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第二十四章 絶望と失意の花束を
ざ・へっぽこ
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ノートサイズの黒いガラス片にフィナたちの数値が映し出される。
魔族の平均値――3000・フィナ――41327
ギウ――97999?・レイ――575505
並ぶ四つの名前と四つの数値。
私たちは桁外れの数値を前に感嘆の息を漏らした。
グーフィスはレイの数値を見て、目をごしごし擦っている。
「フィナさんも凄いですが、一人、とんでもない数値があるんですが……」
「レイでしょ。まさに桁外れ。勇者を名乗るだけあるわ」
「それでもフィナさんは魔族よりも遥かに強いんですね」
「魔族の場合はあくまでも平均値だからね。調べてる最中、一万を超える連中がごろごろいたよ」
「それは、怖いっすね……」
グーフィスは見かけの図体によらず、自分を抱きしめてぶるぶるとした震えを見せる。
私は彼を横目に、ギウの数字に付いた?マークに着目する。
「フィナ、ギウの『97999?』の『?』マークはなんだ?」
「それがさ、ギウの力を測定しようとしたら、ギウの測定値に揺らぎがあったのよ」
「理由は?」
「その理由はギウが教えてくれた。彼って、力の放出にかなりの振り幅があるんだって。普段はガラス片に映った数字だけど。本気を出せばもっと伸びるってさ」
「その本気は測定させてくれなかったのか?」
「釣りをしている最中に話しかけたから、煙たがれて追い払われた……」
「あはは、彼は釣りになると無心になるからな。しかし、振り幅とは……私たちでも本気の時とそうではない時とでは幅があるだろう? 何か違いが?」
「たしかに、私たちでも気合が入ってない場合と入ってる場合で力の加減が違うけど、たぶんギウはその幅が凄いんだと思う。ちなみにその幅を考慮した場合、四十万くらいはあると思う」
「その根拠となるものは?」
「アイリとレイの存在」
「二人の?」
「まずは……えっとほら、以前アルリナでアイリとギウが会話したことがあったじゃん。私はその時、アイリに見つからないように姿を隠してたからこっそり聞いてたんだけど、アイリがギウに対して『私よりも強い。レイ並の強さくらいはあるかも』って言ってたの覚えてる?」
「ああ、言っていたな」
「で、次に、レイとギウの会話。互いに認め合いながらも、ギウが一歩引いてた感じがあった。レイもまた、勇者の中では一・二を争う強さがあると評したけど、自分を越えているとは言わなかった」
「たしかにそんなを話していたな」
「これらに加えて、私はアイリとやり合ってるからあいつとの実力差を把握してる。これについては少し腹が立つけど……それはさておき、アイリの実力を知る私。そして、アイリより強くレイより下。そこら辺から四十万くらいだろうなぁって」
「なるほど、はっきりした数字ではなく、君の戦士としての勘からということか」
「勘かもしれないけど結構自信あるよ。とまぁ、ギウの話はここまでにして、そろそろオードブルから口直しと行きましょうか」
「スープもなしにいきなり口直しか。で、口直しとはなんだ?」
「それはね、フッフッフッフッフッフ……」
フィナは私の言葉を受け取ると雰囲気を一変させ、不敵な笑い声を漏らし、こう言葉を続けた。
「今から皆さまの強さを測りますが、この中で一番へっぽこな人は誰でしょう……ねぇ~、ケント?」
「き、君は!?」
私はぞわりと鳥肌を立てた。
嫌らしく笑う少女を前にして冷たいものが背中に走る。
彼女は……私をおもちゃにするつもりだ!
「フィ、フィナ。そういうのはやめた方が、いいんじゃないかな?」
「あれあれ~、どうしたんですか、領主様?」
「こういうときだけ領主呼ばわりするんじゃない。君は私を小馬鹿にするためだけに半月も留守にしていたのか!」
「え~、違うよ~。ちゃんと別の目的があるんだって。これはあくまでも口直し。ホントにヤバいメインにつながるね」
「ん?」
「とにかく、今はおもちゃになってなさい。それに、あんた以外のメンバーは興味あるみたいだよ」
と言って、フィナは私の後ろを指差す。
親父は自分の拳を見つめ握り締めている。
「宗教騎士団の団長に勝ちはしたが、ギウのおかげであそこまで届いた。実際の俺はどこまで強くなったんだろうな」
グーフィスは拳を打っている。
「フィナさんにはまだまだ全然届かねぇだろうけど、足を引っ張らねぇ程度には強くならねぇとな。その基準がわかるのはいいっすね」
マスティフとマフィンは目から火花を飛ばし合う。
「ふふ、どうやらワシの方が実力が上とわかる時が来たようだな、マフィン」
「何をほざくニャか。俺との実力差に絶望しにゃいといいけどニャあ~」
四人の様子に私は肩を落とす。
「た、楽しそうだな……」
「ま、あんたがへっぽこなのは承知だから、弱くても落ち込む要素ないでしょ」
「そうであっても数値を突きつけられるのはいい気分じゃないぞ」
「まぁまぁ、とりあえず計測してみましょうよ。大丈夫よ、キサがいる限りドベにはならないから」
「私のライバルはキサかっ」
私は怒りに唾を飛ばすが、それを無視してフィナは計測を始めた。
キサ――27・エクア――254
カイン――232・親父――4780
ゴリン――356・グーフィス――3376
マスティフ――37380・マフィン――37350
皆は思い思い言葉を飛ばし合う。
キサとエクアとカインは……。
「う~ん、やっぱり子どもだから全然だねぇ。でも、エクアお姉ちゃんは大人の男の人よりも強いんだ」
「どうしてでしょうね? 腕力なんて全然ないのに?」
「たぶん、エクア君の場合、癒しの魔力が能力として評価されたんじゃないかな。それに引き換え僕はエクア君よりも二十も下……少しダイエットでもして体を鍛えようかなぁ」
次に親父が言葉を出し、それにフィナが注意を呼び掛ける
「四千? 俺は魔族とやり合えるぐらいに強かったのか? 信じられねぇ。もう、魔族相手にこそこそ逃げ回る必要はないってのか?」
「いえ、魔族の三千という数値は平均値で、五千、一万っていうのが普通にいるから逃げの一手の方が良いと思うよ」
「そうか……ま、魔族相手に名を広めるつもりなんてないからいいか。少なくとも、あのクソッたれな宗教騎士団の団長様よりもはっきり上ってので満足だぜ」
ゴリンとグーフィスは……。
「う~ん、普通の奴よりかぁ、強いみてぇでやすけど。半端な感じでやすな。問題は……グーフィス、おめぇ、そんなに強いのか?」
「どうなんだろう? 俺は戦士並みに強いって感じもしないっすけどね」
彼の疑問に私が声を返す。
「最近はフィナに殴られ続けて体が丈夫になってるから、その分が加味されているんじゃないのか?」
「ああ~、なるほど! ということは、これはフィナさんの愛の鞭による賜物! フィナさん、待っててくださいね。まだまだ差は桁違いでも、フィナさんの背中を守れるくらいに丈夫になりますから!!」
「ウザ……」
フィナは小さく本気のトーンで言葉を返す。
一方、マスティフとマフィンは、こちらの賑やかさに一層の賑やかさをつけ足すように言葉をぶつけあっていた。
「あはははは、どうやらワシの方が上のようだなっ、マフィン!」
「たった三十の差でそこまで馬鹿笑いされる謂れはないニャ!」
「三十の差でもワシが上であることは変わらんだろう」
「クッ、にゃんとういう屈辱ニャ。にゃけどニャっ」
「言うな、マフィンっ。それはわかっておる!」
二人は黒いガラス片に浮かぶ、ある数字に目を向ける。
フィナ――41327
「幼い少女よりも我らは弱いのか……」
「悲しい現実にゃのニャ」
そんな二人へフィナがフォローに入る。
「数値は様々なことを考慮した総合値で、あくまでも目安。一対一でやり合っても私が勝てる保証があるわけじゃないから。エクアとフィコンがいい例よ」
「はい。大人の人と喧嘩しても勝てる自信なんてありませんし」
二人の慰めにマスティフとマフィンはますます落ち込む。
「なんか、辛いの……」
「たしかにニャ。それに何を勘案しても、フィナは錬金術師として戦術の幅が広い分、俺らよりも有利っぽいし……」
二人は揃ってがくりと頭を下げる。
だが、そのようなことに構っていられる余裕はない。
なぜならば、まだ私の数値が発表されていないからだっ!
「フィナ、どうして私を最後に残した……」
「フフ、それはもちろん、お楽しみだから……」
「クッ、なんというエグさを極めた性格っ。こうなったら自棄だ! 早く私の数値を出せ!」
「ふふふ、ではでは、領主様の数値をどうぞ~」
ガラス片に私の数値が現れる。
それは――――。
ケント――97
沈黙……そして、ざわつき。
私は急ぎ声を出す。
「待て待て待て待てっ、フィナ、計測ミスでは!?」
「ううん、残念ながら、現実」
「現実という言葉で片づけるなっ。クッ、自分はさほど強くはないと思っていたが、ここまでとは……」
私は片手で顔を覆う。
すると、エクアが残酷も優し気な言葉を掛けてきた。
「ケント様……大丈夫ですっ。私がお守りしますから!」
「待ってくれエクア! それはそれで結構きついぞっ。そ、そうだ! 銀眼、銀眼の力を発動すれば! フィナ、それで計測してくれ」
私は銀眼に意識を集める。
銀眼は白光を纏い、私の四肢に力を伝えた。
「どうだ、フィナ?」
「え~と……え、嘘っ」
「ん、もしかして、すごい数値が出たのか!?」
「えっとね……」
銀眼発動時のケント――472
私は片膝をつき、両手で顔を包んだ。
それをカインとエクアが慰めてくれるが、むしろ傷が広がっているようにも感じる。
私は嗚咽のような言葉を漏らす。
「思い返してみれば、銀眼を発動した状態で698の小柄な戦士相手に苦戦していたな。そうか、これが私の実力か……いや、まだだ! フィナ、暴走時の私の記録はないのか?」
「ないね」
「ああ~、なんということだ。おそらく記録されていれば、百万は超えていただろうなぁ。ああ~、残念だ」
「ケント、それ、虚しくない?」
「うるさい。それで、私をからかえて満足か?」
「ううん、予想以上にひどくて笑えなかった」
「余計に傷つくぞ!」
このように一騒動を終えて、フィナは口直しからメインへと会話を移していった。
魔族の平均値――3000・フィナ――41327
ギウ――97999?・レイ――575505
並ぶ四つの名前と四つの数値。
私たちは桁外れの数値を前に感嘆の息を漏らした。
グーフィスはレイの数値を見て、目をごしごし擦っている。
「フィナさんも凄いですが、一人、とんでもない数値があるんですが……」
「レイでしょ。まさに桁外れ。勇者を名乗るだけあるわ」
「それでもフィナさんは魔族よりも遥かに強いんですね」
「魔族の場合はあくまでも平均値だからね。調べてる最中、一万を超える連中がごろごろいたよ」
「それは、怖いっすね……」
グーフィスは見かけの図体によらず、自分を抱きしめてぶるぶるとした震えを見せる。
私は彼を横目に、ギウの数字に付いた?マークに着目する。
「フィナ、ギウの『97999?』の『?』マークはなんだ?」
「それがさ、ギウの力を測定しようとしたら、ギウの測定値に揺らぎがあったのよ」
「理由は?」
「その理由はギウが教えてくれた。彼って、力の放出にかなりの振り幅があるんだって。普段はガラス片に映った数字だけど。本気を出せばもっと伸びるってさ」
「その本気は測定させてくれなかったのか?」
「釣りをしている最中に話しかけたから、煙たがれて追い払われた……」
「あはは、彼は釣りになると無心になるからな。しかし、振り幅とは……私たちでも本気の時とそうではない時とでは幅があるだろう? 何か違いが?」
「たしかに、私たちでも気合が入ってない場合と入ってる場合で力の加減が違うけど、たぶんギウはその幅が凄いんだと思う。ちなみにその幅を考慮した場合、四十万くらいはあると思う」
「その根拠となるものは?」
「アイリとレイの存在」
「二人の?」
「まずは……えっとほら、以前アルリナでアイリとギウが会話したことがあったじゃん。私はその時、アイリに見つからないように姿を隠してたからこっそり聞いてたんだけど、アイリがギウに対して『私よりも強い。レイ並の強さくらいはあるかも』って言ってたの覚えてる?」
「ああ、言っていたな」
「で、次に、レイとギウの会話。互いに認め合いながらも、ギウが一歩引いてた感じがあった。レイもまた、勇者の中では一・二を争う強さがあると評したけど、自分を越えているとは言わなかった」
「たしかにそんなを話していたな」
「これらに加えて、私はアイリとやり合ってるからあいつとの実力差を把握してる。これについては少し腹が立つけど……それはさておき、アイリの実力を知る私。そして、アイリより強くレイより下。そこら辺から四十万くらいだろうなぁって」
「なるほど、はっきりした数字ではなく、君の戦士としての勘からということか」
「勘かもしれないけど結構自信あるよ。とまぁ、ギウの話はここまでにして、そろそろオードブルから口直しと行きましょうか」
「スープもなしにいきなり口直しか。で、口直しとはなんだ?」
「それはね、フッフッフッフッフッフ……」
フィナは私の言葉を受け取ると雰囲気を一変させ、不敵な笑い声を漏らし、こう言葉を続けた。
「今から皆さまの強さを測りますが、この中で一番へっぽこな人は誰でしょう……ねぇ~、ケント?」
「き、君は!?」
私はぞわりと鳥肌を立てた。
嫌らしく笑う少女を前にして冷たいものが背中に走る。
彼女は……私をおもちゃにするつもりだ!
「フィ、フィナ。そういうのはやめた方が、いいんじゃないかな?」
「あれあれ~、どうしたんですか、領主様?」
「こういうときだけ領主呼ばわりするんじゃない。君は私を小馬鹿にするためだけに半月も留守にしていたのか!」
「え~、違うよ~。ちゃんと別の目的があるんだって。これはあくまでも口直し。ホントにヤバいメインにつながるね」
「ん?」
「とにかく、今はおもちゃになってなさい。それに、あんた以外のメンバーは興味あるみたいだよ」
と言って、フィナは私の後ろを指差す。
親父は自分の拳を見つめ握り締めている。
「宗教騎士団の団長に勝ちはしたが、ギウのおかげであそこまで届いた。実際の俺はどこまで強くなったんだろうな」
グーフィスは拳を打っている。
「フィナさんにはまだまだ全然届かねぇだろうけど、足を引っ張らねぇ程度には強くならねぇとな。その基準がわかるのはいいっすね」
マスティフとマフィンは目から火花を飛ばし合う。
「ふふ、どうやらワシの方が実力が上とわかる時が来たようだな、マフィン」
「何をほざくニャか。俺との実力差に絶望しにゃいといいけどニャあ~」
四人の様子に私は肩を落とす。
「た、楽しそうだな……」
「ま、あんたがへっぽこなのは承知だから、弱くても落ち込む要素ないでしょ」
「そうであっても数値を突きつけられるのはいい気分じゃないぞ」
「まぁまぁ、とりあえず計測してみましょうよ。大丈夫よ、キサがいる限りドベにはならないから」
「私のライバルはキサかっ」
私は怒りに唾を飛ばすが、それを無視してフィナは計測を始めた。
キサ――27・エクア――254
カイン――232・親父――4780
ゴリン――356・グーフィス――3376
マスティフ――37380・マフィン――37350
皆は思い思い言葉を飛ばし合う。
キサとエクアとカインは……。
「う~ん、やっぱり子どもだから全然だねぇ。でも、エクアお姉ちゃんは大人の男の人よりも強いんだ」
「どうしてでしょうね? 腕力なんて全然ないのに?」
「たぶん、エクア君の場合、癒しの魔力が能力として評価されたんじゃないかな。それに引き換え僕はエクア君よりも二十も下……少しダイエットでもして体を鍛えようかなぁ」
次に親父が言葉を出し、それにフィナが注意を呼び掛ける
「四千? 俺は魔族とやり合えるぐらいに強かったのか? 信じられねぇ。もう、魔族相手にこそこそ逃げ回る必要はないってのか?」
「いえ、魔族の三千という数値は平均値で、五千、一万っていうのが普通にいるから逃げの一手の方が良いと思うよ」
「そうか……ま、魔族相手に名を広めるつもりなんてないからいいか。少なくとも、あのクソッたれな宗教騎士団の団長様よりもはっきり上ってので満足だぜ」
ゴリンとグーフィスは……。
「う~ん、普通の奴よりかぁ、強いみてぇでやすけど。半端な感じでやすな。問題は……グーフィス、おめぇ、そんなに強いのか?」
「どうなんだろう? 俺は戦士並みに強いって感じもしないっすけどね」
彼の疑問に私が声を返す。
「最近はフィナに殴られ続けて体が丈夫になってるから、その分が加味されているんじゃないのか?」
「ああ~、なるほど! ということは、これはフィナさんの愛の鞭による賜物! フィナさん、待っててくださいね。まだまだ差は桁違いでも、フィナさんの背中を守れるくらいに丈夫になりますから!!」
「ウザ……」
フィナは小さく本気のトーンで言葉を返す。
一方、マスティフとマフィンは、こちらの賑やかさに一層の賑やかさをつけ足すように言葉をぶつけあっていた。
「あはははは、どうやらワシの方が上のようだなっ、マフィン!」
「たった三十の差でそこまで馬鹿笑いされる謂れはないニャ!」
「三十の差でもワシが上であることは変わらんだろう」
「クッ、にゃんとういう屈辱ニャ。にゃけどニャっ」
「言うな、マフィンっ。それはわかっておる!」
二人は黒いガラス片に浮かぶ、ある数字に目を向ける。
フィナ――41327
「幼い少女よりも我らは弱いのか……」
「悲しい現実にゃのニャ」
そんな二人へフィナがフォローに入る。
「数値は様々なことを考慮した総合値で、あくまでも目安。一対一でやり合っても私が勝てる保証があるわけじゃないから。エクアとフィコンがいい例よ」
「はい。大人の人と喧嘩しても勝てる自信なんてありませんし」
二人の慰めにマスティフとマフィンはますます落ち込む。
「なんか、辛いの……」
「たしかにニャ。それに何を勘案しても、フィナは錬金術師として戦術の幅が広い分、俺らよりも有利っぽいし……」
二人は揃ってがくりと頭を下げる。
だが、そのようなことに構っていられる余裕はない。
なぜならば、まだ私の数値が発表されていないからだっ!
「フィナ、どうして私を最後に残した……」
「フフ、それはもちろん、お楽しみだから……」
「クッ、なんというエグさを極めた性格っ。こうなったら自棄だ! 早く私の数値を出せ!」
「ふふふ、ではでは、領主様の数値をどうぞ~」
ガラス片に私の数値が現れる。
それは――――。
ケント――97
沈黙……そして、ざわつき。
私は急ぎ声を出す。
「待て待て待て待てっ、フィナ、計測ミスでは!?」
「ううん、残念ながら、現実」
「現実という言葉で片づけるなっ。クッ、自分はさほど強くはないと思っていたが、ここまでとは……」
私は片手で顔を覆う。
すると、エクアが残酷も優し気な言葉を掛けてきた。
「ケント様……大丈夫ですっ。私がお守りしますから!」
「待ってくれエクア! それはそれで結構きついぞっ。そ、そうだ! 銀眼、銀眼の力を発動すれば! フィナ、それで計測してくれ」
私は銀眼に意識を集める。
銀眼は白光を纏い、私の四肢に力を伝えた。
「どうだ、フィナ?」
「え~と……え、嘘っ」
「ん、もしかして、すごい数値が出たのか!?」
「えっとね……」
銀眼発動時のケント――472
私は片膝をつき、両手で顔を包んだ。
それをカインとエクアが慰めてくれるが、むしろ傷が広がっているようにも感じる。
私は嗚咽のような言葉を漏らす。
「思い返してみれば、銀眼を発動した状態で698の小柄な戦士相手に苦戦していたな。そうか、これが私の実力か……いや、まだだ! フィナ、暴走時の私の記録はないのか?」
「ないね」
「ああ~、なんということだ。おそらく記録されていれば、百万は超えていただろうなぁ。ああ~、残念だ」
「ケント、それ、虚しくない?」
「うるさい。それで、私をからかえて満足か?」
「ううん、予想以上にひどくて笑えなかった」
「余計に傷つくぞ!」
このように一騒動を終えて、フィナは口直しからメインへと会話を移していった。
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