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第10話
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私は真っ赤な生き物に襲われると思い、身構えました。
ですが、真っ赤な生き物は私に襲い掛かることもなく、ダレカの肩の上に乗ったまましゃべり続けます。
「子ども……下の連中が作った? いやいや、生殖に関する知識は失われているはず。謎だ。様子を見るかぎり、記憶の再生も行われていないようだが……問い合わせてみるか」
真っ赤な生き物の目が忙しなく動きます。
ですが、途中で目がぴたりと止まり、次に首を傾げました。
「エラー? 何者かが介入? まぁ、いい。私の役目じゃない。私の役目は降る者の手助けだ」
真っ赤な生き物は、ダレカの頬に鼻をぶつけました。
ダレカはこくりと頷いて、私に顔を向けます。
「ま、頑張って上を目指せ。俺は下へ行かなきゃならんからな」
「はい!」
「そんじゃな」
そう言って、ダレカは紐のついた袋の中から小さな袋を取り出し、それを私の足元に投げて、下へ続く階段へ向かっていきました。
私は小さな袋を手に取ります。
それはお母さんの服で作った布の入れ物とは全然違う、とても丈夫な袋でした。入り口には丸っこいナニカがついていて、しっかり袋が閉じられるようになっています。
丸っこいナニカは布の切れ目に挟まっていて取りにくかったですが、何とか取って中身を確認します。
「え~っと、乾パンに、透明な液体の入った透明な入れ物に、白い布に……ナイフ?」
ナイフ……それは私の持っている錆びたナイフとは違い、キラキラと輝いていました。
「すごい、こんなナイフがあるなんて。それに、液体の入っている入れ物も見たことない」
上を見上げます。そこにあるのは真っ白な天井ですが、この天井の遥か先には、こういった見たこともない物がたくさんあるのでしょうか?
私はがぜんやる気に満ちて、小さく両手の拳を握ります。
「うん、塔を登るぞ~! おー!!」
――――塔を降るダレカ
ダレカの肩の上に乗る、真っ赤な生き物が語り掛けてくる。
「随分と情け深いことをするな」
「こう見えて、俺は優しんだろ。記憶がないから知らんが……ま、どのみち、あの子は途中で死ぬ。途中にある、あれは乗り越えられんだろ」
塔を登った先には危険があり、そこで死ぬとわかっていながらも、ダレカは少女を助けた。
しかし、その危険を伝えることはない。
真っ赤な生き物は、心の中で嘆息を生む。
(はぁ、助けた相手が死ぬというのにこの態度。こいつもまた、必要最低限の知識しか与えられていない存在。そして、塔を降ることを強く刻まれた存在。故に、理屈が通らぬ行為を……)
「ん、どうした? 俺を見て」
「なんでもな――いや、アドバイザーとして一言伝えておこう」
「なんだ、珍しい。ここまで俺を見てるだけだったくせに」
「早く降れ」
「は?」
「それだけだ」
「おいおい、それはアドバイスじゃなくて、ただの催促だろ。言われなくても降るさ。それが俺の役目だからな」
そう言って、ダレカはぐるぐるの階段を降る。その足取りはゆったりとしたもの。
真っ赤な生き物は小さく首を横に振った。
(登る者と降る者。登る者が圧倒的に不利。そうでありながら、ここまで登って来ているとは。それも、本来存在しないはずの幼子。おまけに、記憶の再生も行われていないと見える。上とは連絡がつかない。これは何かしらの問題が……)
しかし、真っ赤な生き物はここで思考を止めた。
(私は降る者のアドバイザー。それ以上でも、それ以下でもない)
ですが、真っ赤な生き物は私に襲い掛かることもなく、ダレカの肩の上に乗ったまましゃべり続けます。
「子ども……下の連中が作った? いやいや、生殖に関する知識は失われているはず。謎だ。様子を見るかぎり、記憶の再生も行われていないようだが……問い合わせてみるか」
真っ赤な生き物の目が忙しなく動きます。
ですが、途中で目がぴたりと止まり、次に首を傾げました。
「エラー? 何者かが介入? まぁ、いい。私の役目じゃない。私の役目は降る者の手助けだ」
真っ赤な生き物は、ダレカの頬に鼻をぶつけました。
ダレカはこくりと頷いて、私に顔を向けます。
「ま、頑張って上を目指せ。俺は下へ行かなきゃならんからな」
「はい!」
「そんじゃな」
そう言って、ダレカは紐のついた袋の中から小さな袋を取り出し、それを私の足元に投げて、下へ続く階段へ向かっていきました。
私は小さな袋を手に取ります。
それはお母さんの服で作った布の入れ物とは全然違う、とても丈夫な袋でした。入り口には丸っこいナニカがついていて、しっかり袋が閉じられるようになっています。
丸っこいナニカは布の切れ目に挟まっていて取りにくかったですが、何とか取って中身を確認します。
「え~っと、乾パンに、透明な液体の入った透明な入れ物に、白い布に……ナイフ?」
ナイフ……それは私の持っている錆びたナイフとは違い、キラキラと輝いていました。
「すごい、こんなナイフがあるなんて。それに、液体の入っている入れ物も見たことない」
上を見上げます。そこにあるのは真っ白な天井ですが、この天井の遥か先には、こういった見たこともない物がたくさんあるのでしょうか?
私はがぜんやる気に満ちて、小さく両手の拳を握ります。
「うん、塔を登るぞ~! おー!!」
――――塔を降るダレカ
ダレカの肩の上に乗る、真っ赤な生き物が語り掛けてくる。
「随分と情け深いことをするな」
「こう見えて、俺は優しんだろ。記憶がないから知らんが……ま、どのみち、あの子は途中で死ぬ。途中にある、あれは乗り越えられんだろ」
塔を登った先には危険があり、そこで死ぬとわかっていながらも、ダレカは少女を助けた。
しかし、その危険を伝えることはない。
真っ赤な生き物は、心の中で嘆息を生む。
(はぁ、助けた相手が死ぬというのにこの態度。こいつもまた、必要最低限の知識しか与えられていない存在。そして、塔を降ることを強く刻まれた存在。故に、理屈が通らぬ行為を……)
「ん、どうした? 俺を見て」
「なんでもな――いや、アドバイザーとして一言伝えておこう」
「なんだ、珍しい。ここまで俺を見てるだけだったくせに」
「早く降れ」
「は?」
「それだけだ」
「おいおい、それはアドバイスじゃなくて、ただの催促だろ。言われなくても降るさ。それが俺の役目だからな」
そう言って、ダレカはぐるぐるの階段を降る。その足取りはゆったりとしたもの。
真っ赤な生き物は小さく首を横に振った。
(登る者と降る者。登る者が圧倒的に不利。そうでありながら、ここまで登って来ているとは。それも、本来存在しないはずの幼子。おまけに、記憶の再生も行われていないと見える。上とは連絡がつかない。これは何かしらの問題が……)
しかし、真っ赤な生き物はここで思考を止めた。
(私は降る者のアドバイザー。それ以上でも、それ以下でもない)
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