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第4章 月夜にたたずむ囚われの狐
プロローグ
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鬱蒼と生い茂る木々は夜だというのにその影を地面に映している。
今夜は満月。普段よりも大きく見える美しい月は、こんな黒い森でさえ白く染め上げる。
草木は風に揺れ、虫たちは静かに合唱を奏でる。星々に捧げるフクロウの鳴き声は、神秘的な空間を演出していた。
そんな木々の間を一直線に渡っている石畳。その先に見える鳥居はまるでこの世と異空間とのつなぎ目のように見える。
こんな綺麗な夜に誘われ、一人の女性が月夜に照らされる中石畳の中を歩いていた。
その髪は白い光に照らされきらきらと輝いている。着物に羽織を重ね歩く姿は美しく、まるで人ならざる者のようだ。
いや、実際にその女性は普通の人間とは違う点がある。人ではない、獣の耳が頭から生えているのだ。
「ようやく顕現してくれたんだね。『闇喰らいの魔眼』」
だれに語っているのだろうか。はたまた月に語り掛けているのだろうか。まるで独り言のようにそうつぶやく女性。
「幾年月待っただろうか、もう数えてもいない。ようやく終わるんだね」
美しいその顔立ちにどこか疲れのようなものが見える。それをさらに上塗りしたかのような安どの表情も読み取れる。
「これでようやく死ぬことができる。僕を喰らって…終わらせてくれ」
今夜は満月。普段よりも大きく見える美しい月は、こんな黒い森でさえ白く染め上げる。
草木は風に揺れ、虫たちは静かに合唱を奏でる。星々に捧げるフクロウの鳴き声は、神秘的な空間を演出していた。
そんな木々の間を一直線に渡っている石畳。その先に見える鳥居はまるでこの世と異空間とのつなぎ目のように見える。
こんな綺麗な夜に誘われ、一人の女性が月夜に照らされる中石畳の中を歩いていた。
その髪は白い光に照らされきらきらと輝いている。着物に羽織を重ね歩く姿は美しく、まるで人ならざる者のようだ。
いや、実際にその女性は普通の人間とは違う点がある。人ではない、獣の耳が頭から生えているのだ。
「ようやく顕現してくれたんだね。『闇喰らいの魔眼』」
だれに語っているのだろうか。はたまた月に語り掛けているのだろうか。まるで独り言のようにそうつぶやく女性。
「幾年月待っただろうか、もう数えてもいない。ようやく終わるんだね」
美しいその顔立ちにどこか疲れのようなものが見える。それをさらに上塗りしたかのような安どの表情も読み取れる。
「これでようやく死ぬことができる。僕を喰らって…終わらせてくれ」
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