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第十五章 絶望の先にあるもの
決着
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ヤツハは地を蹴り、命育みし豊穣の大地を駆け抜けた!
黒騎士は死神の鎌をもって、命を刈り取る!
二人の無数の剣撃は衝撃となり周囲へと広がる。
衝撃は耳奥に痛みを走らせ、鼓膜を突き刺す。
一撃に幾重もの剣撃が鳴動し、音は洪水となって周りにいる者たちを呑み込んでいく。
空気を軋ませ亀裂を生む音は、頭に槌打つ痛みを響かせる。
だが、誰も耳を押さえることも頭を押さえることもなく、二人の戦いを見届ける。
飛び散る火花に火花が重なり合い、煌びやかな大輪の花々が二人を包む。
黒騎士の兇刃によって、ヤツハの血は霧となって漂う。
出でてはすぐに消え去る火の花。
血霧は火をよく映し、星のように凛と輝く。
紅く、美しく、儚き幻想的な光景。
同時にそれは、命の灯が潰えようとする情景でもある。
黒騎士は剣を振り下ろす。
ヤツハは半歩後ろに下がり、これを躱す。
だが、剣はすぐに跳ね上がり、地面より天へ駆け抜けた。
――ヤツハを両断する一撃――
しかし、ヤツハの瞳は刃をしっかりと見つめていた。
彼女は柄頭を黒騎士の刃にぶつけ、剣を弾き飛ばす。
これには然しもの黒騎士も驚きの声を上げた。
「何っ!?」
このとき、ヤツハが怯え一歩下がっていれば、このような反撃は不可能だった。
怖れを捨て、半歩のみ退いたおかげで間合いは途切れることなく、反撃に転じることができた。
その切間は……ヤツハが剣にて一太刀切り伏せるには十分すぎる時間。
二度と訪れることのない好機……。
そのはずなのに――――ヤツハは、黒騎士の眼前で切り伏せた剣を手放したっ!?
辛うじて戦いに目が追いついていたフォレとバーグは驚愕する。
ヤツハが手にして剣は、己の身を守り、黒騎士を穿つ、絶対に手放せない牙。
それを彼女は手放したのだ。
フォレとバーグの思考は一瞬の空白を生む。
それは――黒騎士も同じっ!
(いっけぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ!!)
ヤツハはさらに深く踏み込み、黒騎士の胸に飛び込んでいく!
黒騎士から奪った時間は刹那よりも短き粒の時間。
それでもヤツハは迷わず駆ける。
黒騎士は剣を返し、ヤツハの首を刈り取ろうとする。
もし、もしっ、この時! ヤツハに少しでも迷いがあれば首と胴は離れていた。
しかし、死を恐れず希望のみを瞳に宿し、前へ突き進んだヤツハが失ったものは――僅か髪数本!
ヤツハの瞳は絶大な魔力を帯びた黄金の輝きを放ち、その魔力は右拳に集約され紫光を纏う。
「はじけとべぇぇえぇぇぇぇ!!」
…………拳は黒騎士の左腹部へと叩きつけられた。
鈍い音が広がる……その音は、鎧を貫いた音ではない。
鎧がひしゃげた音でもない。
音は、聞く者全てへ嘔気を産むもの。
――拳が崩れる音。骨が砕け散る音。
次に聞こえたのは、ヤツハの悲鳴――。
「うぎゃぁぁあ!! うあわあああ! ひぎぃぃぃぃい!!」
彼女は真っ赤に染まった右手を見つめながら、涙と唾液に塗れる叫び声を轟かせた。
雪原のように白く、白魚のように美しかった指はぐしゃぐしゃに変形し、五本の指全ての爪は剥げ落ちている。
もはやそれは、人の指先とは思えぬ姿。
しかし、そうなるのも当然の結果。
剣も魔法も通さぬ黒き粒子を纏う鎧を、素手で叩きつけたのだから……。
誰もが、ヤツハの馬鹿げた行為に絶句した。
禍々しい黒騎士の鎧に素手をぶつけるなど、正気の沙汰ではない。
狂人の行為。
誰の目にもそう映る。
だが、フォレだけはヤツハの姿を見つめ、悩乱し、地面を掻き毟っていた。
(なんて、無茶を! ヤツハさん!)
ヤツハは地面に倒れ、痛みに塗れる右手を体から少し放して、悶え打つ。
本当なら、左手で右腕を支えたい。
しかし、それすら叶わない。
フォレは痛みに気を失うことも許されず、ひたすら叫び声を上げ続けるヤツハの姿を見つめ、涙を落とす。
(ヤツハさん、ヤツハさん! 私は、俺は情けないっ!)
地面を掻き毟る指先に血が滲む。
だが、その痛みは、ヤツハが味わっている痛みと比べれば、棘の痛みすらない。
黒騎士は地面に転がり悲鳴を上げ続けるヤツハへ、一歩、足を踏み出した。
そして――片膝を落とし、黒き粒子を霧散させ、動きを止めた。
その光景に、戦いを見つめていた数多の瞳たちは驚く。
黒騎士の鎧には傷一つない。ヤツハの拳は無意味だったはず。
ヤツハは歯を食いしばり、痛みに耐えながら、地を這うように一度は捨てたフォレの剣に近づく。
彼女はしっかりと左手で剣を握り締めて、何度も足を崩しふらつきながらも、剣を支えとして立ち上がった。
ヤツハは黒騎士に近づき、刃を彼の首に当てる。そして――
「く、黒騎士ぃぃ! 俺のぉぉ、俺の、俺の、勝ちだぁぁぁぁ!!」
ヤツハは高らかと勝利を宣言する。
叫ぶ声には血が混じる。
喰いしばった歯茎からは血が溢れ、涙と涎に顔を汚し、右手は原形を失っている。
だが、その姿を誰も醜いだと感じていない。
むしろ、貴き姿……。
黒い絶望を纏いし騎士は片膝をつき、ヤツハへ頭を垂れている。
美しき少女は騎士の肩に剣を置き、彼を見つめる。
それは女神に剣を捧げた騎士の光景。
血染めの女神は息も絶え絶えに、剣を黒騎士の首に当てたまま何もできず、じっとしている。
彼女は剣を騎士に当てることで、やっと立っていられる状態。
黒騎士はピクリと指先を動かし、自身の首に賜った熱籠る冷たき刃に軽く触れた。
ただ、それだけの行為で、ヤツハは体をふらつかせて、地面に倒れる。
そして、右手の痛みに狂う。
「うがぁぁぁ! うぎぎぎぃぃ! あああぁぁぁぁ!」
黒騎士は何事もなかったかのように、すっくと立ち上がり、ヤツハを見下ろす。
「何を企んでいるのかと思えば、よもや、空間魔法とはな……」
そう……ヤツハが右手に宿した紫光は、空間魔法。
彼女は空間を揺るがす攻撃呪文を黒騎士へ叩きつけたのだ。
衝撃は黒き粒子の壁を貫き、黒騎士の肉体へ到達していた。
だからこそ彼は片膝をついた。
だが、黒騎士の命を刈り取るには及ばなかった。
フォレは、悲鳴を上げ右手を庇うこともできずに、痛みにのたうち回るヤツハを涙の中に映す。
「空間魔法……ヤツハさん。あの時のように!」
風に乗り、覚悟を口にしたヤツハの言葉。
フォレの耳に届いた呪文――それは地下練習場で聞いた空間魔法の枕詞。
空間魔法とは、制御を完璧に行わなければ魔力の流れを乱し、肉、骨、神経を切り刻む痛みに苛まれる。
ウードの力を借りて魔力が飛躍的に上がったヤツハであったが、完璧な制御には至れなかった。
乱れた魔力は痛覚を荒ぶらせる。
右手にふわりと風が当たるだけで、痛みは四肢へと広がり、脳髄を刺す。
それ故に、ヤツハは痛みを支えるため、右手に触れることさえ許されない。
朱に染まる右手。ズレ落ちる爪に、皮膚を突き破り飛び出した骨。
レコード盤の溝に針を通すように、筋線維の一本一本に幾度も痛みがなぞり、叫び声を奏でる。
立ち上がることも許されず、痛みに蹂躙されるヤツハ。
黒騎士はその醜態をまざまざと見つめ、語る。
「敗北は恥辱。痰を浴びせられ、糞汁を飲まされ、嘲笑とともに臓腑を引き摺り出される。己の全てを否定され、汚辱の内に過ごす。耐え難き苦痛……であるが、我は」
黒騎士は剣を強く握り締め……鞘へと納めた。
「我は、これほど愉快な敗北を知らぬっ! フハハハハハッ!!」
背を反り、胸を天に掲げ、黒騎士は笑う。
喉の奥底から、腹の奥底から、心の奥底から、彼は笑う。
狂気と逸楽の宿る言葉を、価値ある少女に語り掛ける。
「娘よ。名は?」
「うぎぎ、うがぁあぁっ」
「名も言えぬか?」
黒騎士の言葉に、ヤツハは血と涙と涎と土に塗れ、ヘドロの様相を見せる顔を向ける。
そしてっ――
「ヤ、ヤツハ、ぎぃ!」
「ヤツハ……ヤツハよ。貴様が我の首元へ刃を置いたあの瞬刻、我は完全に無防備であった。見事……」
騎士は黒き外套を払い、背を見せる。
「ヤツハ、貴様の勝ちだ。再び運命の歯車見えることを祈り、今は去ろう」
彼はヤツハに背を向けたまま、歩いていく。
バーグたちをも無言で横切り、村より去っていった。
黒騎士は死神の鎌をもって、命を刈り取る!
二人の無数の剣撃は衝撃となり周囲へと広がる。
衝撃は耳奥に痛みを走らせ、鼓膜を突き刺す。
一撃に幾重もの剣撃が鳴動し、音は洪水となって周りにいる者たちを呑み込んでいく。
空気を軋ませ亀裂を生む音は、頭に槌打つ痛みを響かせる。
だが、誰も耳を押さえることも頭を押さえることもなく、二人の戦いを見届ける。
飛び散る火花に火花が重なり合い、煌びやかな大輪の花々が二人を包む。
黒騎士の兇刃によって、ヤツハの血は霧となって漂う。
出でてはすぐに消え去る火の花。
血霧は火をよく映し、星のように凛と輝く。
紅く、美しく、儚き幻想的な光景。
同時にそれは、命の灯が潰えようとする情景でもある。
黒騎士は剣を振り下ろす。
ヤツハは半歩後ろに下がり、これを躱す。
だが、剣はすぐに跳ね上がり、地面より天へ駆け抜けた。
――ヤツハを両断する一撃――
しかし、ヤツハの瞳は刃をしっかりと見つめていた。
彼女は柄頭を黒騎士の刃にぶつけ、剣を弾き飛ばす。
これには然しもの黒騎士も驚きの声を上げた。
「何っ!?」
このとき、ヤツハが怯え一歩下がっていれば、このような反撃は不可能だった。
怖れを捨て、半歩のみ退いたおかげで間合いは途切れることなく、反撃に転じることができた。
その切間は……ヤツハが剣にて一太刀切り伏せるには十分すぎる時間。
二度と訪れることのない好機……。
そのはずなのに――――ヤツハは、黒騎士の眼前で切り伏せた剣を手放したっ!?
辛うじて戦いに目が追いついていたフォレとバーグは驚愕する。
ヤツハが手にして剣は、己の身を守り、黒騎士を穿つ、絶対に手放せない牙。
それを彼女は手放したのだ。
フォレとバーグの思考は一瞬の空白を生む。
それは――黒騎士も同じっ!
(いっけぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ!!)
ヤツハはさらに深く踏み込み、黒騎士の胸に飛び込んでいく!
黒騎士から奪った時間は刹那よりも短き粒の時間。
それでもヤツハは迷わず駆ける。
黒騎士は剣を返し、ヤツハの首を刈り取ろうとする。
もし、もしっ、この時! ヤツハに少しでも迷いがあれば首と胴は離れていた。
しかし、死を恐れず希望のみを瞳に宿し、前へ突き進んだヤツハが失ったものは――僅か髪数本!
ヤツハの瞳は絶大な魔力を帯びた黄金の輝きを放ち、その魔力は右拳に集約され紫光を纏う。
「はじけとべぇぇえぇぇぇぇ!!」
…………拳は黒騎士の左腹部へと叩きつけられた。
鈍い音が広がる……その音は、鎧を貫いた音ではない。
鎧がひしゃげた音でもない。
音は、聞く者全てへ嘔気を産むもの。
――拳が崩れる音。骨が砕け散る音。
次に聞こえたのは、ヤツハの悲鳴――。
「うぎゃぁぁあ!! うあわあああ! ひぎぃぃぃぃい!!」
彼女は真っ赤に染まった右手を見つめながら、涙と唾液に塗れる叫び声を轟かせた。
雪原のように白く、白魚のように美しかった指はぐしゃぐしゃに変形し、五本の指全ての爪は剥げ落ちている。
もはやそれは、人の指先とは思えぬ姿。
しかし、そうなるのも当然の結果。
剣も魔法も通さぬ黒き粒子を纏う鎧を、素手で叩きつけたのだから……。
誰もが、ヤツハの馬鹿げた行為に絶句した。
禍々しい黒騎士の鎧に素手をぶつけるなど、正気の沙汰ではない。
狂人の行為。
誰の目にもそう映る。
だが、フォレだけはヤツハの姿を見つめ、悩乱し、地面を掻き毟っていた。
(なんて、無茶を! ヤツハさん!)
ヤツハは地面に倒れ、痛みに塗れる右手を体から少し放して、悶え打つ。
本当なら、左手で右腕を支えたい。
しかし、それすら叶わない。
フォレは痛みに気を失うことも許されず、ひたすら叫び声を上げ続けるヤツハの姿を見つめ、涙を落とす。
(ヤツハさん、ヤツハさん! 私は、俺は情けないっ!)
地面を掻き毟る指先に血が滲む。
だが、その痛みは、ヤツハが味わっている痛みと比べれば、棘の痛みすらない。
黒騎士は地面に転がり悲鳴を上げ続けるヤツハへ、一歩、足を踏み出した。
そして――片膝を落とし、黒き粒子を霧散させ、動きを止めた。
その光景に、戦いを見つめていた数多の瞳たちは驚く。
黒騎士の鎧には傷一つない。ヤツハの拳は無意味だったはず。
ヤツハは歯を食いしばり、痛みに耐えながら、地を這うように一度は捨てたフォレの剣に近づく。
彼女はしっかりと左手で剣を握り締めて、何度も足を崩しふらつきながらも、剣を支えとして立ち上がった。
ヤツハは黒騎士に近づき、刃を彼の首に当てる。そして――
「く、黒騎士ぃぃ! 俺のぉぉ、俺の、俺の、勝ちだぁぁぁぁ!!」
ヤツハは高らかと勝利を宣言する。
叫ぶ声には血が混じる。
喰いしばった歯茎からは血が溢れ、涙と涎に顔を汚し、右手は原形を失っている。
だが、その姿を誰も醜いだと感じていない。
むしろ、貴き姿……。
黒い絶望を纏いし騎士は片膝をつき、ヤツハへ頭を垂れている。
美しき少女は騎士の肩に剣を置き、彼を見つめる。
それは女神に剣を捧げた騎士の光景。
血染めの女神は息も絶え絶えに、剣を黒騎士の首に当てたまま何もできず、じっとしている。
彼女は剣を騎士に当てることで、やっと立っていられる状態。
黒騎士はピクリと指先を動かし、自身の首に賜った熱籠る冷たき刃に軽く触れた。
ただ、それだけの行為で、ヤツハは体をふらつかせて、地面に倒れる。
そして、右手の痛みに狂う。
「うがぁぁぁ! うぎぎぎぃぃ! あああぁぁぁぁ!」
黒騎士は何事もなかったかのように、すっくと立ち上がり、ヤツハを見下ろす。
「何を企んでいるのかと思えば、よもや、空間魔法とはな……」
そう……ヤツハが右手に宿した紫光は、空間魔法。
彼女は空間を揺るがす攻撃呪文を黒騎士へ叩きつけたのだ。
衝撃は黒き粒子の壁を貫き、黒騎士の肉体へ到達していた。
だからこそ彼は片膝をついた。
だが、黒騎士の命を刈り取るには及ばなかった。
フォレは、悲鳴を上げ右手を庇うこともできずに、痛みにのたうち回るヤツハを涙の中に映す。
「空間魔法……ヤツハさん。あの時のように!」
風に乗り、覚悟を口にしたヤツハの言葉。
フォレの耳に届いた呪文――それは地下練習場で聞いた空間魔法の枕詞。
空間魔法とは、制御を完璧に行わなければ魔力の流れを乱し、肉、骨、神経を切り刻む痛みに苛まれる。
ウードの力を借りて魔力が飛躍的に上がったヤツハであったが、完璧な制御には至れなかった。
乱れた魔力は痛覚を荒ぶらせる。
右手にふわりと風が当たるだけで、痛みは四肢へと広がり、脳髄を刺す。
それ故に、ヤツハは痛みを支えるため、右手に触れることさえ許されない。
朱に染まる右手。ズレ落ちる爪に、皮膚を突き破り飛び出した骨。
レコード盤の溝に針を通すように、筋線維の一本一本に幾度も痛みがなぞり、叫び声を奏でる。
立ち上がることも許されず、痛みに蹂躙されるヤツハ。
黒騎士はその醜態をまざまざと見つめ、語る。
「敗北は恥辱。痰を浴びせられ、糞汁を飲まされ、嘲笑とともに臓腑を引き摺り出される。己の全てを否定され、汚辱の内に過ごす。耐え難き苦痛……であるが、我は」
黒騎士は剣を強く握り締め……鞘へと納めた。
「我は、これほど愉快な敗北を知らぬっ! フハハハハハッ!!」
背を反り、胸を天に掲げ、黒騎士は笑う。
喉の奥底から、腹の奥底から、心の奥底から、彼は笑う。
狂気と逸楽の宿る言葉を、価値ある少女に語り掛ける。
「娘よ。名は?」
「うぎぎ、うがぁあぁっ」
「名も言えぬか?」
黒騎士の言葉に、ヤツハは血と涙と涎と土に塗れ、ヘドロの様相を見せる顔を向ける。
そしてっ――
「ヤ、ヤツハ、ぎぃ!」
「ヤツハ……ヤツハよ。貴様が我の首元へ刃を置いたあの瞬刻、我は完全に無防備であった。見事……」
騎士は黒き外套を払い、背を見せる。
「ヤツハ、貴様の勝ちだ。再び運命の歯車見えることを祈り、今は去ろう」
彼はヤツハに背を向けたまま、歩いていく。
バーグたちをも無言で横切り、村より去っていった。
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