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魔女の役目
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私は井戸の前まで来て眉間に皺を寄せながら、まずはリーディに注意を行う。
「止めろ、リーディ。井戸の上に立つな」
「だって、暇だし。でも、安心して、落ちるなんてへましないから」
「いや、ゴミが中に入るから」
「私が落ちる心配してよっ」
「いいから降りろ」
手をひらひらして降りるよう催促をすると、ほっぺたを膨らませながらも言うこと聞いて井戸の縁から降りた。
と、思ったら、代わりに井戸の縁にひょいっと腰を掛ける。
「ゆたかって、さっきの男の子ね」
「ああ」
「そう、男の子か~、むふふ~」
「下らん冗談には付き合わんぞ。早く本題に入れ」
「うえっ、つまんない。ま、いいや。彼に話すこともあるし、さっさと話を進めよっか」
「ああ。ユタカの正体を知っているんだな? あの子は何者なんだ?」
カクミ語を使えず、魔女を知らず、未知の道具を持つ少年。
ついに、ユタカの正体がわかる。
リーディは一寸の溜めもなく、ユタカの正体を口にした。
「彼は私たちと異なる世界の住人。私たちが住む、女神コティラが創造し世界、『ムカノキョウ』に迷い込んでしまった、異界人よ」
「ちょ、え、何を?」
異なる世界の住人? 異界人?
馬鹿げた答えに戸惑いと狼狽を重ねる。
そして、すぐに馬鹿な話と切り返そうとした。
だが、リーディの目は真剣そのもの。
とても冗談を言っているように見えない。
「本当に……そんなことが……?」
「あんたが黒髪を隠していないところを見ると、彼が魔女のことを知らないと知っているからでしょ」
「ああ」
「そして、言葉も通じない。そんな話ってあると思う?」
「それは……」
「この世界に住む者なら、どのような存在であってもカクミ語を使い、私たち魔女を恐れる。でも……」
「我々と異なる世界の住人なら、言葉も使えず、魔女も知らない、か……しかし、そんなことがっ?」
たしかに、そうであるのならば、あらゆる辻褄が合う。
ユタカが持つ不思議な道具、私の理解を超える高度な技術力も……。
「だけど、はい、そうですかとは……」
「うーん、私の経験上、異界人たちは言葉が通じなくても、何とか自分が別の世界から来たことを伝えようとする傾向があるけど、それっぽいことなかった? 例えば、絵を使ったりとかして」
「ああ、たしかに最初の頃は絵でやり取りをしていたが異界から来たような……いや、待てっ。最初の絵。転送。あれは、もしかして?」
初めて絵を使い、ユタカが何かを伝えようとしていたときのことを思い出す。
彼は二つの丸を書いて、私と自分を描いた。そして、そこから矢印を伸ばして、ユタカの絵を私のそばに置いた。
矢印は転送を表していると考えたが、丸の意味はわからずじまいだった。
「二つの丸。そうか、あれは異なる二つの世界を表していたのか……」
「なにか心当たりがあるみたいね。でも、気づかないのはしょうがないっか。普通、異界の人が来るなんて考えないし。私も三十年くらい前に、初めて彼らのこと知ったわけだしねぇ」
「他にもユタカのような異界人とやらがいるのか?」
「うん、ここ数十年前くらいからどういうわけか異界から人が来るの。原因はまだ探っている最中だけどね。でも、おかげさまで空間の魔女としてやるべきことが見つかった」
「魔女としてやるべきこと……?」
「うん、まぁね……あの、ゆたかとは出会ってどのくらいになる?」
「ん? ひと月過ぎたくらいだが、何か問題でも?」
「ひと月かぁ。情が移るには十分すぎる時間だよねぇ。はぁ~、言いにくいなぁ」
「何の話だ?」
「ミラ、落ち着いて聞いて」
リーディは腰を掛けていた井戸の縁から降りて、私へ真っ直ぐと向き直った。
そして、感情の変化を一切排して、話しを続ける。
「私が魔女としてやるべき仕事は二つ。一つは異界人がやってくる原因を研究すること。そして、もう一つは、迷い人である彼らを家へ帰すこと……」
「止めろ、リーディ。井戸の上に立つな」
「だって、暇だし。でも、安心して、落ちるなんてへましないから」
「いや、ゴミが中に入るから」
「私が落ちる心配してよっ」
「いいから降りろ」
手をひらひらして降りるよう催促をすると、ほっぺたを膨らませながらも言うこと聞いて井戸の縁から降りた。
と、思ったら、代わりに井戸の縁にひょいっと腰を掛ける。
「ゆたかって、さっきの男の子ね」
「ああ」
「そう、男の子か~、むふふ~」
「下らん冗談には付き合わんぞ。早く本題に入れ」
「うえっ、つまんない。ま、いいや。彼に話すこともあるし、さっさと話を進めよっか」
「ああ。ユタカの正体を知っているんだな? あの子は何者なんだ?」
カクミ語を使えず、魔女を知らず、未知の道具を持つ少年。
ついに、ユタカの正体がわかる。
リーディは一寸の溜めもなく、ユタカの正体を口にした。
「彼は私たちと異なる世界の住人。私たちが住む、女神コティラが創造し世界、『ムカノキョウ』に迷い込んでしまった、異界人よ」
「ちょ、え、何を?」
異なる世界の住人? 異界人?
馬鹿げた答えに戸惑いと狼狽を重ねる。
そして、すぐに馬鹿な話と切り返そうとした。
だが、リーディの目は真剣そのもの。
とても冗談を言っているように見えない。
「本当に……そんなことが……?」
「あんたが黒髪を隠していないところを見ると、彼が魔女のことを知らないと知っているからでしょ」
「ああ」
「そして、言葉も通じない。そんな話ってあると思う?」
「それは……」
「この世界に住む者なら、どのような存在であってもカクミ語を使い、私たち魔女を恐れる。でも……」
「我々と異なる世界の住人なら、言葉も使えず、魔女も知らない、か……しかし、そんなことがっ?」
たしかに、そうであるのならば、あらゆる辻褄が合う。
ユタカが持つ不思議な道具、私の理解を超える高度な技術力も……。
「だけど、はい、そうですかとは……」
「うーん、私の経験上、異界人たちは言葉が通じなくても、何とか自分が別の世界から来たことを伝えようとする傾向があるけど、それっぽいことなかった? 例えば、絵を使ったりとかして」
「ああ、たしかに最初の頃は絵でやり取りをしていたが異界から来たような……いや、待てっ。最初の絵。転送。あれは、もしかして?」
初めて絵を使い、ユタカが何かを伝えようとしていたときのことを思い出す。
彼は二つの丸を書いて、私と自分を描いた。そして、そこから矢印を伸ばして、ユタカの絵を私のそばに置いた。
矢印は転送を表していると考えたが、丸の意味はわからずじまいだった。
「二つの丸。そうか、あれは異なる二つの世界を表していたのか……」
「なにか心当たりがあるみたいね。でも、気づかないのはしょうがないっか。普通、異界の人が来るなんて考えないし。私も三十年くらい前に、初めて彼らのこと知ったわけだしねぇ」
「他にもユタカのような異界人とやらがいるのか?」
「うん、ここ数十年前くらいからどういうわけか異界から人が来るの。原因はまだ探っている最中だけどね。でも、おかげさまで空間の魔女としてやるべきことが見つかった」
「魔女としてやるべきこと……?」
「うん、まぁね……あの、ゆたかとは出会ってどのくらいになる?」
「ん? ひと月過ぎたくらいだが、何か問題でも?」
「ひと月かぁ。情が移るには十分すぎる時間だよねぇ。はぁ~、言いにくいなぁ」
「何の話だ?」
「ミラ、落ち着いて聞いて」
リーディは腰を掛けていた井戸の縁から降りて、私へ真っ直ぐと向き直った。
そして、感情の変化を一切排して、話しを続ける。
「私が魔女としてやるべき仕事は二つ。一つは異界人がやってくる原因を研究すること。そして、もう一つは、迷い人である彼らを家へ帰すこと……」
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