宇宙人に誘拐されたので暴れたら、UFOが壊れて剣と魔法の世界に不時着しました!?

雪野湯

文字の大きさ
上 下
3 / 21

第3話 魔法のある惑星

しおりを挟む
 私をさらった二人の宇宙人。
 種族名も名前も地球人の聴覚だと聞き取れないので、とりあえずテキトーな名前で呼ぶことにした。

 おっきな黒目に睫毛がない方がエイ。ある方がリアン。

 二人は進化の研究にために私(地球人)の肉体構造を調べていたんだって。
 一応、法律があるらしく、無用な危害を私に加えるつもりはないようで、地球に帰す意思もあるみたい
 私もまた、無駄に敵対しても仕方がないと思って、ここは故郷帰還のために協力することにした。


 技師のリアンが船の修理。
 民俗学者のエイが船の動力源を手に入れるために周辺の探査。

 私は船の動力源について、睫毛ありの技師リアンに尋ねる。
「船の動力源って何なの? 原子力? 反物質? 精神エネルギーとか?」
「クニュクニュだ」
「くにゅくにゅ?」

「生命体の意思が結晶化したものであり、貴重な物質のため滅多に手に入らない。だが幸い、反応は小さいながらも近くの集落からクニュクニュの反応が見られる」
「意思の結晶化ねぇ。なんかピンと来ないけど、貴重物質が動力源ってどうなんだろう? 使い勝手悪そう」

「一定量を満たせば、それを封じ、増幅することで半永久的に動力として使用できる」
「お~、すごいすごーい」
「だが、現状ではクニュクニュを封じるための密閉壁が壊れているため、使い切りとなってしまうな」

「え、駄目じゃん。その密閉壁とやらの修理は?」
「不可能だ。材料が足りない。それをどこかで調達する必要があるが、これもまた貴重物質であるため入手は困難。そして、この惑星にはその物質が存在しない」


「はぁ~、こりゃ面倒そうだね。ということは、とりあえずクニュクニュを手に入れて、それを使い切る前にどこか別の惑星に行って、新たにクニュクニュを手に入れるか、密閉壁の修理用素材を手に入れる。そうしながら、帰り道を探すって感じかな?」

「そうなるな」


「で、その動力源を手に入れるために、エイが近くの集落に行くんだよね?」
 私は睫毛のない民族学者エイに顔を向けて尋ねる。
 すると彼は、銀色の素肌に大きな黒目をした姿には、まったく似合わない、砕けた言葉遣いで返してきた。


「ああ、そうだね」
「集落ってことは誰かが住んでるんだよね? どんな人たちかわかってるの?」

「俺たちと同じ二足歩行の生命体だ。容姿は地球人に似ているぞ」
「え? じゃあ、エイが行くのって駄目じゃない? 明らかに地球人からかけ離れた姿だし」
「問題ないさ。ボディスーツがある」

 そう言って、エイが三本のみの指を全部広げてサッと横に振るう。
 すると、七色の光の繭が彼を包んで、ゆっくりと人型をしていく。
 その光が落ち着くと、そこには長身で細マッチョな体形に、くすんだ白いローブを纏った成人男性が姿を現した。


 長い金髪の碧眼で、柔らかな表情と優し気な雰囲気を持つ、そこそこイケメンの優男。
 声も機械的な口調から、表情と同じ柔らかいものへと変化。
 宇宙人姿のエイと比べて、全くの別人。
 その姿に、私はこれでもかと眉をひそめた。

「え、何、その姿?」
「どうした、俺の姿は変か?」
「別に変じゃないけどさ。地味にカッコいい系で、なんかムカつく」

「容姿は地球人の美的感覚から見て、それなりに良いものにしているからな。交渉相手から好感を得られるように。だからといって、あまり容姿を整えすぎちゃうと、無用な注目を浴びるから、ほどほどの容姿をね」
「言葉遣いは今の姿で合ってるんだけど……元を知ってるからなんかなぁ」

 中身は淡白で機械的な口調で気位が高く、地球人を見下しまくっている宇宙人。
 それが、そこそこのイケメンに変身。
 じっとそのイケメン姿を見てると、騙されそうになるので視線を森へ向ける。

「えっと、私はどうしよっかなぁ? リアンと一緒に居ても役に立たないし、エイについて行ってもいい? 他の惑星の人とかに会ってみたいし」
 

 こう尋ねると、エイは良いと言ってくれたけど、リアンが反対の声を上げた。

「ああ、別に構わないよ」
「エイ、それは得策ではない。ここは『魔法型惑星』だ」
「だけど、ここにユニを残しておくと、君の作業の邪魔になるんじゃないか? 彼女の性格からして、退屈を紛らわすすべは未熟だと思うし」


 何やらひどい言われような気がするけど、二人の会話の中にすっごく気になる一文が混ざっていた。それに対して私はかぶりつくように声を飛ばす。

「待って! いま、『魔法型惑星』って言ったよね? 何それ?」
「そのままの意味だよ。ここは俺たちとは違い、科学じゃなくて魔法を基軸とした文明圏なんだ」
「え、本当!? 魔法!? それって、ファンタジーな感じ? 剣と魔法の世界みたいな!」
「うん、そう」
「え、え、うっそ! 絶対、私エイについていく! 嫌だって言ってもついていくからね!」


 魔法と聞いて、ついて行かないなんてあり得ない!
 漫画やアニメの世界が現実に見られるかもしれないのに、こんな辛気臭い森の中で、嫌味な宇宙人と一緒にいられますかっての!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

カードゲームを持たされて異世界に送られた

お子様
ファンタジー
神とは不条理なもの。 強制的に異世界に送られ、ある物を回収して来いと言われた主人公。 死なれちゃ困ると渡されたのは昔遊んだTCG(カードゲーム)。 これで世界を旅して探して来いって? 異世界転移って、もっと優しい神様によるものじゃないですかね? しかし、カードには神による改造がされていて…。 小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...