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第六章 遭遇……アクタの謎
数字の謎
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朝食を終え、アプフェルの案内で学士館が管理する時計塔へ向かう。
時計塔は北地区にある学校の敷地外にあり、西地区の中心にあるそうだ。
道中、彼女は書類に目を通しながら、うんうんと唸り声を上げて歩いている。
「アプフェル、さっきから何見てんの?」
「ちょっとね、課題をねぇ」
「課題?」
ヒョイと書類を覗くと、見たこともない数式が並んでいた。
以前も少し話したけど、こちらの数字は地球のデジタル文字が変化したような数字。
慣れるまで大変だったが、今ではすんなりと頭に入ってくる。
だけど、アプフェルが手にしている書類の数式は全然頭に入ってこない。
「なにこれ? なんか難しい数式?」
「ああ、これ。風の魔法と火の魔法を組み合わせた時に生じる、エネルギー量の計算式で、その時の気候条件と術者の持つ魔力バランス。そこからどれだけの魔法力を生み出せるかって問題」
「……そうですか。なんか、ややこしそうなんだけど」
「そうかな? そこまで難しい問題じゃないけど……そっか、ヤツハは学校に通っているわけじゃないもんね。でも、あんたもそのうちエクレル先生から習うと思うよ」
「うげ、面倒」
「他にも基本問題で、土地面積の単純な計算から、そこの土地を掘削するために必要な魔力量を算出するとかあるけど」
別の書類を手渡され、読んでみる。
魔力量の計算はさっぱりだが、面積の計算には見覚えがあった。
日本にいた頃、進学の相談の際に高校の教科書を見せてもらったことがある。
そこに載っていたのは積分を利用した面積の求め方。
つまり、アプフェルが手にしている問題文は俺の知識を超えたもの。
それを単純な計算って……。
「アプフェルさんって、見た目とは違い頭いいんですね」
「それ、どういう意味よ? 一応、私は国立学士館の生徒よ。これぐらいできて当然」
「そっかぁ。これが、俺より頭いいのかぁ……」
「だからっ、どういう意味、それっ!? だいたい、これ扱いってっ!」
「すまん、正直舐めてました。アプフェルって学士館でどのくらい凄いの?」
「どのくらいって……実技では学年トップ。座学だと、二番だけど……そう、あの忌々しい女がいなければぁぁ~」
誰かを呪い、宿屋の時のように目を血走らせてる。
たぶん、相手は仕事をさぼった同一人物。
だけど、そいつがいなくても学年二位の成績。実技に至ってはトップ。
アプフェルが超がつくエリートなのには驚いた……性格はアホよりなのに。
今も、エリートとは思えない呪いの声を喉元から上げているし……。
「まぁまぁ、アプフェル。誰かを呪うのはそこまでにして、今日は仕事に集中しような。ほら、時計塔はすぐそこなんだし」
時計塔の背は高く、遠くからでもはっきり見えている。
なので、詳しい案内がなくても近くまで来たことはわかっていた。
時計塔は最初に王都に訪れた時に見た、あの高い塔。
あの時に時計塔かなと予想していたが、やはりそうだったみたいだ。
アプフェルは俺の宥めに渋々と頷くと書類をカバンに仕舞い、時計塔へ向かい歩き始めた。
時計塔の前まで来て、俺はあんぐりと大口を開けながら建物を見上げた。
高さは城壁より少し高いくらいで40mほど。
外壁はまんべんなく細かな装飾が施され、頭頂部は尖った屋根のようになっている。
見た目はロンドンにあるビッグベンを小型にした感じ。
入口と思われる場所には衛兵が立っていた。
遠目からでも結構な高さがあると思ってたが……これを二人で掃除するって無理がないだろうか?
「アプフェル。ホントに二人だけ掃除するの?」
「掃除する場所は一番上の階だけだから大丈夫。そこまで階段で昇んなきゃいけないけど」
「うへぇ~」
「我慢我慢。その代わり、依頼料が高いんだから。じゃあ、私は見張りの人に話をしてくるから、ちょっと待ってて」
「はいよ、わかった」
アプフェルが許可を取りに行っている間に、もう一度、時計塔を見上げる。
デカい……天辺には鐘らしきものが見える。これが壊れているなんて、ちょっともったいない。
次に、時計盤の部分に視線を移した。
そこで、思わず小さな声が飛び出た。
「え、なんでっ?」
「どうしたの?」
「あ、いや。許可は取れたの?」
「うん、問題なく。じゃ、とっと始めましょう」
「そうだな」
アプフェルは時計塔の入り口を目指す。
俺も彼女の後ろからついていくが、途中で足を止めて、時計に目を向ける。
(どうして、時計盤にローマ数字が使われているんだ? この世界の数字じゃないのに……)
時計塔は北地区にある学校の敷地外にあり、西地区の中心にあるそうだ。
道中、彼女は書類に目を通しながら、うんうんと唸り声を上げて歩いている。
「アプフェル、さっきから何見てんの?」
「ちょっとね、課題をねぇ」
「課題?」
ヒョイと書類を覗くと、見たこともない数式が並んでいた。
以前も少し話したけど、こちらの数字は地球のデジタル文字が変化したような数字。
慣れるまで大変だったが、今ではすんなりと頭に入ってくる。
だけど、アプフェルが手にしている書類の数式は全然頭に入ってこない。
「なにこれ? なんか難しい数式?」
「ああ、これ。風の魔法と火の魔法を組み合わせた時に生じる、エネルギー量の計算式で、その時の気候条件と術者の持つ魔力バランス。そこからどれだけの魔法力を生み出せるかって問題」
「……そうですか。なんか、ややこしそうなんだけど」
「そうかな? そこまで難しい問題じゃないけど……そっか、ヤツハは学校に通っているわけじゃないもんね。でも、あんたもそのうちエクレル先生から習うと思うよ」
「うげ、面倒」
「他にも基本問題で、土地面積の単純な計算から、そこの土地を掘削するために必要な魔力量を算出するとかあるけど」
別の書類を手渡され、読んでみる。
魔力量の計算はさっぱりだが、面積の計算には見覚えがあった。
日本にいた頃、進学の相談の際に高校の教科書を見せてもらったことがある。
そこに載っていたのは積分を利用した面積の求め方。
つまり、アプフェルが手にしている問題文は俺の知識を超えたもの。
それを単純な計算って……。
「アプフェルさんって、見た目とは違い頭いいんですね」
「それ、どういう意味よ? 一応、私は国立学士館の生徒よ。これぐらいできて当然」
「そっかぁ。これが、俺より頭いいのかぁ……」
「だからっ、どういう意味、それっ!? だいたい、これ扱いってっ!」
「すまん、正直舐めてました。アプフェルって学士館でどのくらい凄いの?」
「どのくらいって……実技では学年トップ。座学だと、二番だけど……そう、あの忌々しい女がいなければぁぁ~」
誰かを呪い、宿屋の時のように目を血走らせてる。
たぶん、相手は仕事をさぼった同一人物。
だけど、そいつがいなくても学年二位の成績。実技に至ってはトップ。
アプフェルが超がつくエリートなのには驚いた……性格はアホよりなのに。
今も、エリートとは思えない呪いの声を喉元から上げているし……。
「まぁまぁ、アプフェル。誰かを呪うのはそこまでにして、今日は仕事に集中しような。ほら、時計塔はすぐそこなんだし」
時計塔の背は高く、遠くからでもはっきり見えている。
なので、詳しい案内がなくても近くまで来たことはわかっていた。
時計塔は最初に王都に訪れた時に見た、あの高い塔。
あの時に時計塔かなと予想していたが、やはりそうだったみたいだ。
アプフェルは俺の宥めに渋々と頷くと書類をカバンに仕舞い、時計塔へ向かい歩き始めた。
時計塔の前まで来て、俺はあんぐりと大口を開けながら建物を見上げた。
高さは城壁より少し高いくらいで40mほど。
外壁はまんべんなく細かな装飾が施され、頭頂部は尖った屋根のようになっている。
見た目はロンドンにあるビッグベンを小型にした感じ。
入口と思われる場所には衛兵が立っていた。
遠目からでも結構な高さがあると思ってたが……これを二人で掃除するって無理がないだろうか?
「アプフェル。ホントに二人だけ掃除するの?」
「掃除する場所は一番上の階だけだから大丈夫。そこまで階段で昇んなきゃいけないけど」
「うへぇ~」
「我慢我慢。その代わり、依頼料が高いんだから。じゃあ、私は見張りの人に話をしてくるから、ちょっと待ってて」
「はいよ、わかった」
アプフェルが許可を取りに行っている間に、もう一度、時計塔を見上げる。
デカい……天辺には鐘らしきものが見える。これが壊れているなんて、ちょっともったいない。
次に、時計盤の部分に視線を移した。
そこで、思わず小さな声が飛び出た。
「え、なんでっ?」
「どうしたの?」
「あ、いや。許可は取れたの?」
「うん、問題なく。じゃ、とっと始めましょう」
「そうだな」
アプフェルは時計塔の入り口を目指す。
俺も彼女の後ろからついていくが、途中で足を止めて、時計に目を向ける。
(どうして、時計盤にローマ数字が使われているんだ? この世界の数字じゃないのに……)
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