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第四章 山に木霊する叫び声
トラップ
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色々ありましたが、レンちゃん・ラナちゃん・エルマは私の提案を受け入れてくれました。
私たち四人は、出し抜いていることを他の生徒から気取られぬように、こっそり山の茂みに潜り込みます。
そこで、先頭に立つ私は、一度足を止めました。
「皆さん、ちょっとストップ」
「ん? どうしたんだい、ミコン?」
「ここから直線に進み続けるとゴールなんですが……トラップがありますね」
そう言って私は無造作に足を一歩踏み出しました。
それにエルマが声をぶつけようとしたところで、茂みから弓矢が一本、私を目掛けて飛んできます。
私はその矢をぱしりと素手で掴み取り、観察します。
「ふむふむ、矢じりはない。だけど先端に眠りの魔法が仕込まれてますね。対象に当たると発動するタイプ」
一連の行動にラナちゃんとエルマが驚きの声を上げました。
「ミコン、すんどい」
「噓だろ。飛んできた弓矢を造作もなく掴むなんて……ミコンって、魔法使いなんだよな?」
という言葉に、レンちゃんが答えます。
「ミコンは武術を修めているからね。素手での戦闘なら、私でも勝てるかどうか」
「マジで!? ミコンは魔導科よりも武術科の方がいいんじゃねぇの?」
「それは遠慮します。私は魔法使いになりたいんですから。あの魔法猫を引き連れた、猫の魔女みたいに」
「なにそれ?」
「たぶん、絵本のことだとしおる」
「ラナ?」
「ミコンは魔女と魔法猫の絵本に出てくる魔女様みたいになりなんぬ?」
「そうです。私たちの祖先であるニャントワンキルの魔女王がモデルと言われる、猫の魔女みたいになりたいんですよ。だから、魔法使いを目指しているのですが……なかなか」
私は小さな息を落とします。
そこからプルプルと全身を振って、意識をトラップに戻し周囲を見渡します。
「にゃ~、罠だらけですね。レンちゃん、どうですか?」
「うん、私の見立てでも相当な数だ。どうやら、先生方はショートカットを絶対にさせたくないようだね」
「にゃふふふ、ならば、その先生方の先を行くとしますか。罠のほとんどが何かを踏んだり触ったりした際に反応するタイプですが、先程の弓矢は熱感知ですね」
これにエルマが疑問を言葉に纏います。
「熱感知? それなら他の動物に反応したりするんじゃ?」
「周りに獣の気配を感じません。おそらく、授業のためにあらかじめそういった獣や魔物の類を遠ざけているんだと思います。授業用に置いた魔法生物やゴーレム以外は」
「は~、なるほどね。だったら熱感知タイプは、炎の魔法を浮かべてちょっと飛ばせば全部解除できるな」
「いえ、そう簡単にはいかないようです」
「え、なんで?」
「熱感知は人の肉体温度の範囲に設定されていて、さらに一定の大きさに反応するタイプ。おそらく、排除したとはいえ小動物がいます。間違ってそれらに反応しないように設定されてあるのかと」
「マジかよ。面倒くさい話だな」
「にゃふ、普通ならそうでしょうが、このミコン! トラップ解除には自信があるのです!」
私は誇らしげに胸を張ります。
その態度にレンちゃんは目を細めて、呆れるような声をぶつけてきます。
「あ~、そういえばそうだったね。そのおかげで校長室にふほうしん――」
「ちょ~っとレンちゃん! ストップですよ。駄目ですよそれは!!」
「ああ、ごめんごめん」
危なく不正行為がラナちゃんとエルマにバレるところでした。
二人はたくさんの疑問符をふよふよと浮かべていますが、それらが消えてなくなるようにさっさと話を進めましょう。
「ではでは、私の魔法の出番ですね。使うのは学園で習っている魔法ではなくて、ニャントワンキル族の古代魔法になりますが――空気密度を操り、簡易結界発動。大きさは人型。さらに内部の分子さんたちには動いてもらって、そこにレスルを溶け込ませて、ちょっぴり熱を上昇っと」
私は片手を前に向けて、魔力を高めていきます。
すると、人型程度の靄が現れて、それは蜃気楼のように揺れています。
これらを見たレンちゃんたちが感心と驚きが混じり合う声を上げました。
「信じられない。これほどの低温度を保ち、結界まで」
「わんずもびっくりだ。熱を操る炎系魔法は炎を産み出して成立するもん。なのに、こ~な細やかな熱操作ができるなんて」
「もしかしてよ、ミコンって凄腕?」
「にゃっふっふっふ、もっと褒めてください。ま、私たちの古代魔法は発動こそ遅いものの精密性は現代魔法よりも優れていると思います。では、この人肌の塊を正面に放ちましょう」
そう言って、温かみのある結界を放ちました。
すると、その熱に反応して、森の茂みから木の上から木陰からと、眠りや麻痺を伴った魔法類が結界に降り注ぎます。
その量は、こちらが引くくらい……
「うわ、どんだけここを通らせたくないんでしょうかね。ですが、これで熱探知型は全部解除――」
「まだ、ざん。ミコン」
「え、ラナちゃん?」
「あっちと向こうの茂みに。たぶん、息吹反応型。人型の生き物の呼吸に反応するタイプ」
ラナちゃんは淡い緑の魔力を全身に纏い、周囲を索敵している様子。
「凄いですね、ラナちゃん。索敵が得意なんですか?」
「索敵とか補助とか回復は自信あるから」
「そうなんですね。助かりました」
「なんもなんも」
「では、それらを潰して…………次はレンちゃんとエルマの出番ですね」
「通常のトラップを破壊しろってことだね」
「俺たちが通る道だけでいいのか?」
「はい、十分です」
「それじゃ、エルマ」
「うん、レン」
レンちゃんは剣を握り、エルマは槍を握ります。
そして二人は同時に、衝撃波を纏う激しい斬撃と突きを見せました。
巻き起こった衝撃波は私たちが通る予定の道に仕掛けられたトラップを破壊していきます。
「こんなもんかな?」
「魔導系のトラップだと物理的に破壊しても残っちまうが、それはミコンが無力化したから、もうこの道は大丈夫だな」
「それじゃあ、進みますか。あれ、ラナちゃん?」
ラナちゃんが壊れたトラップそばにある木の近くで屈み、何かを引っ張っています。
「どうしたんですか?」
「木に纏わりついてた蔓を持っていこうと思って。山では役に立つ」
「なるほど、そうですね。では、私も少々拝借」
「どぞどぞ」
私たちは長い蔓を巻き取り、それを弄り倒しながら前へ進み始めました。
その姿にレンちゃんとエルマが首を傾けます。
「何をしてるんだい、二人とも?」
「そんなもん持って、邪魔だろ?」
「にゃふ、それは後のお楽しみで。では、今度こそ出発です。ね、ラナちゃん」
「だだ」
私たち四人は、出し抜いていることを他の生徒から気取られぬように、こっそり山の茂みに潜り込みます。
そこで、先頭に立つ私は、一度足を止めました。
「皆さん、ちょっとストップ」
「ん? どうしたんだい、ミコン?」
「ここから直線に進み続けるとゴールなんですが……トラップがありますね」
そう言って私は無造作に足を一歩踏み出しました。
それにエルマが声をぶつけようとしたところで、茂みから弓矢が一本、私を目掛けて飛んできます。
私はその矢をぱしりと素手で掴み取り、観察します。
「ふむふむ、矢じりはない。だけど先端に眠りの魔法が仕込まれてますね。対象に当たると発動するタイプ」
一連の行動にラナちゃんとエルマが驚きの声を上げました。
「ミコン、すんどい」
「噓だろ。飛んできた弓矢を造作もなく掴むなんて……ミコンって、魔法使いなんだよな?」
という言葉に、レンちゃんが答えます。
「ミコンは武術を修めているからね。素手での戦闘なら、私でも勝てるかどうか」
「マジで!? ミコンは魔導科よりも武術科の方がいいんじゃねぇの?」
「それは遠慮します。私は魔法使いになりたいんですから。あの魔法猫を引き連れた、猫の魔女みたいに」
「なにそれ?」
「たぶん、絵本のことだとしおる」
「ラナ?」
「ミコンは魔女と魔法猫の絵本に出てくる魔女様みたいになりなんぬ?」
「そうです。私たちの祖先であるニャントワンキルの魔女王がモデルと言われる、猫の魔女みたいになりたいんですよ。だから、魔法使いを目指しているのですが……なかなか」
私は小さな息を落とします。
そこからプルプルと全身を振って、意識をトラップに戻し周囲を見渡します。
「にゃ~、罠だらけですね。レンちゃん、どうですか?」
「うん、私の見立てでも相当な数だ。どうやら、先生方はショートカットを絶対にさせたくないようだね」
「にゃふふふ、ならば、その先生方の先を行くとしますか。罠のほとんどが何かを踏んだり触ったりした際に反応するタイプですが、先程の弓矢は熱感知ですね」
これにエルマが疑問を言葉に纏います。
「熱感知? それなら他の動物に反応したりするんじゃ?」
「周りに獣の気配を感じません。おそらく、授業のためにあらかじめそういった獣や魔物の類を遠ざけているんだと思います。授業用に置いた魔法生物やゴーレム以外は」
「は~、なるほどね。だったら熱感知タイプは、炎の魔法を浮かべてちょっと飛ばせば全部解除できるな」
「いえ、そう簡単にはいかないようです」
「え、なんで?」
「熱感知は人の肉体温度の範囲に設定されていて、さらに一定の大きさに反応するタイプ。おそらく、排除したとはいえ小動物がいます。間違ってそれらに反応しないように設定されてあるのかと」
「マジかよ。面倒くさい話だな」
「にゃふ、普通ならそうでしょうが、このミコン! トラップ解除には自信があるのです!」
私は誇らしげに胸を張ります。
その態度にレンちゃんは目を細めて、呆れるような声をぶつけてきます。
「あ~、そういえばそうだったね。そのおかげで校長室にふほうしん――」
「ちょ~っとレンちゃん! ストップですよ。駄目ですよそれは!!」
「ああ、ごめんごめん」
危なく不正行為がラナちゃんとエルマにバレるところでした。
二人はたくさんの疑問符をふよふよと浮かべていますが、それらが消えてなくなるようにさっさと話を進めましょう。
「ではでは、私の魔法の出番ですね。使うのは学園で習っている魔法ではなくて、ニャントワンキル族の古代魔法になりますが――空気密度を操り、簡易結界発動。大きさは人型。さらに内部の分子さんたちには動いてもらって、そこにレスルを溶け込ませて、ちょっぴり熱を上昇っと」
私は片手を前に向けて、魔力を高めていきます。
すると、人型程度の靄が現れて、それは蜃気楼のように揺れています。
これらを見たレンちゃんたちが感心と驚きが混じり合う声を上げました。
「信じられない。これほどの低温度を保ち、結界まで」
「わんずもびっくりだ。熱を操る炎系魔法は炎を産み出して成立するもん。なのに、こ~な細やかな熱操作ができるなんて」
「もしかしてよ、ミコンって凄腕?」
「にゃっふっふっふ、もっと褒めてください。ま、私たちの古代魔法は発動こそ遅いものの精密性は現代魔法よりも優れていると思います。では、この人肌の塊を正面に放ちましょう」
そう言って、温かみのある結界を放ちました。
すると、その熱に反応して、森の茂みから木の上から木陰からと、眠りや麻痺を伴った魔法類が結界に降り注ぎます。
その量は、こちらが引くくらい……
「うわ、どんだけここを通らせたくないんでしょうかね。ですが、これで熱探知型は全部解除――」
「まだ、ざん。ミコン」
「え、ラナちゃん?」
「あっちと向こうの茂みに。たぶん、息吹反応型。人型の生き物の呼吸に反応するタイプ」
ラナちゃんは淡い緑の魔力を全身に纏い、周囲を索敵している様子。
「凄いですね、ラナちゃん。索敵が得意なんですか?」
「索敵とか補助とか回復は自信あるから」
「そうなんですね。助かりました」
「なんもなんも」
「では、それらを潰して…………次はレンちゃんとエルマの出番ですね」
「通常のトラップを破壊しろってことだね」
「俺たちが通る道だけでいいのか?」
「はい、十分です」
「それじゃ、エルマ」
「うん、レン」
レンちゃんは剣を握り、エルマは槍を握ります。
そして二人は同時に、衝撃波を纏う激しい斬撃と突きを見せました。
巻き起こった衝撃波は私たちが通る予定の道に仕掛けられたトラップを破壊していきます。
「こんなもんかな?」
「魔導系のトラップだと物理的に破壊しても残っちまうが、それはミコンが無力化したから、もうこの道は大丈夫だな」
「それじゃあ、進みますか。あれ、ラナちゃん?」
ラナちゃんが壊れたトラップそばにある木の近くで屈み、何かを引っ張っています。
「どうしたんですか?」
「木に纏わりついてた蔓を持っていこうと思って。山では役に立つ」
「なるほど、そうですね。では、私も少々拝借」
「どぞどぞ」
私たちは長い蔓を巻き取り、それを弄り倒しながら前へ進み始めました。
その姿にレンちゃんとエルマが首を傾けます。
「何をしてるんだい、二人とも?」
「そんなもん持って、邪魔だろ?」
「にゃふ、それは後のお楽しみで。では、今度こそ出発です。ね、ラナちゃん」
「だだ」
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