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第十二章 唸れ商魂!
コミュニケーション可能?
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「グッ……ここは?」
痛みに起こされ目を開ける。
私は痛むわき腹を押さえながら、周囲をゆっくり見まわした。
目の前には開けた場所。背には大樹。
周りは茂みに囲まれ、その奥には木々が乱雑に並んでいる。
「森か? マッキンドーの? 何が起こった?」
私はわき腹から走る痛みに耐え、朧げな記憶を呼び起こす。
フィナに名を強く呼ばれ、それに問いかけようとしたとき、横腹に衝撃が走った。
次には女の子からもらった花が飛び散り、私は誰かに抱えあげられていた。
その時、目に入ったのは……桃色の毛の魔族の背中。
「私は魔族に連れ去れたということか。一体、なぜ? いつっ!」
痛むわき腹にそっと手のひらを置き、痛みが少しでも和らげないかとゆっくり深呼吸を行う。
「すーはー、折れてはなさそうだが、激しく動くのは無理だな。さて、どうする?」
近くに魔族の気配はない。
赤色の木漏れ日が森に降り注ぎ、そよ風が茂みを揺らす。
「もう、日が暮れようとしている。半日くらい気を失っていたということか。フィナは無事だろうか?」
服の袖に残っていた、白い花びらを掴む。
「あの子のことだ。おそらく大丈夫だろう。それよりも、自分の心配をすべきだな」
怪我を負い、満足に動くことすらかなわない。
魔族がどこへ行ったのか知らないが、次に会えば、抵抗らしい抵抗もできず、喰われる。
「いや、まだ武器がある」
私は花びらを胸のポケットに収め、代わりに弾丸を取り出そうとするが指先に痺れがあり、うまくいかない。
そこに、正面の茂みが揺れ、奴が姿を現した。
「ぐがぁ~」
全身を桃色の毛で覆われ、頭に角の生えた雌の魔族が、牙から涎をぽたりぽたり落としながら近づいてくる。
私は恐怖に呼吸を止め、だたじっと魔族を見つめた。
魔族は澱んだ黒の瞳で私を睨みつけたかと思うと、片手で頭を押さえ、その場を行ったり来たりと落ち着きのない様子を見せ始めた。
「うがぁ~、がぁ~、うぐぐ~」
「なんだ?」
私の声に反応し、魔族はこちらをちらりと見るが、すぐに何度も頭を振りながらウロウロしている。
その姿は、何かを訴えようとして悩んでいるかのような姿。
私は魔族に、彼女に問いかけてみる。
「君は、何を考えている?」
「うが? がっ、がっ、がぁぁ!」
彼女は両手を大きく振って声を張り上げた。
言葉を訴えている、そう、私には見えた。
「すまない、君の声がわからないんだ」
「うがが、うがががぁ。うがぁ!!」
空へ向けて咆哮を放つ。それは思いが伝わらずにイラついているようにも見える。
私はそんな彼女の姿を見て、ある種の安心感を得る。
(よくわからないが、すぐに私を喰うつもりはないようだな)
安堵に押され、息をつく。
すると、息に混じり、腹が鳴った。
――グ~
私はこの音がきっかけで、彼女が余計な思いを抱かないかと慌てて誤魔化す。
「違う、今のはだな、その、頼むから、妙なことを連想しないでくれよ」
片手を前に出して、説得を試みる。
すると彼女は、だらりと涎をこぼし、私の眼前に顔を近づけてきた。
「がぁ~」
「うっ」
彼女から血腥い香りが立ち上る。
思わずむせ返りたくなるが、それをぐっとこらえて、息を止めた。
しばらくの間、彼女は私を観察していたが、背中を見せて出てきた茂みに戻っていった。
「た、助かった? いや、助かってない。彼女が戻ってこないうちに、ここから、っ!」
僅かに体を動かしただけ、わき腹に痛みが走る。
とてもじゃないが逃げ出すなんて不可能のようだ。
「くそっ、このままでは……だが、もしかしたら」
私は茂みを見つめる。
「なぜか彼女は、私とコミュニケーションを取ろうとしているように見える。もし、そうならば、何とか分かり合えるかもしれない」
そう、感じていたのだが、次に彼女が茂みから現れた時、それがどれだけ遠いことなのかと思い知らされた……。
痛みに起こされ目を開ける。
私は痛むわき腹を押さえながら、周囲をゆっくり見まわした。
目の前には開けた場所。背には大樹。
周りは茂みに囲まれ、その奥には木々が乱雑に並んでいる。
「森か? マッキンドーの? 何が起こった?」
私はわき腹から走る痛みに耐え、朧げな記憶を呼び起こす。
フィナに名を強く呼ばれ、それに問いかけようとしたとき、横腹に衝撃が走った。
次には女の子からもらった花が飛び散り、私は誰かに抱えあげられていた。
その時、目に入ったのは……桃色の毛の魔族の背中。
「私は魔族に連れ去れたということか。一体、なぜ? いつっ!」
痛むわき腹にそっと手のひらを置き、痛みが少しでも和らげないかとゆっくり深呼吸を行う。
「すーはー、折れてはなさそうだが、激しく動くのは無理だな。さて、どうする?」
近くに魔族の気配はない。
赤色の木漏れ日が森に降り注ぎ、そよ風が茂みを揺らす。
「もう、日が暮れようとしている。半日くらい気を失っていたということか。フィナは無事だろうか?」
服の袖に残っていた、白い花びらを掴む。
「あの子のことだ。おそらく大丈夫だろう。それよりも、自分の心配をすべきだな」
怪我を負い、満足に動くことすらかなわない。
魔族がどこへ行ったのか知らないが、次に会えば、抵抗らしい抵抗もできず、喰われる。
「いや、まだ武器がある」
私は花びらを胸のポケットに収め、代わりに弾丸を取り出そうとするが指先に痺れがあり、うまくいかない。
そこに、正面の茂みが揺れ、奴が姿を現した。
「ぐがぁ~」
全身を桃色の毛で覆われ、頭に角の生えた雌の魔族が、牙から涎をぽたりぽたり落としながら近づいてくる。
私は恐怖に呼吸を止め、だたじっと魔族を見つめた。
魔族は澱んだ黒の瞳で私を睨みつけたかと思うと、片手で頭を押さえ、その場を行ったり来たりと落ち着きのない様子を見せ始めた。
「うがぁ~、がぁ~、うぐぐ~」
「なんだ?」
私の声に反応し、魔族はこちらをちらりと見るが、すぐに何度も頭を振りながらウロウロしている。
その姿は、何かを訴えようとして悩んでいるかのような姿。
私は魔族に、彼女に問いかけてみる。
「君は、何を考えている?」
「うが? がっ、がっ、がぁぁ!」
彼女は両手を大きく振って声を張り上げた。
言葉を訴えている、そう、私には見えた。
「すまない、君の声がわからないんだ」
「うがが、うがががぁ。うがぁ!!」
空へ向けて咆哮を放つ。それは思いが伝わらずにイラついているようにも見える。
私はそんな彼女の姿を見て、ある種の安心感を得る。
(よくわからないが、すぐに私を喰うつもりはないようだな)
安堵に押され、息をつく。
すると、息に混じり、腹が鳴った。
――グ~
私はこの音がきっかけで、彼女が余計な思いを抱かないかと慌てて誤魔化す。
「違う、今のはだな、その、頼むから、妙なことを連想しないでくれよ」
片手を前に出して、説得を試みる。
すると彼女は、だらりと涎をこぼし、私の眼前に顔を近づけてきた。
「がぁ~」
「うっ」
彼女から血腥い香りが立ち上る。
思わずむせ返りたくなるが、それをぐっとこらえて、息を止めた。
しばらくの間、彼女は私を観察していたが、背中を見せて出てきた茂みに戻っていった。
「た、助かった? いや、助かってない。彼女が戻ってこないうちに、ここから、っ!」
僅かに体を動かしただけ、わき腹に痛みが走る。
とてもじゃないが逃げ出すなんて不可能のようだ。
「くそっ、このままでは……だが、もしかしたら」
私は茂みを見つめる。
「なぜか彼女は、私とコミュニケーションを取ろうとしているように見える。もし、そうならば、何とか分かり合えるかもしれない」
そう、感じていたのだが、次に彼女が茂みから現れた時、それがどれだけ遠いことなのかと思い知らされた……。
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