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第七章 囚われ、凌辱される少女……少女?
第59話 東方の色濃き町・ひやおろし
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――――東方文化が根付く町・ひやおろし
ここはグレーラ大陸から遠く離れた東方大陸の色が濃くある町。
木造の住宅や土壁でできた建造物の屋根には、粘土を焼いて作られた瓦という屋根葺きが幾重にも重ね並べられている。
衣装も一風変わったもので、上は木綿でできた小袖と言われる足首まで届く薄手のロングコートのようなものを纏い、前がはだけぬように腰の帯で留めているものが一般的。
ただし、靴は私たちが履いてるものと同じで革製の物。
東方文化では足袋だか雪駄だか草履だかと、そういったよくわからないものを履くらしいが……こちらにそれを作るための材料がなかったのか? それとも革製の靴の方が便利だったのかはわからないが、皆、革靴を履いている。
リディは初めて触れる東方文化を貫太郎の背の上から興味深げに見回していた。
「不思議なところですね。あの、赤い門みたいなものはなんでしょうか?」
「あれは鳥居だな。あの先には神社という神を祀る場所がある。まぁ、教会の入り口のようなものだ」
「私たちと同じ神様であるカーディ様を祀っているんですよね?」
「ああ、当然だ。創造神カーディは種族関係なく共通の神だからな。だが、東方文化は創造神カーディが地上に遣わした精霊や聖人と呼ばれる存在も神に準ずるものとして祀るため、神社の種類は多いと聞く」
「聖人? つまり人間なのに神様と同じように祀られているんですか? なんだか面白いですね。あれ? あそこにあるのはカリンさんが愛用している刀じゃありませんか?」
リディが武器屋らしき店を指差す。
そこには大量の刀や槍や弓が置かれ、中には東方由来の槍である薙刀と言われるものも置いてあった。
カリンとツキフネは足を止めて、店へ近づいていく。
「うわ~、刀がいっぱい。新しく新調しようかなぁ?」
「下手に新調しない方がいいぞ。得物は手慣れたものの方がいい……が、この大太刀という剣には惹かれるな」
「うわ、長い刀。こんなのもあるんだ。だけど私じゃ大きすぎて持てないかな。それにツキフネさんの言うとおり、安易に新調するのも良くなさそうだし」
このように店先で二人が会話を行っていると、店奥から店主らしき老人が出てきた。
「何か入用かね?」
「あ、いえ、そうじゃないんです。私も刀を使っているんでこちらの刀が興味深く見入ってしまって」
「ほ~、刀を。その腰に提げているのが…………まさかそれは、祇鴻伽舊禮!?」
「ほぇ、どうしたんですか、おじいちゃん? もしかして、この刀、業物?」
「それはもう、業物も業物。じゃがの~」
「何か問題でも?」
「そいつは、持ち主の魂を喰らう呪われた刀として有名な一刀なんじゃよ」
「え……えええ~!?」
「そいつは一度持ち主を選ぶと、主の魂を喰らい尽くすまで離れないと言われていてな。本来ならば値打ちもののはずなんじゃが、手放す頃には持ち主は精魂尽き果てており、まともな思考も宿せず、次の持ち主にタダ同然で譲ることになるそうだ。そうやって、ぐるぐると持ち主を渡り歩き、魂を喰らっておるとか」
「思い返してみれば、売ってくれた商人の人、やる気がないうえにげっそりしてたような……どうしよう、ツキフネさん!?」
「ただの迷信だろう。現にカリンに何ら影響は出ていないではないか」
「そうだけど……だったら、あの商人さんは? もしかして、気が付いてないだけで、わたし魂を食べられてる?」
店主に刀の逸話を教えられ、恐れを隠せないカリン。
その様子を見ていた貫太郎とリディが私に声をかけてくる。
「もっもも?」
「大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、問題ない。彼女から刀を借りた時に私が呪いを解いているからな」
「も?」
「え?」
「彼女には話してなかったが……」
カリンは刀をどう扱っていいのかわからず、店先で体をわたわたと動かし、それをツキフネが大丈夫だと諭している。
「まぁ、面白いから黙っていよう」
「もも~……」
「ひどい……」
「そんなことよりも、ラフィはどこに行ったんだ?」
私はきょろきょろと首を振る。するとラフィは、符術を扱う店先の前で符と呼ばれる呪いの印が描かれた紙をじっと観察していた。
「これが東方大陸の魔導体系……予め紙に魔法を封じ、魔力で起動する道具。その時の使用魔力を符に描かれた印の力と乗算して威力を増すと言いますが……なるほど、面白い魔道具ですね。多少でも魔力を扱える者ならば、強力な武器となるようで」
「ラフィも店に囚われたのか……まったく、彼女たちは」
「クスッ、そうですね。でも、その気持ちわかります。私も貫太郎さんの背に乗っていなかったら色々お店を覗いていると思いますし」
「たしかに、ここには珍しいものが多いからな」
「それにしても、本当に不思議です。東方大陸から離れたグレーラ大陸のさらに深い西の場所に異文化が根付いているなんて……夢想的な雰囲気で、本当に、不思議……」
リディは店先にぶら下がる提灯や、夏の足音を感じさせる風鈴と呼ばれるガラス製のベルを見つめ、その情緒的な雰囲気に酔っているようだ。
ふわりと吹いた風が舌(※風鈴についている重りの部分)を揺らし、風鈴の音が耳に沁みる心地良さに素直に従い、彼女は言葉を漏らす。
「どうして、こんな遠く離れた場所で東方文化が華やいでいるんでしょうか?」
「それはだな、遥か昔、この大陸の人間族が東方に攻め入って、戦利品として東方人を奴隷として持ち帰ったからだ。時が経ち、市民権を得た東方人の末裔がここに集まり、故郷を思ってこの町を作ったそうだ」
「あ、そうなんですか? 夢想的な雰囲気でいいなと思っていましたが、そこには悲しい歴史が隠れているんですね」
「東方文化に浸っていたところ申し訳ないな」
「いえ、表面だけではなく、内側も知ることができて良かったです」
「ふふ、そうか。ではそろそろ、皆を呼び集め、ラフィの顔が通ると言う、この町の代表ユウガに会いに行くとしよう」
ここはグレーラ大陸から遠く離れた東方大陸の色が濃くある町。
木造の住宅や土壁でできた建造物の屋根には、粘土を焼いて作られた瓦という屋根葺きが幾重にも重ね並べられている。
衣装も一風変わったもので、上は木綿でできた小袖と言われる足首まで届く薄手のロングコートのようなものを纏い、前がはだけぬように腰の帯で留めているものが一般的。
ただし、靴は私たちが履いてるものと同じで革製の物。
東方文化では足袋だか雪駄だか草履だかと、そういったよくわからないものを履くらしいが……こちらにそれを作るための材料がなかったのか? それとも革製の靴の方が便利だったのかはわからないが、皆、革靴を履いている。
リディは初めて触れる東方文化を貫太郎の背の上から興味深げに見回していた。
「不思議なところですね。あの、赤い門みたいなものはなんでしょうか?」
「あれは鳥居だな。あの先には神社という神を祀る場所がある。まぁ、教会の入り口のようなものだ」
「私たちと同じ神様であるカーディ様を祀っているんですよね?」
「ああ、当然だ。創造神カーディは種族関係なく共通の神だからな。だが、東方文化は創造神カーディが地上に遣わした精霊や聖人と呼ばれる存在も神に準ずるものとして祀るため、神社の種類は多いと聞く」
「聖人? つまり人間なのに神様と同じように祀られているんですか? なんだか面白いですね。あれ? あそこにあるのはカリンさんが愛用している刀じゃありませんか?」
リディが武器屋らしき店を指差す。
そこには大量の刀や槍や弓が置かれ、中には東方由来の槍である薙刀と言われるものも置いてあった。
カリンとツキフネは足を止めて、店へ近づいていく。
「うわ~、刀がいっぱい。新しく新調しようかなぁ?」
「下手に新調しない方がいいぞ。得物は手慣れたものの方がいい……が、この大太刀という剣には惹かれるな」
「うわ、長い刀。こんなのもあるんだ。だけど私じゃ大きすぎて持てないかな。それにツキフネさんの言うとおり、安易に新調するのも良くなさそうだし」
このように店先で二人が会話を行っていると、店奥から店主らしき老人が出てきた。
「何か入用かね?」
「あ、いえ、そうじゃないんです。私も刀を使っているんでこちらの刀が興味深く見入ってしまって」
「ほ~、刀を。その腰に提げているのが…………まさかそれは、祇鴻伽舊禮!?」
「ほぇ、どうしたんですか、おじいちゃん? もしかして、この刀、業物?」
「それはもう、業物も業物。じゃがの~」
「何か問題でも?」
「そいつは、持ち主の魂を喰らう呪われた刀として有名な一刀なんじゃよ」
「え……えええ~!?」
「そいつは一度持ち主を選ぶと、主の魂を喰らい尽くすまで離れないと言われていてな。本来ならば値打ちもののはずなんじゃが、手放す頃には持ち主は精魂尽き果てており、まともな思考も宿せず、次の持ち主にタダ同然で譲ることになるそうだ。そうやって、ぐるぐると持ち主を渡り歩き、魂を喰らっておるとか」
「思い返してみれば、売ってくれた商人の人、やる気がないうえにげっそりしてたような……どうしよう、ツキフネさん!?」
「ただの迷信だろう。現にカリンに何ら影響は出ていないではないか」
「そうだけど……だったら、あの商人さんは? もしかして、気が付いてないだけで、わたし魂を食べられてる?」
店主に刀の逸話を教えられ、恐れを隠せないカリン。
その様子を見ていた貫太郎とリディが私に声をかけてくる。
「もっもも?」
「大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、問題ない。彼女から刀を借りた時に私が呪いを解いているからな」
「も?」
「え?」
「彼女には話してなかったが……」
カリンは刀をどう扱っていいのかわからず、店先で体をわたわたと動かし、それをツキフネが大丈夫だと諭している。
「まぁ、面白いから黙っていよう」
「もも~……」
「ひどい……」
「そんなことよりも、ラフィはどこに行ったんだ?」
私はきょろきょろと首を振る。するとラフィは、符術を扱う店先の前で符と呼ばれる呪いの印が描かれた紙をじっと観察していた。
「これが東方大陸の魔導体系……予め紙に魔法を封じ、魔力で起動する道具。その時の使用魔力を符に描かれた印の力と乗算して威力を増すと言いますが……なるほど、面白い魔道具ですね。多少でも魔力を扱える者ならば、強力な武器となるようで」
「ラフィも店に囚われたのか……まったく、彼女たちは」
「クスッ、そうですね。でも、その気持ちわかります。私も貫太郎さんの背に乗っていなかったら色々お店を覗いていると思いますし」
「たしかに、ここには珍しいものが多いからな」
「それにしても、本当に不思議です。東方大陸から離れたグレーラ大陸のさらに深い西の場所に異文化が根付いているなんて……夢想的な雰囲気で、本当に、不思議……」
リディは店先にぶら下がる提灯や、夏の足音を感じさせる風鈴と呼ばれるガラス製のベルを見つめ、その情緒的な雰囲気に酔っているようだ。
ふわりと吹いた風が舌(※風鈴についている重りの部分)を揺らし、風鈴の音が耳に沁みる心地良さに素直に従い、彼女は言葉を漏らす。
「どうして、こんな遠く離れた場所で東方文化が華やいでいるんでしょうか?」
「それはだな、遥か昔、この大陸の人間族が東方に攻め入って、戦利品として東方人を奴隷として持ち帰ったからだ。時が経ち、市民権を得た東方人の末裔がここに集まり、故郷を思ってこの町を作ったそうだ」
「あ、そうなんですか? 夢想的な雰囲気でいいなと思っていましたが、そこには悲しい歴史が隠れているんですね」
「東方文化に浸っていたところ申し訳ないな」
「いえ、表面だけではなく、内側も知ることができて良かったです」
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