、聖女であっても……」
友人でありながら自分を裏切った聖女を思い出し、彼女は心を悲しみの色に染めた。
だけどすぐに、微笑みを取り戻す。
「本当に、良き時代です」
二人のやり取りをシャーレは黒の瞳で受け止め、船長たちが立ち去った扉へ視線を投げる。
そして、こう言葉を落とした。
「私は、人間を見誤っていた」
「シャーレ?」
「魔族と人は相容れぬ存在。絶対の敵。そう思っていた。だけど、違うのかも」
シャーレは目の前のスープを軽くかき混ぜ、瞳を俺へ寄せる。
「フォルス……だけだと思った」
「え?」
「私は人間とまともに会話をしたことがなかった。人間は魔族と敵対する存在……それだけだと思っていた。だけど、あなたは私に優しくしてくれた。命を奪おうとしたのに」
「それは、まぁ、優しいというか、俺がおくびょう――」
「私を優しく包み込み、唇まで奪った……」
「え!? ちょっと、また記憶が改ざんされて――」
もちろん、奪ったのはシャーレからで俺じゃない!
しかし、俺の声は全く届かず、彼女は一人語りを続ける。
その語りには誰の声も届かない。
「城から出て、あなたと出会い、アスカという変な生き物と出会った」
「待て、変なとはなんじゃ! 変なとは!?」
「聖女でありながら、人間や魔族の隔たり無く平等に愛を知ろうとする、野蛮な少女に出会った」
「ちょっと待ってください! 野蛮って、それが私への評価なんですか!?」
「フォルスによって心を取り戻し、憎しみ克服し、私と聖女を受け入れることのできる心の強さを持ちながら、なぜか何かにつけて自傷行為に走る危ない勇者に出会った」
「あの、微妙に、評価が、おかしいのですが……」
最後に、シャーレは船長の影が消えた扉を見つめる。
「私が伝え聞いた人間は獰猛で狡猾な存在だった。だけど、違った。愛があり、義理堅く、仁に厚い人々だった。私は王でありながら、狭い世界を生きていたようね……」
シャーレは遠くを見つめて、視野を大きく広げる。
彼女は今、魔族だけを知る魔王という名の籠から羽ばたき、世界を知ったのだ。
でも――
「なんぞ、納得いかんのじゃが……?」
「同感です。評価されてるのにけなされてる感じがして……」
「たしかにショックですが、彼女は魔王。他者を褒めるのが苦手、なのかもしれません……ショックですが……」
三人を横目に、ララが裂きイカをマヨネーズにつけつつ声を掛けてくる。
「語られるだけいいじゃん。私なんかなんもなしよ。まぁ、出会ったばかりだし、同じ魔族だし、語ることもないんだろうけどさ」
これは、船長ドラルをきっかけに、シャーレの心に大きな変化をもたらす出来事だった。
同時に、俺たちの心が微妙な空気に満たされる出来事でもあった。
――おまけ・船の通路
食堂から出た船長と親方が通路を歩む。
親方は前を歩く船長へ尋ねる。
「よろしいんで? たしかに恩人ですが、魔族。しかも魔王。そんなもんを乗船させたとなってはあとあと」
「魔王――だからこそなんだよっ」
「へ?」
船長は足を止めて後ろを振り返る。
そして、両手をわなわなさせながら親方へ語る。
「いいか、相手はただの魔族じゃねぇ! クラーケンをあっさり殺っちまう魔王だぞ! 周りにいる連中もヤバいくらいに強いしよ! そんな連中の不興を買ってみろ! 殺されちまうだろ!」
「え、ああ~、そうですね」
「だからこそ、ちょっと上から目線で懐を大きく見せて、全然かまわねぇぜ感を出して誤魔化したんだよ! わかるか!?」
「なるほど、そういうことでしたか」
彼は三角帽に片手を置いて、大きなため息をつく。
「はぁ~~、マジでビビった。こっちが優位であるよう錯覚させるために魔王にあんな口聞いてよ。内心、殺されたらどうしようかな~。で、いっぱいいっぱいだったぜ」
「船長、頑張りましたね」
「ああ、頑張った。ある意味、船員と船を救ったといっても過言じゃねぇ」
「それじゃあ、この後どうします。陸に着き次第、警吏に報告でも?」
「馬鹿言え! そんなことして恨まれでもしたら事だろ! だから、俺たちは何も聞かなかった見なかった。あいつらは恩人。それで終いだ」
「そうですか」
船長は杖を突いて、前を歩き始める。
こう言葉を残して。
「ま、恩人ってのはマジだしな。魔王様が何を考えてるのか知らねぇが、俺たち庶民にとってはどうでもいいこと。そんなもんは勇者にでも任せるさ」
「ははは、そうですね」
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