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闇に染まる森
悪しきを払う聖なる水
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「そうですか…森の王が…」
妖精の森に戻ってきたクライン、アリス、ナタリア、ドイルの4人は再びマスターであるアドルフを訪ね、事の顛末を説明した。
「はい。狂化した森の王を沈めることができれば、この件は片がつくと思います。そのために、聖職者の冒険者を紹介してもらえませんか」
アリスの説明を聞いたアドルフは、少し待っていてくださいと言うと部屋を後にした。
しばらく待っているとドアが開き、アドルフに連れられて1人の女性が入ってくるが、何やら浮かない顔だ。
「はじめまして、私はカテリーナと申します。マスターより話は伺いました。狂化した森の王を沈める奇跡が必要だと」
「うむ、その通り。カテリーナ殿は聖職者なのだな?」
「えぇ、このギルドでは一番高位ではあるのですが…私では力及ばず、闇払いの奇跡は扱えないのです」
「!?」
4人は目を丸くする。
アドルフはすかさず捕捉した。
「申し訳ない、闇払いの奇跡はそれなりに高度な奇跡ですので、扱える冒険者がいないみたいで…」
まさか闇払いの奇跡が高等な奇跡だとは予想していなかった一行。再び行き詰ってしまいうーんと声を唸らす。
「困ったわね…リーファならできるかも知んないけどたどり着くまでに時間がかかりすぎるわ」
「で、ですが!」
ナタリアの言葉を遮るカテリーナ
「手がないわけではありません。特定の材料を用いて奇跡を織り交ぜた聖水ならば、効果はあると思います」
「聖水…ですか?」
クラインが聞き返す。
「はい。悪しきを払う聖なる水、私の実力であれば時間は少しかかりますが材料があれば作ることができます。ただ、その材料を探してくる必要がありますが…」
「構わぬよ。そのための我輩たちだ、材料を探してこよう。どこに行けば見つかるのだ?」
「たしかいくつかの材料は在庫があったはず…少し待っていてください。今手元のないものを確認してきますので!」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
妖精の森に一旦引き返してから数時間後、アリスとクラインはリューネの森からまた少し離れた高台を歩いていた。
「森の王は狂化したままです。まだあの街には大量の魔物が押し寄せてくる可能性がある。ナタリアとドイルは大丈夫でしょうか」
クラインは不安げな表情を見せる。一方のアリスは2人の実力を知っているためまるで心配していない顔だ。
「大丈夫ですよ。2人は竜狩りの名を冠する強力な冒険者ですから。それより、私たちは私たちの仕事をしましょう!」
「えぇ、アリスの言う通りですね。早く材料を見つけて戻りましょう」
妖精の森で必要な材料を聞き出した一行は早速収集に動くが、未だ魔物の襲来が絶えない街をそのままにして動くことはできない。
そこでナタリアとドイルは街の防衛のためその場に残り、4人のうち比較的機動力のあるアリスとクラインが材料を求め高原へ出向いていた。
「それにしても良かったですね、収集難度の高い材料が妖精の森に揃っていて」
アリスは安堵の声を漏らす。
「えぇ。龍の髭やマンドラゴラなんて高額な材料はすぐ揃えられませんし、ましてや現地収集なんてことになれば何週間もかかていましたね」
「…だからこそ、在庫があったとも言えますけどね…」
アリスの微妙な間が引っかかったクライン。
「?、どうしましたアリス」
はっと顔をそらすアリス。その頬は少し赤く染まっている。
「あ…あぁいえ!大したことじゃないんですが…その…」
アリスは妙に歯切れが悪い。
「えと、私たち一緒に依頼をこなすようになって暫くたちましたよね」
「?」
未だにクラインは話が見えていないと言う顔だ。
「ほら、私たち2人とも基本的に敬語で話すじゃないですか。なんだかよそよそしいと言うか…」
あぁ!とクラインはようやくアリスの言っていることがわかったようだ。
「なんだ、それを気にしていたんですね!それなら気にしないでください。僕は基本的に誰に対してもこう言う感じですから。特にアスクランの冒険者は自分よりすごい人が多いですし、たとえ同い年でも敬意を払うべきと…」
「そう言うことではないんです!」
クラインの話をアリスが遮った。
「猟犬の牙は私より年配の方しかいませんし、私が加入したのはまだ小さい時で、それからずっと年上の皆さんとばかり接してきました」
当時のことを思い出したのだろう。アリスは少し寂しげな表情を見せる。
「だから…嬉しかったんです。クラインさんが猟犬の牙にきてくれたこと。やっと歳の近い人が入ってきてくれたのが」
「なので今までみたいに他人行儀でいたくなくって…」
アリスはクラインに向き直った。
「えーと、なので…敬語なんてやめて、私と…私と友達になってくだ…じゃなかった」
「友達になってほしい!」
恥ずかしさからだろうか。アリスは真っ赤な顔を伏せながら、クラインに手を差し出した。
そんなふうに思っていたとはつゆとも知らなかったクラインは目を丸くした。なんだか気恥ずかしいような、こそばゆい感覚につい笑いがこみ上げてくる。
「な…なんで笑ってるん、笑ってるの!」
体に染み付いた敬語が抜けないのか、頑張って直そうとしているアリスが可愛らしく、また笑ってしまうクライン。
「ゴメン、気を悪くしないでね。ただ、僕はもう友達だと思っていたからなんだか気恥ずかしくってさ」
「えっ…」
クラインはアリスの手を握り握手を交わす。
「これから、じゃない。これからも、だよアリス」
クラインはアリスをまっすぐ見据えて微笑む。ぱぁっと表情を明るくするアリス。
ルォオオオォオオオォオオ!!
突然2人の背後から雄叫びが飛び込んできた。
先ほどの緩和した空気から一変、2人はすぐさま武器を手に取り構える。
「今の声…魔物だな。ここにくる前にも聞いた声だよ」
「うん、そうみたい。あれは…オーガの声!」
眼前に現れたのは前に会ったオーガよりも一回り大きいオーガだ。ただ大きいだけじゃない。腕や足の筋肉が発達し、人から剥ぎ取ったであろう防具も身につけている。一目見て強力だとわかる。
それだけではない。体の周囲からは黒いモヤのようなオーラを発している。
「あれはボスオーガ!?それに狂化しているみたいね」
アリスは武器を強く握る。クラインも敵をまっすぐ見据えて距離を測る。
「僕らの動向にアルフェウスの連中が勘付いたのかな」
「だとしたらなおさら急いで材料を取ってこないといけないね。行くよクライン!」
ルォオオオオオ!
2人はボスオーガに向かって走りだす。
かかってこいと言わんばかりに、狂化したボスオーガは2人に咆哮を浴びせかけた。
妖精の森に戻ってきたクライン、アリス、ナタリア、ドイルの4人は再びマスターであるアドルフを訪ね、事の顛末を説明した。
「はい。狂化した森の王を沈めることができれば、この件は片がつくと思います。そのために、聖職者の冒険者を紹介してもらえませんか」
アリスの説明を聞いたアドルフは、少し待っていてくださいと言うと部屋を後にした。
しばらく待っているとドアが開き、アドルフに連れられて1人の女性が入ってくるが、何やら浮かない顔だ。
「はじめまして、私はカテリーナと申します。マスターより話は伺いました。狂化した森の王を沈める奇跡が必要だと」
「うむ、その通り。カテリーナ殿は聖職者なのだな?」
「えぇ、このギルドでは一番高位ではあるのですが…私では力及ばず、闇払いの奇跡は扱えないのです」
「!?」
4人は目を丸くする。
アドルフはすかさず捕捉した。
「申し訳ない、闇払いの奇跡はそれなりに高度な奇跡ですので、扱える冒険者がいないみたいで…」
まさか闇払いの奇跡が高等な奇跡だとは予想していなかった一行。再び行き詰ってしまいうーんと声を唸らす。
「困ったわね…リーファならできるかも知んないけどたどり着くまでに時間がかかりすぎるわ」
「で、ですが!」
ナタリアの言葉を遮るカテリーナ
「手がないわけではありません。特定の材料を用いて奇跡を織り交ぜた聖水ならば、効果はあると思います」
「聖水…ですか?」
クラインが聞き返す。
「はい。悪しきを払う聖なる水、私の実力であれば時間は少しかかりますが材料があれば作ることができます。ただ、その材料を探してくる必要がありますが…」
「構わぬよ。そのための我輩たちだ、材料を探してこよう。どこに行けば見つかるのだ?」
「たしかいくつかの材料は在庫があったはず…少し待っていてください。今手元のないものを確認してきますので!」
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妖精の森に一旦引き返してから数時間後、アリスとクラインはリューネの森からまた少し離れた高台を歩いていた。
「森の王は狂化したままです。まだあの街には大量の魔物が押し寄せてくる可能性がある。ナタリアとドイルは大丈夫でしょうか」
クラインは不安げな表情を見せる。一方のアリスは2人の実力を知っているためまるで心配していない顔だ。
「大丈夫ですよ。2人は竜狩りの名を冠する強力な冒険者ですから。それより、私たちは私たちの仕事をしましょう!」
「えぇ、アリスの言う通りですね。早く材料を見つけて戻りましょう」
妖精の森で必要な材料を聞き出した一行は早速収集に動くが、未だ魔物の襲来が絶えない街をそのままにして動くことはできない。
そこでナタリアとドイルは街の防衛のためその場に残り、4人のうち比較的機動力のあるアリスとクラインが材料を求め高原へ出向いていた。
「それにしても良かったですね、収集難度の高い材料が妖精の森に揃っていて」
アリスは安堵の声を漏らす。
「えぇ。龍の髭やマンドラゴラなんて高額な材料はすぐ揃えられませんし、ましてや現地収集なんてことになれば何週間もかかていましたね」
「…だからこそ、在庫があったとも言えますけどね…」
アリスの微妙な間が引っかかったクライン。
「?、どうしましたアリス」
はっと顔をそらすアリス。その頬は少し赤く染まっている。
「あ…あぁいえ!大したことじゃないんですが…その…」
アリスは妙に歯切れが悪い。
「えと、私たち一緒に依頼をこなすようになって暫くたちましたよね」
「?」
未だにクラインは話が見えていないと言う顔だ。
「ほら、私たち2人とも基本的に敬語で話すじゃないですか。なんだかよそよそしいと言うか…」
あぁ!とクラインはようやくアリスの言っていることがわかったようだ。
「なんだ、それを気にしていたんですね!それなら気にしないでください。僕は基本的に誰に対してもこう言う感じですから。特にアスクランの冒険者は自分よりすごい人が多いですし、たとえ同い年でも敬意を払うべきと…」
「そう言うことではないんです!」
クラインの話をアリスが遮った。
「猟犬の牙は私より年配の方しかいませんし、私が加入したのはまだ小さい時で、それからずっと年上の皆さんとばかり接してきました」
当時のことを思い出したのだろう。アリスは少し寂しげな表情を見せる。
「だから…嬉しかったんです。クラインさんが猟犬の牙にきてくれたこと。やっと歳の近い人が入ってきてくれたのが」
「なので今までみたいに他人行儀でいたくなくって…」
アリスはクラインに向き直った。
「えーと、なので…敬語なんてやめて、私と…私と友達になってくだ…じゃなかった」
「友達になってほしい!」
恥ずかしさからだろうか。アリスは真っ赤な顔を伏せながら、クラインに手を差し出した。
そんなふうに思っていたとはつゆとも知らなかったクラインは目を丸くした。なんだか気恥ずかしいような、こそばゆい感覚につい笑いがこみ上げてくる。
「な…なんで笑ってるん、笑ってるの!」
体に染み付いた敬語が抜けないのか、頑張って直そうとしているアリスが可愛らしく、また笑ってしまうクライン。
「ゴメン、気を悪くしないでね。ただ、僕はもう友達だと思っていたからなんだか気恥ずかしくってさ」
「えっ…」
クラインはアリスの手を握り握手を交わす。
「これから、じゃない。これからも、だよアリス」
クラインはアリスをまっすぐ見据えて微笑む。ぱぁっと表情を明るくするアリス。
ルォオオオォオオオォオオ!!
突然2人の背後から雄叫びが飛び込んできた。
先ほどの緩和した空気から一変、2人はすぐさま武器を手に取り構える。
「今の声…魔物だな。ここにくる前にも聞いた声だよ」
「うん、そうみたい。あれは…オーガの声!」
眼前に現れたのは前に会ったオーガよりも一回り大きいオーガだ。ただ大きいだけじゃない。腕や足の筋肉が発達し、人から剥ぎ取ったであろう防具も身につけている。一目見て強力だとわかる。
それだけではない。体の周囲からは黒いモヤのようなオーラを発している。
「あれはボスオーガ!?それに狂化しているみたいね」
アリスは武器を強く握る。クラインも敵をまっすぐ見据えて距離を測る。
「僕らの動向にアルフェウスの連中が勘付いたのかな」
「だとしたらなおさら急いで材料を取ってこないといけないね。行くよクライン!」
ルォオオオオオ!
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かかってこいと言わんばかりに、狂化したボスオーガは2人に咆哮を浴びせかけた。
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