三つの異能と魔眼魔術師

えんとま

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第2章 鮮血の奇術師ヴァルミリア

元百鬼会、その最期

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屈強な体つきの男は頭を抱えていた。


元百鬼会の残党、ガクトや千石のボスに当たる男だ。


(四宮レイを追わせた連中は誰一人として帰ってこない。通信も途切れてからかなり経つ。浅見も失踪し頼みの綱は千石とガクトだけだ…)



かつてはその名を轟かせた古術師による組織、百鬼会も魔術師勢力と教会の連合軍からなる武力制圧で散り散りになってからは、その栄華も今となっては気ほども見当たらない。



(今なお多くの古術師達をまとめ上げるあの3つの組織は、もはや残党などどうでもいい。コレが最後のチャンスだった…もう頭取は許しはしないだろう…)



「クッソォ!どうしてこうなった!一体いつから間違えたんだ!」




ガァンと目の前の机を蹴り上げる男。その怒りは誰に向けられたものなのか。







「おぉおぉ、お怒りだねぇ。カルシウムたりてないんじゃないか?」




「誰だ!?」


扉の開いた気配はないが、急に聞こえた声に顔を向けるとそこには一人の男が立っていた。


真っ黒いコートに身を包む、30代後半から40代くらいの男だ。


(こんなやつうちにはいない、というかどこから入ってきた!)



「悪いね、鍵は…別に開いてなかったけど無理やり開けて入ってきちまったよ」



(そんなに寒くもないのに黒いコート。背中には何かの魔法陣…まさかコイツ!)



「『黒コート』か!?魔術師がどうしてここに!」


男の言葉に嫌そうな顔で返す黒コートの男。



「その黒コートってさ、なんかみんなそう呼ぶんだけどやめてくんねぇかな。ダサくないか?」



「馬鹿言え、存在こそ知られているものの詳細はトップシークレット、なんの情報もないお前を他にどう呼べっていうんだ!」


(まずい、魔術師界の上層部…その武闘派集団の一人!どうやってここを突き止めた…なんの用があって!?)



「お前…誰の差し金だ?」



ひとまず明らかにしておきたいのは自分の敵の姿、誰がこんな男を寄越したかだ。



「んーそうだな。『オルター』って言えばわかるか?」


「オルター?…オルター・アルバトリオのことか!?」


男の顔は困惑の色を強く浮かばせる。


「馬鹿な!一体何年前の男の話をしているのだ!貴様ふざけているのか!」



激昂する男に黒コートはニッと不敵な笑みを浮かべて見せる。


「じゃあ逆に聞くけどよ、あんたがいうってのはを言ってるんだ?10年か?100年か?あるいは一千年前のことか?」


「どれにしたって俺は『そうだよ』としか言えねーんだがよ」







「お前…何を言っている。まるで意味がわからないぞ」



「分からなくてもいいぞ。どうせお前にはもう関係のない話だ」



そういうと黒コートはすっと手を前に出す。



「!?うっ!かは!」



すると男は首に手をやり苦しみ始めた!



遠隔精密手マジックハンドなんつってな」



黒コートが手を徐々に上へとあげると、男の体も合わせて持ち上がる。まるで見えない手が男の首を締め付け持ち上げているようだ。




「ガハッ!馬鹿な!グ…媒介も…無しに!」



「媒介?これのことか?」



黒コートは自分の指にはめられた指輪を指差した。



「もしかして魔術師はみんな杖持ってローブ着てるイメージがまだ残ってんのか?遅れてるぜあんた。時代は変わったんだ。よりコンパクトにより高機能に、今時杖振ってるやつはそんなにいねぇよ」




そう話している間にも男の顔はどんどん赤くなっていく。



グッと黒コードが手に力を込めると、鈍い骨の折れる音がして男は動かなくなった。



「お前らも哀れだな。百鬼会なんてとうの昔に潰れた名前にすがって、最期は誰の目にも留まることなく壊滅する。ま、弱小組織の最後なんてこんなものか」



黒コートはそのまま部屋を後にする。


かくして、ハルトを追っていた組織の末端は、ハルトの知らないところで最期を迎えることとなった。




第二章 完
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