銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
上 下
280 / 359
第二十四章 絶望と失意の花束を

神を鎖で繋ぐ施設

しおりを挟む
 神という力を数字で覗き込み、その偉大さと恐ろしさに私たちの言葉はため息のように落ちっぱなしだ。
 その中で親父がフィナに尋ねてくる。

「サノアの力は記録されていないのかい、フィナの嬢ちゃん? ま、本当にそんな神様がいればだけど」
「残念だけど記録はない。サノアの存在は不確かのままね」


「いや、あの方はいらっしゃる」

 この声を出したのはもちろん私だ。
 フィナと親父は私にきょとんとした表情を見せている。
 彼らの顔をさらに驚きに満ちたものへ変えることはできるが、人があまり高貴な存在を語るようなものでもないだろう。
 だから私は、冗談めかした真実を口にする。


「最近、サノア様の御力を身近に感じるようになってな。あの方は私たちの身近にいて、見守って下さっている。私たちが一人で歩いて行けるかどうかをな」
「なにそれ、あんたって信心深かったっけ?」
「旦那、フィコンに毒されたんですか?」
「ふふふ、さてな。それでだ、少々フィナの紹介の順番が気になるのだが……」
「あ、気づいた」

 と、フィナが声を上げると、キサが私が言わんとしていたことを言葉に表した。
「古代の人たちをあとに持ってきて神様を先に持ってきたということは、あの六人は神様よりも強いってことだね~」


 キサの言葉に、皆の背中にはぞくりとしたものが走った。
 グーフィスとエクアは互いに言葉を掛け合う。
「だ、だって、数百万や数千万の力だぜ。それを超えるって。なぁ、エクアさん」
「ええ、めちゃくちゃじゃないですか……フィナさん、本当にキサちゃんの言った通り?」

 皆の視線がフィナに注がれる。
 そのフィナは軽く微笑み、片目を閉じる仕草を見せた。
「安心して、あの六人全員が滅茶苦茶強いってわけじゃないから」
「それでも、超える人物が混じっているんだな、フィナ?」
「それを今から見せるから、ま、楽しんで」


 そう言ってフィナはモニターの表面をさすり、神々を消して、六人の姿を呼び戻した。
「では、順番に数値を読み上げていくよ。まずは三人。爺さんと金髪のおっさんと肌の黒い女性ね」

 爺さん――2356・金髪のおっさん――3577
 黒い肌の女性――353849


 この数字の並びに私たちは拍子抜けして、カインが言葉を漏らす。

「たしかにお強いですが、神々と比べると……その黒い肌の女性だけが勇者並みですが」
「この三人はね。ちなみに古代人の平均値っぽいのはわかってる。1300前後」
「私たちの平均が100。かなりの強さですね。ですが、スカルペル人の強者であれば渡り合える程度」
「そうね。正直、ずば抜けている黒い肌の女性が敵となっても、私たちでも何とかなりそう……問題は残りの三人。いくよ……」


 黒髪の銀眼の美女――8000万
 銀髪の眠そうな少女――1億2000万
 黒髪の切れ長の目の男性――15億7000万


 突然の強さのインフレに誰もが言葉を閉ざす。
 それでも私は何とか言葉を生む。

「け、桁違いにもほどがあるだろう! 特にこの黒髪の男性は何者だ!?」
「さぁね。少なくとも三人とも人間っぽいけど、単独で神を蹴散らせる存在。そして、この男性は笑いも消えるくらいにヤバい存在」
「私なんぞ息を吹きかけられるだけで消されてしまうな……なるほど、ここまで来てようやく君が何を見せたくて、何を懸念しているのかわかってきた」


 私は彼女の後ろにある、王都が望める窓を見る。
 今は窓の向こうに王都はなく、トレンチコートを着たウサギがマフィアと銃撃戦を繰り広げる映像が映っているが。
 
 それはさておき、皆も気づいているらしく、私の視線に促されるように窓の向こう側を見つめる。
 私は窓へ視線を向けたまま、フィナへ話しかける。


「懸念はこの窓の映像の向こうに隠れている、水球に眠る金髪の男性のことだな。フィナ、彼の数値は?」
「現状では2800。ただし、目覚めた際にどの程度膨らむかわからない。彼にあんたの銀眼と同様ならば、ここから四・五倍程度。せいぜい一万数千程度。でも……」

「最悪、そんな計算を嘲笑う強さを持つ可能性があるわけか。億ともなれば私たちの手に負える存在ではない。親父さんの言うとおりかもしれん。ここは殺せるうちに殺したおいた方が」
「ケント、それは拙速よ」
「うん?」

「ここは古代人の遺跡。高位存在を知り、それを捕らえていた形跡がある」
「つまり?」
「この遺跡を使えば、相手の力を押さえた状態で拘束することが可能ってことよっ」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...