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第二章 ベタないじめを拳でぶっ飛ばす
罪の受け方、罰の受け方
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ネティアは三人娘を連れて、ここから離れていく。
彼女の背中をミコンは歯を食い縛り見つめる。
その視線に気づいたのか、ネティアは振り返り、口端を緩める。
「ミコン、以前も言いましたが、我を忘れていたとはいえあなたは魔導生なんだから、魔法を使いなさい、魔法を」
「にゃっ……うるさいですよ」
微笑みを残して立ち去るネティア。
食い縛りを歯ぎしりに変えて、彼女を見送るミコン。
彼女たちの影が無くなったところで、レンが話しかけてきた。
「ミコン……」
「すみません。感情に呑まれて我を失ってしまいました」
「いや、友のために怒れることは良いことだよ」
「いえ、そうとは限りません」
「え?」
「ミコン! はぁはぁはぁはぁ」
ラナが肩を上下に揺らし息を切らして現れた。
ミコンは彼女へ近づき、謝罪を述べる。
「ごめんなさい、ラナちゃん。仇は取れませんでした」
「そいな」
「そしてそれ以上に、心配をかけてしまい本当にごめんなさい」
ミコンは深々と頭を下げる。それにラナは両手を前に出して振りながら慌てた様子を見せた。
「なんもなんも! やめって」
ラナの声を受け取って、ミコンは頭を戻す。
そして、すでにネティアの居なくなった廊下に彼女の姿を思い浮かべて、ラナへ言葉を渡した。
「ですが、あの三人娘は罰を受けます」
「え?」
「そして何より、ネティアも……」
――後日
ネティアと取り巻き三人娘が学園の廊下を歩いている。
すると、通りすがりの生徒たちがこそこそと言葉を立てる。
「あの人たちでしょ。庶民いじめをしてた人たちって」
「ああ、その庶民のリボンをドブにつけたとか? しかもそれ、母親からの贈り物らしいぜ」
「四大名門の恥さらしよね~。いえ、私たち貴族の恥よ」
「俺も庶民が同じ学園に通っているのは気に食わないけど、あんなくだらないことはできねぇよ」
「クスクス、四大名門のくせに貴族の立ち振る舞いを知らないなんて笑える~」
浴びせられる誹謗。
ネティアはそれを何するものぞと、涼しげな顔で歩く。
だが、彼女の取り巻きである三人の女生徒はとても苦しげな表情で歩き、時折ネティアへ申し訳なさそうな視線を向けていた。
その様子をミコン・レン・ラナは見ていた。
ミコンは語る。
「ネティアは無関係。あれは三人娘が勝手にやったこと。だけど、ネティアは自分の罪として受け入れた」
レンは問う。
「どうして?」
「けじめでしょう。ネティアとあの三人娘の関係はわかりませんが、ネティアにとって大切な友達であり、自分はリーダーでもある。だから、三人娘の不始末を庇い、責任を取った。同時に、三人へ反省を促すもの」
ラナが疑問に言葉を揺らす。
「どして、三人が? どな、反省を?」
「三人にとってネティアは尊敬すべき存在。だけど、自分たちの行いが尊敬すべき相手を傷つけることになった。今後、あの三人はあんなことを絶対にしないでしょう。行えば、ネティアが率先して罪を背負うから」
レンが得心が行ったと声を上げる。
「なるほど、ネティアの行動は三人への抑止力というわけか」
「ええ、そして自身が罰を受けることで、ラナちゃんへの罪滅ぼしを行った」
「そいな。それで、みんなから悪口を……そまでは、求めてないんや……」
「求めなくても、そうじゃないと自分を許せない。彼女は、誇り高き貴族だから――でも、私はその行為を腹立たしく感じます」
「ミコン?」
「どして?」
ミコンは目元に皺を寄せて、怒りと悲しみが混ざり合う表情を見せて、こう言葉を漏らす。
「私から、いえ、庶民から絶対に罰など受けないという意思を感じました。自分勝手に罰を選び、罪を背負うネティアが腹立たしく感じます……だけど、私を――」
ミコンはネティアの姿をレモンイエローの瞳に納める。
(身を挺して、私を止めてくれた。三人娘を守ると同時に私までも。もし、あの時、ネティアの殺気を受けなければ、我を失った私は三人娘を殴りつけて、何らかの処分を受けていた。それを止めてくれた)
ミコンはラナへ瞳を向ける。
(処分を受ける事態になったら、ラナちゃんを悲しませることになっていた。あの時の私はそんなことにも頭が回らずに……だけど、ネティアは……私のことが気に食わない存在だと思っているのに、ネティアは……)
レンへ顔を向けて、ネティアという存在を見つめ直す。
「レンちゃん。私はネティアを過小評価していたようです。四大名門という威を借りる取るに足らない女狐だと思っていました。だけど――なかなかやるっ」
「……そうか」
「だからといって、好きにはなれませんけどね。ネティアから感じる庶民への差別感情。私への嫌悪は本物。それはとても強いもの。理由はわかりませんが……」
ミコンの視線がネティアへ突き刺さる。
そのネティアは粒の囁きである霧雨のような誹謗を受けながらも、貴族として臆することなく廊下を歩く。
そして、背後に立つミコンの視線を感じ取る。
(ミコン=ペルシャ。あの程度で感情に呑まれるなど、実に愚か……ですが、冷静さを取り戻した彼女は恐ろしいほどまでに切れますわね。まだまだ怒りの炎くすぶる感情を心に宿しながら、冷静に私と三人の関係を正しく見抜いた)
ネティアはミコンを強く意識する。苦悩と憎しみを籠めて――。
(そして、私の言わんとすること、責任の取り方を即座に察した……貴族の方でもあのような者は少ない。ですが、認めるわけにはいかない。そう、だからこそ、庶民が学問を学ぶなど反対なのです…………あのような庶民がいるからこそ! 絶対に認めるわけにはいかないんですのよ!!)
彼女の背中をミコンは歯を食い縛り見つめる。
その視線に気づいたのか、ネティアは振り返り、口端を緩める。
「ミコン、以前も言いましたが、我を忘れていたとはいえあなたは魔導生なんだから、魔法を使いなさい、魔法を」
「にゃっ……うるさいですよ」
微笑みを残して立ち去るネティア。
食い縛りを歯ぎしりに変えて、彼女を見送るミコン。
彼女たちの影が無くなったところで、レンが話しかけてきた。
「ミコン……」
「すみません。感情に呑まれて我を失ってしまいました」
「いや、友のために怒れることは良いことだよ」
「いえ、そうとは限りません」
「え?」
「ミコン! はぁはぁはぁはぁ」
ラナが肩を上下に揺らし息を切らして現れた。
ミコンは彼女へ近づき、謝罪を述べる。
「ごめんなさい、ラナちゃん。仇は取れませんでした」
「そいな」
「そしてそれ以上に、心配をかけてしまい本当にごめんなさい」
ミコンは深々と頭を下げる。それにラナは両手を前に出して振りながら慌てた様子を見せた。
「なんもなんも! やめって」
ラナの声を受け取って、ミコンは頭を戻す。
そして、すでにネティアの居なくなった廊下に彼女の姿を思い浮かべて、ラナへ言葉を渡した。
「ですが、あの三人娘は罰を受けます」
「え?」
「そして何より、ネティアも……」
――後日
ネティアと取り巻き三人娘が学園の廊下を歩いている。
すると、通りすがりの生徒たちがこそこそと言葉を立てる。
「あの人たちでしょ。庶民いじめをしてた人たちって」
「ああ、その庶民のリボンをドブにつけたとか? しかもそれ、母親からの贈り物らしいぜ」
「四大名門の恥さらしよね~。いえ、私たち貴族の恥よ」
「俺も庶民が同じ学園に通っているのは気に食わないけど、あんなくだらないことはできねぇよ」
「クスクス、四大名門のくせに貴族の立ち振る舞いを知らないなんて笑える~」
浴びせられる誹謗。
ネティアはそれを何するものぞと、涼しげな顔で歩く。
だが、彼女の取り巻きである三人の女生徒はとても苦しげな表情で歩き、時折ネティアへ申し訳なさそうな視線を向けていた。
その様子をミコン・レン・ラナは見ていた。
ミコンは語る。
「ネティアは無関係。あれは三人娘が勝手にやったこと。だけど、ネティアは自分の罪として受け入れた」
レンは問う。
「どうして?」
「けじめでしょう。ネティアとあの三人娘の関係はわかりませんが、ネティアにとって大切な友達であり、自分はリーダーでもある。だから、三人娘の不始末を庇い、責任を取った。同時に、三人へ反省を促すもの」
ラナが疑問に言葉を揺らす。
「どして、三人が? どな、反省を?」
「三人にとってネティアは尊敬すべき存在。だけど、自分たちの行いが尊敬すべき相手を傷つけることになった。今後、あの三人はあんなことを絶対にしないでしょう。行えば、ネティアが率先して罪を背負うから」
レンが得心が行ったと声を上げる。
「なるほど、ネティアの行動は三人への抑止力というわけか」
「ええ、そして自身が罰を受けることで、ラナちゃんへの罪滅ぼしを行った」
「そいな。それで、みんなから悪口を……そまでは、求めてないんや……」
「求めなくても、そうじゃないと自分を許せない。彼女は、誇り高き貴族だから――でも、私はその行為を腹立たしく感じます」
「ミコン?」
「どして?」
ミコンは目元に皺を寄せて、怒りと悲しみが混ざり合う表情を見せて、こう言葉を漏らす。
「私から、いえ、庶民から絶対に罰など受けないという意思を感じました。自分勝手に罰を選び、罪を背負うネティアが腹立たしく感じます……だけど、私を――」
ミコンはネティアの姿をレモンイエローの瞳に納める。
(身を挺して、私を止めてくれた。三人娘を守ると同時に私までも。もし、あの時、ネティアの殺気を受けなければ、我を失った私は三人娘を殴りつけて、何らかの処分を受けていた。それを止めてくれた)
ミコンはラナへ瞳を向ける。
(処分を受ける事態になったら、ラナちゃんを悲しませることになっていた。あの時の私はそんなことにも頭が回らずに……だけど、ネティアは……私のことが気に食わない存在だと思っているのに、ネティアは……)
レンへ顔を向けて、ネティアという存在を見つめ直す。
「レンちゃん。私はネティアを過小評価していたようです。四大名門という威を借りる取るに足らない女狐だと思っていました。だけど――なかなかやるっ」
「……そうか」
「だからといって、好きにはなれませんけどね。ネティアから感じる庶民への差別感情。私への嫌悪は本物。それはとても強いもの。理由はわかりませんが……」
ミコンの視線がネティアへ突き刺さる。
そのネティアは粒の囁きである霧雨のような誹謗を受けながらも、貴族として臆することなく廊下を歩く。
そして、背後に立つミコンの視線を感じ取る。
(ミコン=ペルシャ。あの程度で感情に呑まれるなど、実に愚か……ですが、冷静さを取り戻した彼女は恐ろしいほどまでに切れますわね。まだまだ怒りの炎くすぶる感情を心に宿しながら、冷静に私と三人の関係を正しく見抜いた)
ネティアはミコンを強く意識する。苦悩と憎しみを籠めて――。
(そして、私の言わんとすること、責任の取り方を即座に察した……貴族の方でもあのような者は少ない。ですが、認めるわけにはいかない。そう、だからこそ、庶民が学問を学ぶなど反対なのです…………あのような庶民がいるからこそ! 絶対に認めるわけにはいかないんですのよ!!)
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